2013年2月アーカイブ

『フラッシュバックメモリーズ3D』

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 皆さん、はじめましてコジレ島の大親分Yです。
さすらいの映写屋をしておりまして、普段は映写室の闇に潜んでおります・・・
今回私が映写室から抜け出してきたのは、映写屋と言う立場から特にシネマイクスピアリで見て頂きたい映画があったからです。
ご紹介するのは3/2(土)から1週間限定上映をする『フラッシュバックメモリーズ3D』です。
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 本作は交通事故により高次脳機能障害で過去の記億を失い、新しい記憶を保つことも困難になったディジュリドゥ(オーストラリアのアボリジニの管楽器)奏者GOMAさんの復活を描いたドキュメンタリー映画で、全編にわたりGOMAさんによるディジュリドゥの演奏で構成されています。都内で先だって公開されている本作は口コミでどんどんその評判が広まっていて、ネット上で「大音量でこの映画は見たい!」と言うコメントも多く見ました。と、言う訳でシネマイクスピアリではお客様のニーズにお応えし、全回<大音量上映>でお届けします!

 これまでもシネマイクスピアリでは<大音量上映>を数回行ってきましたが、どの作品も基本的には映画でしたので通常の音響セッティングに、音楽や効果音を活かすためのスパイスを少し加えて映画館ならではの迫力ある音響での上映でした。
しかし今回の『フラッシュバックメモリーズ3D』は、ほぼ全編にわたりGOMA&JungleRhythmによる演奏で構成されており、この作品の魅力を伝えるためには切れの良いパーカッションとディジュリドゥ独特のドローンと倍音の響きを再現する必要があると感じました。コレは腕の見せ所!と言う事で、夜な夜な、ああでもない、こうでもないと調整を繰り返し「コレだ!」となった音は、結果的に通常の映画用の音響セッティングとは異なる『フラッシュバックメモリーズ3D』専用のセッティングとなりました。
手前味噌ながら最高です。強烈なグルーヴ感で頭がクラクラしてきます。

さらに「大音量上映」と銘打っての上映になることもありGOMAさんご本人とサウンドデザインをされた山本タカアキさんに聞いていただく機会がありました。うまく音響の調整が出来たと自分では思っていても、演奏されているご本人がイメージされている音とかけ離れていたらどうしようと内心ビクビクしていたのですが、幸いにも「これは凄い!」と大変喜んでいただけました。クリエイターの方からお褒めの言葉をいただいて映写屋冥利につきます。あとはたくさんのお客様に喜んでいただければ感無量です。

 音のことばかり書いてしまいましたが3Dの映像も凄いです。
3Dでしか表現出来ない映像が次から次へと展開されます。
もの凄い映像と音の洪水でGOMAさんに突然ふりかかった絶望と奇跡を見事に表現した素晴らしい作品です。生命力に溢れていて、生きているって凄い事なんだなと感じさせられます。

 3/3(日)の17:30からの上映回の後には本作監督の松江哲明さんとGOMAさんをお迎えしてのティーチイン付き舞台挨拶もありますので是非そちらもお見逃しなく!
渾身の上映!みんな観に来て!!

By.Y
(C)2012 SPACE SHOWER NETWORKS INC.

『横道世之介』

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 皆さんこんにちは、女住人Mです。去年の邦画を語る上で「桐島、部活やめるってよ」が映画ファンの心を離さなかった代表格だと思うのですが、今年はこの映画がそう言う存在になるんじゃないかと思うのです。
今回ご紹介するのは2/23(土)から公開の『横道世之介』です。
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 主人公はのどかな港町で生まれ育った横道世之介(よこみち よのすけ)。大学進学で東京に出て来てきた彼は入学式で声をかけてきた倉持(池松壮亮)につられてサンバサークルに入部したり、高級ホテルのポーターのバイトをしたりとバブル真っ只中の都会の地に圧倒されながらも毎日を慌ただしく過ごしています。ある日、大学で知り合った友人・加藤(綾野剛)からダブルデートに誘われ、社長令嬢の祥子(吉高由里子)と出会います。本作は1987年長崎から上京してきた世之介の1年間を追う物語であり、かつ彼と関わった人たちの16年後を描きます。

