『ローン・サバイバー』

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 皆さんこんにちは、女住人Mです。
シネマイクスピアリでは先日発表されたアカデミー賞関連の作品をいくつか上映中ですが、本年度のオスカーで2部門にノミネートされていた作品を今回はご紹介します。私の中の男が震えた!?『ローン・サバイバー』です。
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 本作はネイビーシールズ創設以来、最大の惨事として記憶された“レッド・ウィング作戦”を描いた真実の物語です。
2005年6月、タリバンの指導者アフマド・シャーの捕捉と殺害“レッド・ウィング作戦”の決行を告げられたアメリカ海軍特殊部隊ネイビーシールズの4人マーカス(マーク・ウォールバーグ)、マイケル(テイラー・キッチュ)、ダニー(エミール・ハッシュ)、マシュー(ベン・フォスター)。
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彼らはアフガンの山岳地帯でシャーの存在を確認し、偵察をしていたのですが、偶然、地元のヤギ飼いの農民3人に遭遇してしまいます。このまま解放すれば、間違いなく農民たちはシャー率いるゲリラに密告し、作戦は失敗に終わります。しかし民間人である彼らを殺害することは(法律上も)許されない。想定外の事態を前にマーカスら4人は口論の末、彼らを解放し、基地と連絡を取り帰還することを決めます。その結果、彼らを待ち受けていたのは逃げ場のない山中で200人のタリバン兵の追撃を受ける壮絶な展開だったのです・・・。

 ネイビーシールズとは陸海空の極秘任務を遂行する万能部隊として知られるエリート中のエリートたちが集まった精鋭部隊。そんな彼らが敵のタリバンの息がかかる農民たちと偶然出会ってしまったことで、決断と覚悟の連続を迫れます。特に最初の決断、農民を生かすか殺すか問題・・・その決断は自分、そして仲間の命を左右する上に、作戦の結果をも左右するのです。もうこの緊迫感たるや・・・人道的な決断をした彼らは結果、完全武装したタリバン兵200人に狙われることとなるのです。「あの時、農民を殺しておくべきだったのか・・・・」全編に渡りこの時の判断が全てここに帰結するのです。

そして物語は4人VS 200人のタリバン兵との壮絶な闘いへと向かいます。危険を察知したリーダーのマイケルは基地と連絡を取り帰還の道を選択しますが、無線も衛星電話も繋がらない。連絡を取るべく山の頂上に向かうも木のない丸裸の崖地で、4人はあっと言う間にタリバン兵に囲まれてしまいます。「山頂をめざすんじゃなかったのか・・・」そしてすさまじい緊張感の中、4人は自分を、仲間を信じ、まさに“仲間を生きて帰すこと”のために決断と覚悟を繰り返すのです。「俺はお前を守る、何としてもお前を守る」精神の4人の激闘にもう私の中の男は震えまくりです!
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しかも逃げ場のない山中で負傷も負う4人が何としても生き延びるために選ぶ方法が“崖を落ちる=転落する”ことなのです。戦争映画は「プライベート・ライアン」以前と以降で分けられる程、「プライベート・ライアン」での激戦シーンは生々しいものでしたが、この“転落”シーンは本作が戦争を描いた映画として確実に「プライベート・ライアン」級に記憶に残ることを決定付けるようなシーンです。スタントマンさんは生きているのか不安になるぐらいの壮絶シーンですが、実際にあった話な訳で、本当に信じがたい・・・・。
そして、最終的にこの壮絶な襲撃からたった1人の男が逃げのび、別のアフガン人の男に命を救われることとなるのです・・・

本作では、生死をかけた決断、サバイブするための覚悟、仲間を守ることの意義、いろいろ考えさせられるのですが、逃げることが出来た男はなぜアフガン人に救われたのか、と言うことが引っかかります。彼も羊飼いの農民と同じく、匿うことでタリバン兵に殺される危険があるのだから・・・実はそれはこの地域に伝わる“パシュトゥーンの掟”の存在があったからなのです。それは「助けを求めてきた客人は、どんな犠牲を払っても守り抜く」と言う教え。これがあったから実際にオサマ・ビンラディンはタリバン政権の庇護のもとアルカイダを建設し、それが同時多発テロを引き起こし、後に10年も逃亡しえたのです。“パシュトゥーンの掟”によって引き起こされた戦争、そして生かされることとなったアメリカ兵の命。とても複雑な思いがよぎります。
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これが実話であることが信じられないぐらいですが、そこには仲間を想う底知れぬ強さが存在しています。一人しか生き残れなかったけれど、一人では生き残れなかった。この映画のそんなテーマが私の中の男を震わせました!『ローン・サバイバー』は3/21(金)からの公開です。

<蛇足コメント>
 個人的なオススメポイントは本作が祭り映画「バトルシップ」の監督、ピーター・バーグの最新作であること。
「バトルシップ」では、恋人のためにチキンブリトーを万引きするというダメダメ男を演じたテイラー・キッチュを本作で再び起用。あの時の戦いで恋人の怖いお父さんだったリーアム・ニーソンに認めて貰えたこともあり、本作では成長した姿を見せてくれますって、全然別の映画ですけどね。「バトルシップ」の続編と思ってテイラー・キッチュの活躍を見ると感慨深いので「バトルシップ」大好きなバトルシッパーの皆さんは是非、ご覧下さい!

By.M
(C)2013 Universal Pictures

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