北欧なシャレオツ・デザインが大好きな女住人Mです。
北欧の都市・フィンランドと言えば、ムーミン、モダン家具、食器などが有名ですが映画の世界だと彼しかいない、そうフィンランドを代表する監督と言えば“アキ・カウリスマキ”、と言うことで今回ご紹介するのは彼の新作『ル・アーヴルの靴みがき』です。
(地味な僕ら夫婦が主人公だよ)
フィンランドと遠い国のご出身、カウリスマキ監督ですが、彼の作品の多くは日本でも公開されています。不遇な境遇の中でも地に足をつけて、逞しく、でもひそやかに生きる人たちがいつも登場。そんな市井の人々の姿をマッチで温かい明かりを灯すように描き、その温かは何だか日本人の心にマッチすると言うか、彼の世界観はどこか日本的でさえある気もします。だから日本でもカウリスマキ作品のファンが多いのかな〜?
今回の舞台はフランス、ル・アーヴルの港町。靴みがきを生業としているマルセルは奥さんのアルレッティと愛犬ライカとつつましく生活しています。近所づきあいやいつも行くカフェで会う人々とのささやかな触れ合いも彼の至福のひと時。が、ある日アルレッティが病に倒れ入院し、それと入れ替わるように難民の少年イドリッサをかくまうことになります。波風のない平穏な生活を送っていたマルセルの人生は少年との出会いでさざ波が起きます。
(右:警視モネ「難民をかくまってたりしてないよな。」左:マルセル「えっ!?」)
難民の少年とそれを助ける男の話、と書くと何だか小難しそうな気がしますが、一切それはありません。カウリスマキ監督の描く世界は決して多くを語らないのにいつも温かさに溢れています。でも何だかデタラメな所もあってそこが憎めない。それはカウリスマキ監督そのものの人間性とも一致しているようです。
この映画に出てくる人々は皆、質素だけれど、殺伐感は全くなく、お互いがお互いを支え、生きています。金払いの悪いマルセルに呆れ顔のご近所さんは奥さんのアルレッティが倒れたことを知ると、一番の理解者となって手を差し伸べるし、マルセル自身、何の関係もないイドリッサを母の元に届けるために奮闘します。マルセルが困っているならと、行きつけのカフェの女主人や常連客、靴みがき仲間までもが悪戦苦闘。難民のイドリッサを追う警視モネですら、人情を持ち続ける人として描かれます。
(「靴みがきってこうやってやるんだぞ」)
日々の生活はいろいろあるけれど、良き心を持つ人たちが諦めずに、でも横暴になることなくささやかに闘う姿が何とも胸に沁みるのです。そしてみんながそれぞれを思いやって生きている、それはフランスのスローガン「博愛」そのものなのです。
“心をみがけば、奇跡はおこる”この映画のキャッチフレーズを信じたくなる『ル・アーヴルの靴みがき』は5/12(土)よりシネマイクスピアリにて公開します。
By.M
©Sputnik Oy
photographer: Marja-Leena Hukkanen