インデペンデント系映画: 2015年5月アーカイブ

『Mommy/マミー』

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 皆さんこんにちは、女住人Mです。先日今年のカンヌ国際映画祭も閉幕し、日本からはある視点部門で黒沢清監督作「岸辺の旅」(出演:浅野忠信、深津絵里)が監督賞を受賞。コンペ部門で妻夫木聡さんも出演するホウ・シャオシェン監督作「黒衣刺客」が監督賞を受賞しました。賞に絡んだ作品、話題になった作品など1本でも多く日本で観られる機会があればな、と思います。
さて今回は去年の同映画祭で審査員特別賞を受賞した『Mommy/マミー』をご紹介いたします。
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 舞台は架空の国、カナダ。登場人物はシングルマザーのダイアン(アンヌ・ドルヴァル)、ADHD(多動性障害)のため精神的に情緒不安定な息子スティーヴ(アントワン=オリヴィエ・ピロン)、そして彼らの隣人カイラ(スザンヌ・クレマン)。精神的なストレスから、引きこもっていたカイラですがスティーヴと親しくなり彼の家庭教師を引き受けたことでダイアン親子と次第と家族のような関係になっていきます。
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 この映画を語る上で外せないのが監督のグザヴィエ・ドラン(26歳)。19歳で監督デビューをして以降4本の長編映画を発表し、すべての作品がヴェネツィア、カンヌなどの主要な映画祭へ正式出品。本作も昨年、巨匠ジャン=リュック・ゴダール監督とともに、カンヌ国際映画祭の審査員特別賞に輝いているという今、世界中の映画ファンから注目を浴びている若き天才です。もともと子役としてキャリアをスタートさせたドランは役者としても活躍しており、そのイケメンっぷりで世界中のサブカル&文化系女子の心も虜にしているところもミソ。と平たく"グザヴィエ・ドラン"を紹介すると一見、"ファッションとしてのグザヴィエ・ドラン"(=ドランが好きというのがカッコイイ)みたいなアイテムに思われるかもしれませんが、彼がその枠に収まらないのはやはり海外のメジャー映画祭での受賞歴にも裏づけされるその才能にあります。
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(グザヴィイエ・ドラン。1989年カナダのモントリオール生まれ。ゲイであることも公言しているイケメン監督&役者さん)

過去作においても彼の作品は"抑圧される者の苦悩"といったテーマであることが多く、本作でもADHDのため普通に生活が送ることが時に困難になる息子、そして彼を一人で養わねばならない母、そんな二人と出会った引きこもりの女性と人とはちょっと違うことで自由が制限されていたり、思うままに生きられなかったりと生き辛さと戦っている登場人物たちが圧倒的な存在感でもって描かれます。そして女性や母親が常に尊敬のまなざしで描かれるのもドラン映画の特徴であり、母親としてどんなことがあっても深くスティーヴを愛するダイアンの様や、スティーヴの本質を見抜き、何の見返りを求めるでもなく、ただ優しく包み込もうとするカエラの姿は、ドラン自身が思い描く女性の姿なのか理想図なのか・・・。
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(1:1の画角で描かれたことが話題にもなった本作。
閉塞感、解放感といった感情とリンクした表現方法もただの飾りじゃないのよ、この演出は。)

全くタイプが違う二人の女性だけれど、それぞれに闇を抱えた二人が共鳴し、ジレンマにつぶされそうになりながらも、その先にある希望を見失なわないよう、必死にもがく姿は純粋に心打たれます。そして現実がそうであるように、三人の未来は決してきれいごとのようにはいかず、常に闘うことを強いられるのですが、社会からはのけ者になっていようともそんな停滞した環境から飛び立ってやる!、そんなエナジーを伴う本作はドランそのものなのかもしれません。

 今年はカンヌ映画祭の審査員にもなったグザヴィエ・ドランは今後、ジェシカ・チャステイン、スーザン・サランドンを起用した作品やマリオン・コティヤール、レア・セドゥ共演の監督作が続き、これからもっともっと多くの映画ファンにその存在を知られるようになると思います。『Mommy/マミー』は5/23(土)からシネマイクスピアリにて公開中です。

Shayne Laverdière © 2014 une filiale de Metafilms inc.
By.M

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