『キャタピラー』

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恐らく2年前の春だと思います。シネマイクスピアリのトークライブ「おすぎのシネマトーク」で、「ここでは上映しないと思うけど・・・」というような前置きをしつつ、おすぎさんが観たばかりのある作品について熱く語ってくださいました。その時、劇場の片隅で「待ってました!」と大喜びしていた僕。こんにちは、自称“しのぶマニア”の男住人Aです(『ロボジー』の記事をご参照のほど)。今回、ついにその作品『キャタピラー』を上映できることになりました。

そもそも僕にとってこの作品は、まさに奇跡の一作でした。映画デビュー前から出演舞台を見続けていた大ファンの寺島しのぶと、これまた大好きな若松孝二監督の初コラボ。製作のニュースを目にした時から、完成をずっと心待ちにしていました。そして、運良くチケットが買えた映画祭のイベントでようやく初対面した『キャタピラー』は・・・それはそれは衝撃でした。手足を失って帰還した傷痍軍人と、その男を軍神として世話する妻の姿を通じて戦争の愚かさを描くというストーリーは、それだけでもインパクト十分。

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(実は『赤目四十八瀧心中未遂』でも共演しているおふたりです。)

しかし、まぁ何よりものすごい迫力なのが主演の寺島しのぶ!このブログの少し前の『ヘルタースケルター』の記事では女住人Mも太鼓判を押している寺島しのぶ!! ベルリン国際映画祭で最優秀女優賞までも獲ってしまった寺島しのぶ!!! 今回の役は実力派と言われるこの人にとってまさに真骨頂のハマり役だと、長年のファン代表として断言します。通常映画を観るとつい“感想”を語りたくなるものですが、この作品の場合は何というか、感情がドンドンあふれてきて、客観的に感想など言っていられなくなります。きっとそれは、寺島しのぶだからこそ、彼女の役を生きる力があってこそ、為せるワザなのでしょう。

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(お母さんは「3時のあなた」の富司純子さん。本名は「寺島グナシア忍」だよ。)

そしてもう一人、この映画を語るうえで外せないのが、若松孝二監督。僕にとってこの人は孤高で、アウトローなカッコ良さを備えた人。そして自分のメッセージを正々堂々と、力強く発信する人。今年に入ってもすでに2本の新作映画が公開されているほか、『キャタピラー』の2年前には『実録連合赤軍 あさま山荘への道程』(こちらも大傑作!)もとても話題になりました。大島渚監督の『愛のコリーダ』をプロデュースしたのも、名古屋で有名なミニシアター「シネマスコーレ」を経営したのも若松監督です。私ごとではありますが、今回そんな憧れの若松プロダクションさんの作品を上映することができて、嬉しくてなりません。

最近、映画の宣伝でよく「自分事化」ということが言われます。つまり、観る人それぞれがその映画をどれだけ自分に引き寄せて解釈し、興味を持ってもらえるか、そして「これは自分のための、自分が観るべき映画なんだ」と感じてもらえるか、映画宣伝はその手助けをするのだ、といった趣旨の言葉です。それが間違っているとは思いませんが、しかし僕個人は、そんなに容易に自分の身近に引き寄せられるような映画はちょっと退屈に感じます。僕が映画に求めるのは、自分の日常では想像も付かない世界観だったり、理解できないような巨大な感情だったり、とにかくもっと内的スケールの大きなものです。この『キャタピラー』にはそういう意味での“大きさ”や“強度”のようなものがたしかにあると、僕には思えます。しかもそれをささやかな田舎の景色を舞台に、夫婦という小さな単位で描ききってしまうところが、またスゴイのです。皆さんはどう感じるでしょうか。

そんなこんなで、<キネマイクスピアリ〜舞浜で名画を〜>シリーズの8月作品として登場する『キャタピラー』は、8/4(土)〜10(金)までの一週間限定上映です。夕方の上映時間もあります!お見逃しなく!

By.A

© 若松プロダクション

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