 私と“横道世之介”との出会いは原作本から。「面白いし、きっと気に入ると思いますよ」と薦められて手に取り、その言葉通りこの本が、いえ世之介が気に入りました。なので映画化のニュースを聞いた時は正直「私の脳内で作り上げた世之介がいればそれで良い・・」と思いました。が、世之介を演じるのがこの若さでカメレオン俳優ぶりを発揮する高良くんだし、「南極料理人」や「キツツキと雨」といった日常を常に愛嬌をもって、おかしく、しかも丁寧に描くことが得意な沖田修一さんが監督だし・・・と次第に「動く世之介が見たいかも・・・」と思いながら映画を見たのですが、もうこれが本当愛すべき1本だったのです!原作好きというハードルが上がった状態で挑んだにも関わらず大満足だったのです!まさに本で「横道世之介」の残りページがどんどん少なくなって、「早く読みたい、でも終わらないで・・」と思いながらも最後の1ページを閉じた時に感じたあの時の想いと映画との感覚は同じだったのです。

 世之介は取りたてて、凄く目立っているとか、凄く何かに際立っているとか、そういうタイプの人間ではないのです。友だちに誘われれば全く興味のないサンバサークルにも入るし、(そして意外と満喫しちゃうし)ダブルデートもする(そしてちゃっかり彼女も作っちゃう)、家にクーラーがないから、友だちの家に入り浸るような、誰の周りにも一人はいたようなそんなタイプの人間なんです。でも、なんでもないようなことが〜幸せだったと思う〜私たちは、そういうものにこそ、大切な記憶を宿しているんだと思うのです。

本であれ映画であれ、きっと誰しも世之介を愛してしまう、なんでこんなにこの男は魅力的なんだ!彼に出会って運命を凄く変えられる?そんな大仰な存在でもないんです。でも何かの拍子に想い出し、優しい気持ちになれる、それが世之介なのです。世之介に出会えただけで何だか幸せになれるんです。 私の愛してやまない“横道世之介”に皆さんにも是非会って貰いたい、是非ご紹介したい。
2/23(土)より映画館で世之介に会えますよ♪
By.M
©2013『横道世之介』製作委員会

『ルビー・スパークス』

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 2/14はハッピー・バレンタイン!女住人Mです。さて、この日を境に新しい恋が始まったなんて方もいらっしゃるでしょうが
今回はそんな方にもお届けしたい『ルビー・スパークス』をご紹介します。ふふふ。
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 主人公は天才作家として華々しいデビューを飾りながらも10年もスランプに陥り、2作目が書けないカルヴィン(ポール・ダノ)。ある晩、素敵な女の子“ルビー・スパークス”(ゾーイ・カザン)が出てくる夢を見たカルヴィンは彼女を主人公に小説を書き始めるのですが、朝起きるとなんとルビーが現実の存在として現れちゃった!タイプライターを叩けばルビーは自分の思い通りにどんどん魅力的になっていく!本作はフィクションと現実の世界を飛び越えた所で始まった二人の恋の行方を描きます。

 本作は2006年随一の愛され映画「リトル・ミス・サンシャイン」のジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス(ご夫婦)監督の6年ぶりの新作。主演のポール・ダノが製作総指揮を担当し、ゾーイ・カザンも製作総指揮と脚本を担当、しかも二人はプライベートでも恋人同士と言う、愛溢れる布陣で作られていて、「(500)日のサマー」とかが好きな方にはたまらん1本となっています。
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(ルビーのファッションもたまらなく可愛いね♪)

 カルヴィンが恋するルビーは彼の妄想から作り上げられた理想の女子なので、彼は絶頂に幸せな恋愛関係を楽しむのですが、次第とルビーはカルヴィンへの物足りなさや、「う〜ん、ちょっと違う」といった感情を持ち始め、二人にはズレが生じます。が、カルヴィンがタイプライターで打てばルビーの性格や設定はどんどん変化するので、カルヴィンは思うままにルビーを自分好みに変えていくのです。これって現実でもありますよね〜。自分色にどんどん染めたがる人、逆に自分に無理して相手が喜びそうな方向で考え方を変えたりなどなど。でもそれって、どんどん息苦しくなって、「何なんだ〜!!オレこんなんじゃね〜」ってなるんですよね。そして、ありたい自分といる自分とのギャップに悩み、「今、二人でいるのに一人より厳しいっす、オレ」ってなるのが恋愛における一番の悲劇な気もするのです。(これは結婚をしていてもそうな気がしますの〜)。
一見、ポップな感じで彩られる本作ですが、実は描かれていることは結構エグいと言うか、リアル過ぎて痛くて、それ故、過去の恋愛や今の恋愛を思って、うぉ〜っとなっちゃうんですよね。
 物語の後半で迎えるこの映画のクライマックスはまさに恋愛におけるある事実を何ともダイレクトに描いている、【映画史に残ります認定】をしたくなるシーンなので、これは是非お見逃しなくですよ。なんか、凄いヘビーな映画のように取られそうではありますが、カルヴィンはこれまでの恋愛では得られなかった経験をすることである決意をし、一つ成長することで、また1歩を踏み出しますので、ご安心を。
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(成長するカルヴィン。彼のマスト・アイテムがタイプライターからアレに変わるのもまた良いね)

