『くちびるに歌を』

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 なくして初めてその大切さを知るものですね、こんにちは女住人Mです。
今回ご紹介する作品は瑞々しいキャストたちの演技がキラキラ輝く、2/28(土)公開の『くちびるに歌を』です。
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 舞台は長崎県の離島・中五島中学校。小さな島の中学の合唱部に東京から臨時教員として赴任した柏木ユリ(新垣結衣)。東京で活躍していたピアニストが先生としてやってきたことに胸躍らせる生徒をよそに、柏木は冷たい態度で接し、頑なにピアノを弾こうとしません。それでも合唱部の顧問として生徒たちに接する柏木はコンクールの課題曲「手紙〜拝見 十五の君へ〜」の理解を深めるために生徒たちに“15年後の自分へ手紙を書く”という課題を与えます・・・

 本作は2008年全国学校音楽コンクールの課題曲となった「手紙〜拝啓 十五の君へ〜」の作者アンジェラ・アキさんが合唱コンクールに出場する五島・若松島の中学生たちと交流する様子を追ったドキュメンタリーをヒントに書かれた青春小説が原作です。原作自体もベストセラーとなり、書店で平積みにもなっているのでご存知の方もいらっしゃると思いますが、特にアンジェラ・アキさんが歌う♪拝〜啓、この手紙〜読んでいるあなたは〜♪は耳馴染んでいる方も多いと思います。
♪い〜ま〜、負けそうで泣きそうで、消えてしまいそうな♪ 時にこの曲に励まされた若い子たちがきっとたくさんいるんだろうな、とも思います。だからこの曲自体も大ヒットしたんだと。
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でもいい年した大人になり、おばさんとおじさんの階段を交互に駆け昇る私としては、正直こっ恥ずかしいものがあった、素直にあの曲を聴けない・・・そんなへそ曲がりなところがあったのです。なので本作を観る前は「なんか正統派過ぎて恥ずかしいな。素直に観られないな〜。泣かないよ〜これ観て泣かないよ〜」なんて天の邪鬼な気持ちでいたのです・・・・が、もうそれを猛烈反省するぐらいの大号泣な有様でして・・・。

何がって、もうやっぱり10代の頃って世界が狭いから(って、今でも狭いですけど・・・)何かにぶち当たった時に、自分の見えるもの、関わるもの全てが総動員で圧力をかけてくるじゃないですか。経験もあまり積んでないから、誰かに助けを求めたり、ある程度諦めたりすることなんてなかなか出来ない。でも大人になると知恵がついて、それをかわすテクニックを徐々に覚えていくじゃないですか。そうすることで生き易くなって、それを成長と言うのかもしれないけれど、そんなことが出来ない10代の頃のピュアネスってなんて眩しいんだ!不器用ってなんて財産なんだ!もう失くしちまったよ〜、と思う訳です。
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この映画の中の15才の少年少女はその年代の子が当たり前のように抱えているようにそれぞれいろいろ悩みがあります。そして当然のようにそれが受け止められないでいるのです。でも、彼らは歌と出会い、仲間と出会い、それらと一つずつ、それぞれのペースで向かいあっていくのです。真っすぐに、真正面から。そして自分という人間をちょっとずつ肯定していく強さを得るのです。だから傷を負ってこの地にやってきた大人の柏木先生もそんな生徒たちとの出会いで変わっていくのです。この子たちがこんなに向き合っているのなら、自分もそうしなきゃ、そう出来るはずだと・・・。
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そんな彼らが歌う「手紙〜拝啓 十五の君へ〜」を聴いたらもう泣かない訳にはいかない。
汚れちまった私と言う世界とちゃんと正面から向かい合って、もう一度輝かせたいぜ!と恥ずかしげもなく思ってしまうのでした。

 なんかキャラが崩壊した紹介文になりましたが、本作は登場人物である彼らと同世代の迷える若者たちに一番に観てほしい作品ではありますが、15才だったことがある大人にも観てほしいと思う訳で、つまりそれは「みんな観てね!」ってことです!!
春の足音が微かに聞こえ出したこの時期に、新しい旅立ちが近づくこの季節にぴったりの1本です。

By.M
(c) 2015 『くちびるに歌を』製作委員会 (c) 2011 中田永一/小学館
(JASRAC 出 1415954-401)

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