『ハッシュパピー バスタブ島の少女』

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 変な天気が続きますね。これも地球温暖化とかの影響なのでしょうか?皆さん、こんにちは女住人Mです。
本日ご紹介する作品はそれにもちょっと関わる物語。低予算のインディペンデント映画ながら本年度アカデミー賞作品賞、主演女優賞を始め4部門にノミネート、去年のカンヌ国際映画祭やサンダンス映画祭を始め数多くの賞を総ナメにした
『ハッシュパピー バスタブ島の少女』をご紹介いたします。
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 舞台は南ルイジアナに浮かぶ島、通称“バスタブ”。6歳のハッシュパピー(クゥヴェンジャネ・ウォレス)は父親のウィンク(ドワイト・ヘンリー)と暮らしています。貧しいけれど活気ある“バスタブ島”での暮らしですが、ある日、百年に一度の大嵐が“バスタブ島”を襲い、水没の危機にさらされます。しかも、父親のウィンクの身にも何かが起きていることをハッシュパピーは勘づいています・・・6歳の少女の小さな世界の周りで起き始める、大きな出来事にハッシュパピーはどういう答えを見い出すのでしょうか・・・

 本作が注目を浴びたのはインディペンデント映画の祭典、サンダンス映画祭でのこと。若干29歳の新人監督ベン・ザイトリンが6歳の少女ハッシュパピーの目線を通して描く世界はあっと言う間に観客の心を魅了します。決して一人でなんて生きていけない幼い少女が次々自分に襲いかかる現実にイマジネーションでもって立ち向かい、しかも空想の中で生きようとするのではなく、それを現実に昇華する姿がもうなんとも逞しい!

ハッシュパピーちゃんは学校の先生からこんなことを教わります。「しばらくすると嵐が来て、南極の氷を溶かし、この地は飲みこまれるんだ。その時に太古の時代から氷河に閉じ込められていた動物オーロックスが生き返り、この地を襲う」と。ピュアなハシュパピーちゃんはこれを信じ、嵐がくる前触れやお父さんの身に起ころうとしていることをオーロックスの襲撃とリンクさせます。もちろんオーロックスの存在に恐れをなし、妄想の世界に閉じこもるのでなく、それに果敢に立ち向かおうとするのが普通の女の子とは違うところ。それは母親がいないハッシュパピーちゃんがいつか一人になってしまうことを案じた父・ウィンクが強く生きることを常に彼女に教え、また自然に溢れる中で育ってきたことで自ずと身に付けた彼女の生きる術なのです。普段はお酒を飲んではバカ騒ぎをするようなお父さんも、人間に一番大切な生きる力だけは日常的にしっかりとハシュパピーちゃんに叩きつけるのです。それ故に子どもらしさと共に、生きる強さを知らず知らずと自分のものにしていくハッシュパピーちゃんのなんと魅力的なこと。
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(左がハッシュパピーちゃんが妄想するオーロックス。こういうのが現れるところから
本作は南ルイジアナ版「もののけ姫」と例えれることも・・・)

ハッシュパピーを演じたクゥヴァンジャネス・ウォレスちゃんは撮影当時、まだ字も読めなかったそうですが、まさにこの役をやるために選ばれたような女の子。本作の演技でアカデミー賞最年少ノミネート女優にもなる偉業を達成することとなるのです。
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(この横顔が逞しい!)

本作の舞台となる南ルイジアナは2005年ハリケーン・カトリーナによる悲劇からまだ立ち直れていないばかりか、格差社会による貧困にも苦しんでいます。地球温暖化による水面上昇の影響を最も受ける地域であり、将来地図上からなくなってしまうかもしれないとも言われています。でもハッシュパピーにとってこの地は生きていく場所。自分の現実が、自分の愛するものがなくなろうとしている時、どうやって守り、どう生き抜くのか。小さな命はこれに正面からぶつかります。
この物語は遠い国の話ではなく、生きることにもっと真正面から立ち向かわなければならない、私たちに一番近い映画に思えます。
『ハッシュパピー バスタブ島の少女』は4/20(土)よりシネマイクスピアリで公開中です。

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