 本作は誰もが経験する通過儀礼が描かれています。つうことは共感度数高めの愛され映画ってことですよ!
『ルビー・スパークス』は2/23(土)からシネマイクスピアリで公開です。
By.M
(C)2012 Twentieth Century Fox

『ゼロ・ダーク・サーティ』

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 こんにちはサラリーウーマン女住人Mです。
今回は社畜度75%な私が胸アツになった映画、2/15(金)公開の『ゼロ・ダーク・サーティ』をご紹介します。
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 本作はあの世界を震撼させたビンラディン追跡チームの中心人物が若きCIAの新米女性情報分析官であったと言う、その衝撃の事実を映画化した作品です。9.11のアメリカ同時多発テロが起きて数か月。首謀者オサマ・ビンラディンが忽然と姿を消し、CIAは莫大な予算をつぎこみながらも一向に手掛かりをつかめないでいます。そこでパキスタン支局のビンラディン追跡チームに送り込まれたのが20代半ばのエリート情報分析官マヤ(ジェシカ・チャステイン)だったのです。ビンラディンが2011年5月1日ネイビーシールズによって殺害されるまで、本当は何が行われていたのか・・タイトルの『ゼロ・ダーク・サーティ』とは、深夜0:30を指す軍事用語。ビンラディン殺害に至った作戦の決行時間を指します。

本作では現代の戦争のリアルを描いた「ハート・ロッカー」でアカデミー賞を受賞したキャスリン・ビグロー監督と脚本家のマーク・ボールのコンビが再びタッグを組みました。
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(左がジェームズ・キャメロンが元旦那、そしてモデル経験もあるベッピン監督で有名な美(ビ)グロー監督(奇跡の61歳!!)。右が脚本家のマークさん。二人は私生活でもパートナーである・・・らしい。)

「ハート・ロッカー」をご覧になっていればおわかりの通り、ビグロー監督は腕っぷしの強い男かと思うぐらい作家性が強く、硬派な作品を作る映画監督。本作もバリバリでゴリゴリです!そもそも2011年に製作に取り掛かり、短い期間でよくぞここまで調べ上げたと思える脚本はCIAが全面協力。脚本家のマーク・ボールが実際に事件に関わった多くの関係者と会い、体験談をリサーチし、脚本は完成。そのため、本編には海外にある「ブラックサイト」と言う秘密収容所にテロリスト容疑者を極秘移送し、国内では違法とされる拷問で、拘束者から情報を得ようとするシーンなど、アメリカ政府が隠し続けていた真実も描かれています。CIAは10年もの間、ビンラディンの手掛かりを全く見付けられないことで政府(オバマ大統領)からも「ど〜なっとんじゃ〜!お金ばっかり無駄に使いやがって〜成果出しやがれ〜」と説教され、マヤたちチームがどんどん追い込まれる感じもリアル、そして、ついにビンラディンの隠れ場を見つけ、ステルス機で襲撃するシーンからは暗視カメラでの映像になり、臨場感がプラスON!映画「アルゴ」同様、結果がわかっているにも関わらず、その緊迫感たるや!!!その迫力たるや!!!見終わった後は体重1.5kg減な感覚に襲われることでしょう。

 そして、そんな力強い本作の立役者に分析官マヤを演じたジェシカ・チャステインの存在が外せない!「ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜」では不器用過ぎていじめられる主婦、「ツリー・オブ・ライフ」では母性溢れる美しき母親を演じていたジェシカが、まさかこんなに逞しい女性マヤを演じきるとは!!オスカーの主演女優賞は彼女でほぼ決!
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(いろんな役が演じられるので、次世代メリル・ストリープと言われるジェシカは今後もオスカー常連女優になるのは間違いなし!)

