ウラシネマイクスピアリブログ

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『TOKYOタクシー』

2025/11/22

 人生を乗せ、タクシーが動き出す♪今回ご紹介する作品は11/21(金)公開『TOKYOタクシー』です。

 上品な老婦人、高野すみれ(倍賞千恵子)を東京・柴又から神奈川・葉山にある高齢者施設まで送り届けることになった、タクシー運転手の宇佐美浩二(木村拓哉)。すみれから「東京の見納めにいくつか立ち寄りたい」というリクエストを受け、タクシーを走らせる・・・

本作はシネマイクスピアリでも2023年に上映し多くのお客様に足を運んでいただいたフランス映画『パリタクシー』を山田洋次監督がリメイクした作品です。

山田洋次監督と倍賞千恵子と言えば「男はつらいよ」シリーズがまず浮かぶ訳ですが、ここでの倍賞さんはこれまでのイメージを覆すようなちょっと強気でオシャンなマダム。キムタク扮する宇佐美は当初、割のいいお客ぐらいの気持ちで彼女を目的地まで届けようとしています。そう、多分ちょっとナメてた。はっきりとものを言うすみれに最初はムっとしてしまう宇佐美ですが、様々な場所をめぐりながら語られる彼女のこれまでの人生は今のすみれからは全く想像もつかないものでした。

若き日のすみれを演じるのは蒼井優。在日朝鮮人2世の男性と恋に落ちるも彼が帰国。別れた後におなかに子供を宿していることを知ります。その後も彼女が経験することは時代が違えばもっと違う道もあったろうに・・・と思わされることも多く、それでも今、宇佐美の目の前のすみれは快活な一人の女性、昔の苦労なんて微塵も感じさせません。彼女との会話を通して宇佐美はどんどんすみれに魅了されていきます。

宇佐美自身、すみれの依頼を割りのいい仕事と思ったぐらいに悩みを抱えていました。妻、娘と3人で睦まじく暮らしているもの、娘の学費、車の維持費と出費は重なるばかり。タクシー運転手の仕事は夢を持って始めたことだったのに、今は生活のための手段になっていて、ただ毎日が精一杯。でもすみれのこれまで、そして今を知るにつけ、彼はいろんな気付きを得ていき、心の変化も・・・。それがすみれをふと大切にエスコートするといった彼の行動にあらわれ始めるところがまた素敵なんです。オリジナルにはなかった運転手のバックグラウンドも丁寧に描いているところは市井の人々を描き続けてきた山田監督らしさも感じます。

監督ご自身『パリタクシー』を御覧になった時、重たい内容を持っているのにとても軽快に楽しく観られるところに興味を持たれたとか。それもあって東京大空襲についてすみれが語るところなど、伝えたい切実なメッセージはしっかり描きつつ、映画全体は偶然の出会いによる一種マジカルな瞬間も描いていて、とっても温かいんです。映画と共に生きてきた山田洋次監督が94才になった今、性別や年代を超えたところにある関係性を描いているのもまた素敵です。

 さてシネマイクスピアリでは山田監督最新作の公開、70本目の山田組に参加の倍賞千恵子さん主演の本作を記念して11月の<キネマイクスピアリ>にて11/28(金)~12/4(木)まで『遥かなる山の呼び声 4Kデジタル修復版』を上映いたします。(山田洋次監督×倍賞千恵子フェス開催!!)

警察に追われる男(高倉健)と牧場を営む母子(倍賞千恵子、吉岡秀隆)の出会いと別れ・・・。私が選ぶ純愛映画邦画部門ベスト3のうちの1本!!お互いが好意を持ちながらも自分の気持ちを押し殺す、たまに漏れ出る高倉健と倍賞千恵子の感情の揺れが眩しすぎる!ぜひとも偶然の出会いが人生を変える二本立て!を堪能していただきたいです!

By.M