ウラシネマイクスピアリブログ

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『パリタクシー』

 偶然の出会いが人生を変えることもある・・・今回ご紹介する作品は4/7(金)公開『パリタクシー』です。

 パリでタクシー運転手をしているシャルル(ダニー・ブーン)、パリから遠い反対側まで92歳のマダム、マドレーヌ(リーヌ・ルノー)を送り届ける依頼が舞い込む。彼女はこれから長年住んだ家を離れ介護施設に入るらしい。道中、彼女の頼みでパリの街のあちらこちらを立ち寄るがそこはマドレーヌの人生にとってたくさんの想い出が詰まった場所だった・・・

 パリを舞台に運転手と乗客という立場で出会った二人、エッフェル塔、シャンゼリゼ通り、凱旋門を通って目的地まで向かう、なんかほんわか映画かな~と想像していましたがそれだけじゃない!それがこの映画の最大の魅力です♪

 シャルルは最初、マドレーヌからの依頼を面倒な仕事だな~、と思っています。週に6日、1日12時間労働、共働きでも生活は苦しく、日々の業務でストレスも溜まる一方。その上度重なる交通違反で次に何かあると免停で仕事さえ取り上げられてしまう瀬戸際。マドレーヌに寄り道をリクエストされても早く送り届けて次の仕事に向かいたいシャルルは面倒くさそうな表情で始終イライラしています。

 当初はマドレーヌを苦労知らずの裕福な生活を送る老女ぐらいに思っていたと思うんです。自分とは住む世界が違う、と穿った見方をしていたのかも。でもマドレーヌに頼まれて立ち寄る場所で語られる想い出話は彼女が何不自由なく人生を過ごしてきた人の物語ではありませんでした。

若かりし日の恋バナから始まったのですが、恋をしたけれど未婚の母になったこと、結婚はしたけれどその後人生が大きく変わってしまったこと・・・彼女が歩んできた道はドラマチックと表現するには酷なほどに平坦ではなかったのです。彼女が若い頃に過ごしていたのは今では当たり前とされている女性の権利が未だ認められてなかった時代、そのせいで多くの犠牲を払わねばならなかったのです。

 でもシャルルの目の前にいるのは辛い経験をしながらも凛とした佇まいの中にチャーミングさも兼ね備える女性です。そんな魅力溢れるマドレーヌに出会い、偶然にも時間を共有したことでシャルルはどんどん刺激を受けていきます。そんな彼の様子が柔和になっていく表情や笑顔、彼女に対するちょっとした行動や仕草の変化で表現されていくので私たちの心までもほぐれていきます。

 そう、この映画はタクシーで駆け抜けるマドレーヌの人生の旅路を辿る物語であり、偶然の出会いをきっかけに人生を変えるきっかけを得た男の物語なのです。人生はたった1つのことで物事が大きく変わります。それはもちろん、良いことだけではありませんが、そんな一期一会をどういう出会いにするかは、自分次第なのかもしれませんね♪

By.M