 本作は戦争のために無駄に人が死に、軍事費はかさみ、その結果国力は低下し、むなしさだけが残ったアメリカの姿を描くだけでなく、若き女性マヤが組織の中で闘い、成長を遂げる姿を描く側面もあり、上司から責められ、追い詰められていくマヤが「あ〜、やるったい、腹くくってやっるったい!」な男気を見せるシーンに社畜度75%のサラリーウーマンな私の琴線にもグっときた1本なのでした。日常が戦場なサラリーマン&サラリーウマンも必見です!!
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(闘う女マヤ、時には上司にはむかう事も辞さない!)

By.M
Jonathan Olley(c)2012 CTMG. All rights reserved.

『ムーンライズ・キングダム』

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 みなさん、こんにちは女住人Mです。今回ご紹介する映画はまだまだ寒いこの時期、見た人の心をホコっとしてくれる
2/8(金)公開の『ムーンライズ・キングダム』です。
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 主人公はニューイングランド沖にある小さな島に住む12歳のサムとスージー。二人は出会ってすぐシンパシーを感じ、文通を始め、そうする中でそれぞれに孤独を感じていた二人は家を出て駆け落ちをしてしまいます!向かうのはサムが憧れていた場所、“3.25海里 潮流口”。自然が残った美しいこの入り江を二人は“ムーンライズ・キングダム(月の昇る王国)”と名付けます。しか〜し、子供2人が駆け落ちしたことは大事件!大人たちは大慌て!さてこの小さな島での愛の逃避行はどうなちゃうの?と言う物語です。
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 本作の監督はウェス・アンダーソン。これまで「ロイヤル・テネンバウムズ」「ライフ・アクアティック」「ダージリン急行」「ファンタスティックMr.Fox」と言ったファッションと音楽とポップアートが融合しまくる、もうシャレオツ感満載の映画を撮り続けてきた、シャレオツ番長。(対するシャレオツ女番長はフランシス・フォード・コッポラの娘・ソフィア・コッポラですかね。因みに本作の脚本はソフィアのお兄ちゃん、ロマン・コッポラが手掛け、従兄弟のジェイソン・シュワルツマンも本作に出演。)もうその世界観は毎度ながらに完璧過ぎて付け入る隙なんてありゃしない。とにかく世界中のサブカル系映画ファンや映画評論家たちといった特定のファンにはずっと評価されてきましたが、本作『ムーンライズ・キングダム』は公開されるやいなや、「チャーミングやわ〜」「キュートやわ〜」と一般の観客からも絶賛の嵐でウェス作品最大のヒットを記録。本年度のアカデミー賞脚本賞のノミネートを始め、数々の映画賞に受賞&ノミネート中なんです!

 スージーの家がまるでドールハウスに見まごうカメラワークからスタートする映画冒頭から、もうその完璧さにグゥワシ!と心は鷲づかみ。スージーちゃんの衣装から、サムのボウイスカウトアイテムや、途中登場する物語の語りべのおじ様までもうどこを切り取ってもラブリー、ラブリーでもうたまらんば〜い!もちろん、映画のそういったルックスだけでなく、感受性が豊かだけどタフネスも兼ね備えるサムとスージーのキャラクターや、二人の淡い初恋物語、それに翻弄される大人たちのドタバタ物語・・・そしてそれが運ばれる行く末は何とも素敵なエンディングで、ほんわか気分になること間違いなし!主演の二人は映画出演が初めてですが、その脇を固めるのがウェス組常連キャスト以外にもボーイスカウトの隊長にエドワード・ノートンだったり、冷酷な福祉事務局員役にティルダ・スウィントン(「ナルニア国物語」の白の魔女」)だったりと超豪華なので、がっつりサポートしてます。そして今回ウェス作品初出演のブルース・ウィリスが「ダイ・ハード」的な要素を一切排除した警官を演じ、こんな繊細でキュートなブルース・ウィリス見たことがない!と言うインパクト大な役回りで、よりこの映画で輝く存在に。こんなに彼が素敵だったのは「こちらブルームーン探偵社」以来ですよ。
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(頼りない隊長エドワード・ノートン率いるボーイスカウトの面々もまたカワユス)

 役者たち自身がウェス・アンダーソン監督との仕事を切望し、集まり、作り上げている作品なので、もうそのチーム感にも胸熱です!エンドクレジットに至るまで、完璧過ぎるウェス・ワールドを是非ご堪能下さい!!

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(「安いギャラで長時間撮影にかかるアート映画をウェスと作りたいから、他の映画で頑張って儲けているんだぜ、ぐっはははっ」
By.ウェス組常連・ビル・マーレイ)

By.M
(C)Focus Features

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