『教皇選挙』
“コンクラーベ”、学校の授業で習った遠い記憶・・・。それはキリスト教最大の教派カトリック教会の総本山・バチカンのトップに君臨するローマ教皇を決める選挙のこと。外部からの情報を一切遮断したシスティーナ礼拝堂で行われる極秘の投票は未だ秘密のベールに包まれていることが多い・・・。今回ご紹介するのは大ヒット中!3/20(金・祝)公開『教皇選挙』です。

物語はローマ教皇が死去したことから始まります。悲しむ間もなく次の教皇を選ぶため教皇選挙(コンクラーベ)が行われることに・・・世界中から選挙権を持つ100人を超える枢機卿がバチカンに集結し、主席枢機卿ローレンス(レイフ・ファインズ)がまとめ役として仕切ることに。しかしそこでは政治闘争さながらの聖職者たちの駆け引きが繰り広げられていきます。

先ずは映画のルックが圧巻。舞台は厳かなシスティーナ礼拝堂、深紅の法衣をまとった枢機卿たちが集う、その図だけでも惚れ惚れ。もちろん、バチカン内で撮影など出来ないからシスティーナ礼拝堂内などはセットなのですが、それとは思えない重厚な空気感!
現実でも中で起きていることは一握りの関係者のみぞ知る、という徹底された世界観なのでより我々の好奇心をくすぐります。

選挙は一人の候補者が3分の2の得票数を得て新教皇に選ばれるまで淡々と繰り返されていくのですが、枢機卿たちそれぞれの思惑とエゴがあからさまに露呈してからがこの映画の本番です。聖職者が集まっているとは言え、国籍、人種を始め、保守vsリベラルという政治的分断が起き、教会内の権力闘争、陰謀、疑惑と人間のどす黒さがどんどん湧き上がっていき、それは現代社会の縮図さながらです。

そんな中、とにかく穏やかに進めたい主席枢機卿ローレンスですが、その願いとは裏腹に事は複雑になっていくばかり。演じるレイフ・ファインズの苦悶の表情がまた何とも言えない。額のしわはどんどん深く、眼差しはどんどん暗く、「ローレンス、頑張って!」と応援したくなるほどに。
崇高な選挙であるにも関わらず、絶対的権力の座に惑わされた人間の嫌~なところがどんどん漏れ出るわ、スキャンダルが発覚するわ、それを劇伴がこれでもか、これでもかと煽りまくるわで最初はインテリ度数高めのお堅い映画と思っていたのに、たくさんのおじいちゃんとおじさんが狼狽するエンタメ・ミステリー映画だったので、本作が大ヒットするのも納得です。

と、同時に混乱を極める選挙の予想しえない結末、そして全てが終わった時にローレンスが見つめる光景は平和的で、とても晴れやかな気持ちにもなります。それはこの映画が伝統的な儀式を通して、めざすべき未来の兆し、希望を描いているからだと思います。
本年度アカデミ―賞脚色賞受賞文句なし、ですね!
PS,
一見、とっつき辛い題材かもしれませんが『教皇選挙』の公式サイトに人物相関図や解説ページもありとてもわかりやすい、いい作りなのでそちらもぜひ、ご参考までに。
公式HPはこちらのページ
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