『リトル・フォレスト 夏・秋』

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 皆さんこんにちは、田舎度合を競うと全国で2本指に数えられる県の出身、女住人Mです。
今回ご紹介する作品は私の田舎と同じように自然豊かな地、東北のとある村を舞台にした映画『リトル・フォレスト 夏・秋』です。
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 主人公のいち子(橋本愛)は東北地方の小さな集落、小森で一人暮らしをしています。近くにスーパーもコンビニもない小森での生活はほぼ自給自足。生きるために食べる、そして食べるために自分で作る。全てがひとつながりになったシンプルな暮らしの中でいち子が自分の生き方を見つめ直す物語です。
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(若いけれどたくさんの映画・ドラマに出演している橋本愛ちゃん。そんな彼女のベスト・アクトが本作です!<私、調べ>)

 さて、世の中的に一時期“スローフード”、“スローライフ”なんて言葉ももてはやされ、ポージングだけの「ビバ!田舎での贅沢な暮らし」みたいな風潮がブームになりました。でも田舎育ちの私は企画だけが先行するようなこのブームを「田舎なめんなよ」とどこか苦々しい思いで見ていました。やっぱり田舎で暮らすってことはとっても大変な訳です。多分、未だにうちの田舎には半径10キロ圏内にコンビニはありません。この季節、夜になれば虫が鳴いて風流だわ〜と思う余裕もなく、明かりにむらがってくる蛾やらアブやらと格闘。冬になればとんでもなく雪が降り積もり一晩にして我が家が陸の孤島化してしまう。もう不便極まりない訳です。田舎の暮らしは決してスローなんかじゃなくむしろ“ハードなライフ”なんです。

そんな思いがある私は「格好だけ取り繕ってたら承知しないわよ」と思いながらこの映画に臨んだのですが、終わってみれば本作、もうとっても素敵な映画でした。映画の始め、いち子が抜いた雑草が次の日には芽を生やしているのを見て「ぞっとする」と表現します。このシチュエーションを「草木はやっぱり生命力が逞しいのね」とか言われたらそれはそうなんですが、生活をする人にとってみれば「ぞっとする」ものでもあるのです。自然はそう優しいものなんかじゃないんです。
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その一方で自然が与えてくれる恵みにいち子は敏感です。秋に実を付ける赤いグミの木。苦いその実はそのままだと食べても美味しくはないのでいち子はジャムにします。実がなっても誰も取ってくれないから地面に落ちて朽ちるだけのグミの実。それを毎年繰り返すグミの木。グミの木のそんな成長のサイクルを見ていち子は「つみかさねたことはみんな無駄だった。そんなのって寂しいわね」とぼやきながらも、ジャムにしたことで美味しく食べられるようになったグミの実をバゲットに付けて頬張る。そしていち子はグミの木の成長と自分の成長を重ねてみる・・・
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 劇中で多くは語られませんが、都会に一度は住んでいたいち子が一人田舎の小森に戻り、逃げ出した人生と向き合うようになっていく。小森の生活の中で何かを見付けていく。生きる=食べる=作る、が上っ面でなく、丁寧に誠実に語られる本作は、ちょっと疲れたな〜と感じる人の心をきっと豊かにしてくれると思います。
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 食事を食べる時に私たちはその食材を作ってくれた人、食事自体を作ってくれた人に対して「いただきます」と言いますが、きゅうり、青菜、さつまいも、岩魚、鴨と様々な自然の恵みを食べて毎日を生きるいち子が「いただきます」を言うのを見て、その言葉には「命、いただきます」と言うことでもあったのだな、と今さらながらに感じたのでした。
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 いち子を演じる橋本愛ちゃんは「あまちゃん」で能年ちゃんと並んで人気者となりました。彼女はまだ18歳なのですが、実際料理もみっちり練習し、習得し、この映画の中でしっかりいち子になっているのがとっても印象的でした。『リトル・フォレスト夏・秋』は8/30(土)からの公開です。夏編を1時間、秋編を1時間の2本立てで1本の映画として上映すると言うちょっと変わった形態で、2/14(土)から「冬・春」が上映されます。ひと足先にこの映画を観させて貰った私は今からそちらの公開も楽しみです!

(C)「リトル・フォレスト」製作委員会
By.M

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