『その街のこども 劇場版』

|

17年前、兵庫県西宮市に住んでいた僕にとって、1月17日は3月11日と同じく忘れられない一日です。こんにちは、男住人Aです。そして間もなく、東日本大震災から一年が経とうとしています。

そんな3月、ぜひ皆さんに観ていただきたい作品があります。それが今回ご紹介する『その街のこども 劇場版』。この作品はもともと阪神・淡路大震災からちょうど15年目の当日にNHKで放送されました。その後、評判が評判を呼んで「劇場版」として映画館で公開されることになったのです。僕も大好きなこの作品を、「キネマイクスピアリ〜舞浜で名画を〜」シリーズの3月作品として、今回一週間限定で上映することになりました。
なお今回のブログはかなり個人感情が入っています。皆さんの感想とは違う部分があるかもしれませんが、ウラブログということで、お許しください!

この映画の主人公は、神戸で震災を経験し、しばらく後に様々な事情で神戸を離れた二人。震災の時「その街のこども」だった二人が、15年後、大人になって神戸に戻ってくるところから物語は始まります。一人は15年目の「お祈りの会」に参加するためにやってきた、佐藤江梨子さん演じる女性。もう一人は“神戸なんてキライ”と言いながら出張ついでに何となく新神戸駅に降り立った、森山未來さん演じるサラリーマン。ずっと神戸を避けてきた二人が偶然一緒に過ごすことになった、震災15年目の朝を迎えるまでの一日が描かれます。

kodomo_m.jpg
(複雑な役柄を絶妙に演じる森山未來、すごいです)

僕は二人が15年もの間、神戸に近づかなかった気持ちが分かる気がします。楽しかった街の思い出に、いちいち震災の影がくっ付いてくるからです。たとえ街がきれいに復興したとしても、そのきれいな街並みが生まれた理由はあの日の震災にあるわけで、僕の場合、嬉しい気持ちにはなりませんでした。辛い思い出にはなるべく向き合いたくないものです。でもこの映画の二人は、その思い出や震災の不条理に改めて向き合うために、15年目の神戸の街を歩くのです。二人は街を歩きながら色々な話をします。死んでしまった親友のこと、震災直後の相場の高騰のこと、学校が休みになって喜んだこと、耐震建築のこと。そして、忘れたふりをしてもどうしても忘れられない「震災」のこと、神戸の街のこと。人間の不幸とは?不幸の辛さを克服する方法とは・・・?
そして語り明かした二人は最後に、“震災を忘れたふりをしない”生き方を選びます。

東日本大震災を経験した今、この二人と同じような想いや答えの見当たらない問いを、ますます多くの人々が共有することになりました。それは悲しいことではありますが、だからこそ今、この映画を観てほしいと思います。僕はこの映画を観て、さんざん泣きながらも、なぜか慰められた気がしました。ただ悲しいだけでなく、やたらに励ますのでもなく、不思議な力を持った作品です。

kodomo03_s.jpg
(本編にも登場する「シンサイミライノキ」)

ちなみに主演のお二人は神戸出身で、当時震災を経験したそうです。映画の設定と同様、「その街のこども」だったわけです。脚本の渡辺あやさんも、出身は西宮市。震災をリアルに受け止めたキャストやスタッフが揃ったからこそ、まるでドキュメンタリーのような、想いのこもった作品が完成したのだと思います。本編の最後には、実際の15年目の「追悼の集い」の様子も映像で流れます。

シネマイクスピアリでの上映は、3/10(土)〜16(金)の一週間限定、朝11:00〜の上映です。ぜひご覧ください。

By.A

© 2010NHK

カテゴリ

2015年9月

    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30