M(コジレ島の女住人): 2013年3月アーカイブ

『シュガー・ラッシュ』

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 桜が満開ですね。皆さんこんにちは、女住人Mです。
今回ご紹介する映画はシネマイクスピアリで今、一番人気のディズニー最新作『シュガー・ラッシュ』です。
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 主人公ラルフはゲームセンターのアクションゲーム<フィックス・イット・フェリックス>の悪役キャラクター。けれど人気者のフェリックスのようにヒーローの証・ゴールドメダルを貰い、皆から愛される“ヒーロー”になりたいと思っています。ある日、ラルフは自分のゲームを飛び出してヒーローになるべくメダルを探しに他のゲームに迷い込むのですが、行きついた先はお菓子の国で繰り広げられるレーサーゲーム<シュガー・ラッシュ>の世界。そこでラルフはプログラム不良のためにレースに出場出来ず、皆からいじめられている少女ヴァネロペと出会います。が、ラルフがゲームの掟を破って他のゲームの世界にやってきたことで、ゲームの世界全体が消滅する危機に!ヴァネロペはレーサーになる夢を叶えることが出来るのか?ゲームの世界の運命は?ラルフは真のヒーローになれるの?と言う物語。

 舞台はゲームの世界。ゲームセンターが閉店するとそこでは人間が知らない別の世界が繰り広げられている・・・って、まさに「トイ・ストーリー」的発想。これまでの成功例を踏襲しつつ、新しい物語の始まりです。ゲームの世界では悪役キャラでも決して根っからの悪いヤツなんかじゃないラルフ。自分に与えられている“悪役”という役割を全うすることに悩み、かつその役割のせいで嫌われている。一方、欠陥プログラムがあることでのけ者にされるヴァネロペ。自分では望んでいなかったのに、そうなってしまった運命に立ち向かう・・・似た境遇をもった者同士、だからこそ共鳴し合い、新たな一歩を踏み出そうとする主人公たち。もうこう言う設定は感情移入しちゃいますよね。映画を見る前は子供向け作品と思うかもしれませんが、そこはさすがのディズニー、もちろん否!!な訳です。

大人になれば自分の役割を知らず知らずに演じることもあります。会社、家族、友だちと言う関係性の中で求められる、与えられる役割。役割通りに生きることは楽なことではありますが、時に「本当はこうじゃないのに。こうしたいのに」と誰しも思う時があるはず。だから、観客もおのずとラルフやヴァネロペに自分を重ね、「子供の映画だろっ」と思っていても大人の方が前のめりになりがちなのが本作なのです。今ある役割の中でしか生きられないんだ、と思っていてもそれは考え方次第で変えることも出来る。ラルフはそれを身をもって経験するのです。
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 私はゲームをほとんどしませんが、そんな私でも見たことがあるキャラクターもたくさん出てきますし、ラルフのいる<フィックス・イット・フェリックス>は80年代のゲームなので、動きがカクカクしていてまた可愛いんですよね。現代のゲームの世界観との対比や、ゲームの世界ならではのルールが物語のうまい伏線にもなっていて、ニヤっとするシーンも満載です!本作はTVアニメシリーズ「ザ・シンプソンズ」も手掛けていたリッチ・ムーアさんが監督で、脚本は「ウォーリー」も手掛けたジム・リードンさんなので、その辺りからも既に見た方の評価が高いのも頷けるところですね。
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(日本が大好きなスタッフによって作られた“シュガー・ラッシュ”の世界はJK(女子高生)と原宿ガールがお手本なんだって!)

 あと忘れてならないのが本編の前に上映される短編『紙ひこうき』。
こちらは本年度アカデミー賞短編アニメーション部門を受賞。不思議な紙ひこうきによって引き合わされる男女の出会いを描いた、まさにディズニー印の胸キュン(死語??)ストーリーで必見ですよ!!
子供から大人まで間違いなく楽しめる『シュガー・ラッシュ』は大ヒット上映中です。是非、いろんな人を誘って見に来て下さいね。

By.M
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『愛、アムール』

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 花粉なのか風邪なのか・・・いつからこんなに私はヤワになったのか・・・女住人Mです。
今回ご紹介する映画は「これから年を重ねていき、もっとヤワになっていった時、私は一人で生きていけるかしら?」と
考えあぐねることとなる『愛、アムール』です。
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 本作は2012年カンヌ国際映画祭パルムドール<最高賞>、2013年アカデミー賞外国語映画賞を受賞した作品です。
パリの高級アパートで暮らす音楽家の老夫婦ジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)とアンヌ(エマニュエル・リヴァ)が主人公。満ち足りた日常を暮らしていた二人ですが妻・アンヌの発病によってそれは一変します。アンