『キューティー&ボクサー』

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 皆さん、こんにちは!女住人Mです。すっかり街はクリスマス一色ですね。今回はこの時期にデート映画として、カップルにもご夫婦にもおススメした1本をご紹介します。
ある夫婦の日常を4年間密着したドキュメンタリー映画『キューティー&ボクサー』です。
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 主人公はニューヨーク、ブルックリン在住の“ボクシング・ペインティング”で知られる現代芸術家の篠原有司男(しのはら うしお・81歳)こと“ギュウチャン”と妻・乃り子さん。前提的パフォーマンスで岡本太郎さんにも認められていたギュウチャンはさらなる活躍の場を求め1969年に渡米。一方、乃り子さんは美術を学びにNYにやってきますが、21歳年上のギュウチャンと恋に落ち、結婚、出産。裕福な家庭からの仕送りは打ち切られ、その日暮らしになってしまいます。その後、紆余曲折ありながらも、ギュウチャンは自身のアートを探求し続け、乃り子さんは自分の表現方法を手に入れ、夫婦二人の展覧会が開催されることになる・・・といった二人の今を追った映画なのです。
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 本年度のサンダンス映画祭(ロバート・レッドフォード主催のインデペンデンス映画祭)のドキュメンタリー部門で監督賞受賞して以降、各国の映画祭で観客賞を受賞している本作はまさに愛され映画な1本。日本ポップアートの先駆者にして“日本で初めてモヒカン刈りにした男”ギュウチャンのドキュメンタリーと聞いて、どんな破天荒な人生模様が垣間見られるんだろう、と思っていたら、それは本当に凄かった!そして、本作の一番の魅力はそんな滅茶苦茶なギュウチャンの人間像より、ギュウチャンに惚れたばかりに、彼の人生に巻き込まれてしまった乃り子さんの存在だったのです。冒頭すぐは、NYで自分の人生を40年貫いている現在のギュウチャンが映し出されます。でも乃り子さん「どうするのよ、生活費ないわよ」とどやされ、時にバツが悪そうな表情をし、自身の作品を日本に売りに行くギュウチャン・・・。日本で商売をしてきて、「俺もやれば出来るよ」と偉そうにするけど「それ当たり前だから」とクールに交わされるギュウチャン。それに似た光景は自分の家や友達夫婦のお宅でよく見ますよね・笑。
これはアートの映画と言うよりは、まさに二人の愛?!の軌跡を追ったドキュメンタリーだったのです。
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 乃り子さんはギュウチャンとの出会いで人生が一変、自身の志はそっちのけでただ生きるためにギュウチャンを支える存在となります。が、子供も成長した今、自分自身を“キューティー”と言うキャラクターに投影し描き始めたドローイング「キューティー&ブリー」シリーズを綴ることで才能を開花させていきます。乃り子さんはこれまで起こった夫婦の出来事をユーモア交えてそこにぶつけることで新しい自分の居場所を見つけていきます。それは乃り子さんの自立ではあるのですが、決してギュウチャンとの決別ではなく、ギュウチャンと共に歩き続けたことを肯定した上での自立と言うのが素敵!そこには長い時間夫婦としてずっと一緒にいると言う愛着だったり、乃り子さんはインタビューでも「別れたら働かなきゃいけなくなって、それだとアートは捨てなきゃならないし」なんてズバっと言ってしまったりもしていますが、そこには第三者は決して入ることが出来ない二人だけの共有する想いすら感じるのです。
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(映画の中ではアニメーションとして動く“キューティー&ブリー”も見られてそれもキュート♪)

そして乃り子さんのそんな変化を一番感じとっているのが誰でもないギュウチャンであり、作品に向かう乃り子さんが気になってしょうがない風に見つめている様もバッチリ納められていて、「これぞ夫婦善哉やわ〜」と思わない訳にいかない。40年という長い間、苦楽(多分、苦がすご〜く多い)を共にしたからこそ手に入れた絶妙な二人の距離感もバッチシ伺えます!

 本作は先ほど発表された来年のアカデミー賞ドキュメンタリー長編部門の一次審査を(147本から15本のうちに絞られた1本として)通過!本選のノミネート作品5本のうちに入るのか?1/5に発表となりますので是非その動向もお楽しみ下さい。
二人の夫婦生活は珍道中、会話は夫婦漫才、でもその先には二人だけで築いた愛の軌跡が伺える、『キューティー&ボクサー』は12/21(土)からの公開です。

★おまけ情報★
来年の1/13まで渋谷のParco Museumで「篠原有司男 篠原乃り子 二人展 愛の雄叫び東京編」も開催中です。

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(右が監督/撮影/プロデュースのザッカリー・ハインザーリングさん。29歳の若さでこんな作品を撮るなんて!!)
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(体全体で表現するボクシング・ペインティグ!ギュウチャンかっちょえ〜)

By.M
(c) 2013 EX LION TAMER, INC. All rights reserved.
■配給:ザジフィルムズ、パルコ
■提供:キングレコード、パルコ

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