『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』

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 こんにちは、女住人Mです。今回は私の大好物バッチさんこと、ベネディクト・カンバーバッチさん主演、本年度アカデミー賞作品賞、主演男優賞ほか8部門ノミネート、そして脚色賞を受賞した、3/13(金)公開『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』をご紹介します。
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(マシュー・グードに「ダウントン・アビー」のアレン・リーチほか素敵な英国&アイルランド男子がバッチさんの脇を固めます。)

 本作はコンピューターの概念を創造し、コンピューターの父と言われるアラン・チューリングの物語。第二次世界大戦時、劣勢を強いられていた連合軍の勝機はエニグマによって暗号化されたドイツ軍攻撃の情報を入手することにかかっていました。つまりそれは暗号機エニグマを解読すること。精鋭チームの一人として天才数学者、アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)はこの暗号解読の機密作戦に参加するも、自信家でエキセントリックな性格が災いし、一人で解読マシンを作り始めたことで孤立していきます。そんな中、チームに加わったジョーン(キーラ・ナイトレイ)が彼の良き理解者となり、仲間との絆が生まれ始め、ついにはエニグマの暗号が攻略されるのですが、それは思わぬ悲劇に繋がっていきます。
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 物語の前半は類まれな才能を持ちながらも他者との交流を拒むチューリングの独特な人間性が描かれつつ、チームでエニグマを解読していく様がスリリングに描かれます。一秒でも一日でも早く解読することが出来れば一人でも多くの命が救えるのに一向に解読の兆しは見えない・・・。こういった時代背景の物語がお好きな方にはたまらないハラハラの展開が進みます。しかし本作がアカデミー賞脚色賞を受賞しているのはこのミステリー的な要素が巧みに描かれているからだけではありません。むしろ、エニグマ解読という偉業を成し遂げながらも、それにより数奇な運命をたどることになったチューリングの人生がきっちり描かれているからと言えます。
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チューリングが暗号を解読するために開発した機械は現在のコンピューターの基礎となっています。コンピューターなくしてはもう日常生活が送ることが出来なくなった我らにとってはチューリング様、様な訳ですが、そんな彼の存在を知っている人はどれだけいたでしょう。それもそのはず、彼の偉業や人生はチューリングが抱えていた秘密によって50年以上もイギリス政府によって隠匿されていたのです。彼が暗号を解読したおかげで助かった命が数えきれないほどあったにも関わらず、より多くの命を救う手段としての作戦を政府が隠したかったから、そして何よりチューリングのある秘密を当時の政府は許していなかったために彼は汚名を着せられ、ついには41歳という若さでこの世を去ってしまうのです。それは時代のせい、社会のせい、そんな言葉では片付けることが出来ないくらい、ただただ胸が締め付けられる仕打ちです。
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 そしてそんな悲痛なチューリングの人生がこんなにもダイレクトに胸に迫り、孤独だった彼の危うさが際立ち、こんなにも観る者の心を締めつけるのは、ベネディクト・カンバーバッチ、そうバッチさんが彼を演じたからこそなのです!!彼を一躍スターの座に押しやったシャーロックしかり、コミュニケーションを取るのが苦手だけど繊細でどこか儚げで脆い超天才を演じさせたら、もうバッチさんの右に出るものはいません。彼をシャーロックで見染めたあの夏から、きっと彼はオスカーの賞レースにも参戦するような世界的な俳優になるに違いないと踏んでいた私の目には狂いはなかった・・・悲運な人生を遂げたチューリングを入魂で演じるバッチさんをファンとして誇らしい気持ちです。
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(普段は天真爛漫な愛されキャラですが、一度俳優になると豹変する“モンスター”。
それがバッチさんです。今後もご贔屓に。)

と、バッチさんに興味がない方にはどうでもいい展開になってきましたが、とにかく暗号解読をめぐる背景に隠されたチューリングの切ない運命を知ると、憤りしかありません。
彼がなし得たこととは裏腹に彼の人生は壊れていくのですから・・
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 本作でアカデミー賞脚色賞を受賞したグレアム・ムーアさんは受賞スピーチで自身が16歳の頃に自殺未遂を経験していることを告白しました。「自分は変わった人間だと、周りに馴染めないと感じたから。でも、そんな自分がアカデミー賞の栄誉を手にすることが出来ました。この映画を、そういう子供たちに捧げたい。自分は変わっている、どこにも馴染めないと思っている人たちへ。君には居場所があります。変わったままで良いのです。」と。

 このスピーチを知った上で本作をご覧になると、脚本家グレアムさんがチューリングの人生に何を見たか、それが痛い程伝わってきます。チューリングの理解者として登場するジョーンは女性というだけで彼と同じように生き辛さを強要された人物として描かれます。同じ苦しみを持つからこそ、彼女には心を許したということがあったのかもしれません・・・。
最後まで孤独で社会からは疎外されていたもの、それでも心の底では誰よりもピュアな想いを持ち続け生きていたチューリングの人生。今の時代にチューリングが生きていたとして、彼が生きやすい世の中になっているのだろうか、それを考えるとまた悲しくもあるのでした。

By.M
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