春の嵐が吹き荒れる4月、皆さん如何お過ごしですか?女住人Mです。
さて今回は今、私が密かに役者として魅了されている男優さんが主演している作品『君と歩く世界』をご紹介します。
ステファニー(マリオン・コティヤール)はマリンランドのシャチの調教師ですが、ショーの最中、不慮の事故により両足を失います。一方、夜警の仕事をしているシングフファーザーのアリ(マティアス・スーナーツ)は息子と姉の家に居候し、なんとか日々をしのいでいます。両足を失くしたステファニーは自分に向けられる他人からの同情に、ますます自分の殻に閉じこもるのですが、以前一度だけ会ったことのあるアリに連絡をします。粗雑で乱暴に見えるけれど、特別扱いすることなく自分に接するアリに唯一ステファニーは次第と心を許していき、アリも初めて自分にきちんと向き合う女性と出会い、何かを感じ始めていく・・・と言う二人の男女の物語です。
(ほぼスッピンでこの役を演じたマリオン。フランス語で演技する方がより魅力的な印象も・・・)
一般のお客様からすると「ミッドナイト・イン・パリ」、「ダークナイト ライジング」でお馴染みのマリオン・コティヤール最新作、となるのでしょうが、今回は相手役のアリを演じたMyオシメン、マティアス・スーナーツに絞ってご紹介します!去年公開された「闇を生きる男」でこの役者さんを知った私。その映画の中でのマティアスは圧倒的な説得力を持って存在していました。主人公が持つ、渇き、絶望といった複雑な心情を見事に表現して佇む男。マティアス・スーナーツと言う覚えにくい名前のこのベルギー人俳優との出会いは本当に衝撃的でした。役者に必要なものの1つに“人間力”があると思うのですが、マティアスはその中でも野性的な“人間力”が溢れている人に思えます。
(マティアスのこの瞳がまた良い演技するんですよ。)
で、本作です。映画の中で詳しく説明はされませんが、マティアス演じるアリの生きざまはきっと子供の頃から金銭的にも余裕もなく、特別な愛情を与えられることなく、充分な教育も受けることなく大人になってしまったことが感じられます。それゆえハングリー精神は旺盛で、肉体的にも優れていたため、格闘試合や体を張った仕事でもって生計を立てている、それが彼の唯一の生きる道であることも示唆されます。それゆえ、体の一部を失くしたステファニーにとって、アリが自分を特別視しないというだけでなく、(自分にはない)逞しい肉体を持ち、生命力溢れるアリはまさにあこがれであり、それを目の当たりにすることで自分も生きていることを実感出来たのだと思うのです。そして惹かれ、自身が生きていることを実感するために肉体的にも繋がる。大人の愛が育まれるのです。
粗野な環境で育ち、まともな人間関係を築いたことがなかったアリは時に乱暴で愚かな行動をとってしまう一方、純粋で誰かを陥れたりすることは決してありません。だからなのか、せっかく物事がうまく行きそうになるアリに、そういう時に限って不運が襲うのですが、アリが不器用過ぎるから神様までも無碍に扱うの?!とさえ思ってしまう展開も・・・愚かだけど憎めないヤツ。でも、こういう男を演じさせたら世界中探してもマティアスに勝る役者はいないと断言出来ます。
(マリオンとジャック・オディアール監督が来日!マリオンと同い年の中谷美紀さんが二人をお迎えしました♪)
本作、ラストのアリの語りに込められたこの映画のメッセージは胸熱度100%。
『君と歩く世界』はシネマイクスピアリにて4/6(土)から公開中です。
マティアス・スーナーツ、以後お見知りおきを!
By.M
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