『ペコロスの母に会いに行く』

|

こんにちは。たまに現れては日本映画への偏愛を語る男、男住人Aです。さて、年末を待たずに僕は早くも断言します。「今年のBEST1映画が来た!」と。もう号泣!大号泣!泣き崩れました。それこそが11/16(土)から公開の映画『ペコロスの母に会いに行く』。タイトルのペコロスとは本来は小さなたまねぎの呼び名ですが、ここでは主人公の男性・岡野ゆういちさんのことを指します。その風貌(特に頭♪)から名付けられた、彼のニックネームです。つまりこの映画は「●●さんのお母さんってどんな人?会いに行こう!」というタイトルなわけです。そしてその名のとおり、ストーリーはペコロス(=息子の岡野ゆういちさん)のお母さん・みつえさんの人生に、深く、深く入っていきます。

そんなみつえさんは現在、なかなかなお歳のおばあちゃんで、認知症を患っています。演じるのは、渡鬼ファンの間では「意地悪そうに見えるけど実は意外とイイヤツ」と評判(?)の“幸楽のおかみさん”でおなじみ、赤木春恵さん。なんと赤木さんは御年89歳。にも関わらずと言っては失礼ですが、赤木さんの可愛らしさとユーモアたっぷりの佇まいは本当に絶品!見事に本作のヒロインを務めあげています。

peco_sub1.jpg
(息子のゆういちを演じる岩松了さんは、実際には髪の毛フサフサ。うらやましい・・・。)

特に物語の前半では、みつえちゃん(春恵ちゃん)が認知症ゆえに引き起こしてしまう数々のうっかりエピソードが描かれますが、本作ではそのどれもが温かく見守る目線で語られます。恐らくそれは、息子・ゆういちさんが母に抱いている気持ちの現れであり、監督の優しい眼差しでもあります。例えば、自分の帰りを遅くまで駐車場で待ち続けるみつえちゃんにゆういちは一度は「危ないし、風邪をひくから」と叱るわけですが、また次の日も同じことを繰り返す母に結局は何も言えず、一緒に家まで歩くシーン。この親子のそんな日常のやり取りを見ていると、「老い」「介護」という問題に付きまとうちょっとブルーな気持ちが、どんどん温かくなってきます。

ちなみにこの作品は長崎在住の漫画家・岡野雄一さんが自身の経験を元に描いたエッセイ漫画が原作になっています。それを老いに関してリアル世代である85歳の森崎東監督が手がけたことで、映画の真実味がグッと増したとも思います。

ところで僕にとってこの作品の一番の泣きポイントは、症状が悪化してきたみつえの記憶が過去へとさかのぼり、同時に映画の中でみつえの人生が幼少期から語られはじめるところ。今は老いて認知症になった母にも幼い時代や若き日々があったことは当たり前のことで、さらにみつえが生きたのは戦争をまたぐ激動の時代でした。まだ幼いゆういちを育てながら、そんな時代をみつえ(および父)がどのように生き抜いたのか。みつえのそれまでの人生をたどることで、不思議なことに映画を観ている僕には今みつえがたどりついた「老い」が、まるで人生の結晶のように見えてきました。こういう視点を持った映画に、僕は初めて出会いました。

peco_sub2.jpg
(加瀬亮さんがゆういちの若き日の父。母は原田貴和子さん。この二人がもう最高!)

貧しい時代を生き、時には死を選ぼうとしたこともあったみつえ。大切な夫や親友を亡くし、悲しい思いを抱きながら生きてきたみつえ。認知症になった母は今、去ってしまった人々とさかのぼる記憶の中で再会することもできるのです。
そして主人公のゆういちは言います。「ボケるとも悪か事ばかりじゃなかかもしれん」と。あー、涙、涙。
ブログを書いてたら我慢できなくなってきたので、明日もう一回観ます!

By.A

©2013『ペコロスの母に会いに行く』製作委員会

カテゴリ

2015年9月

    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30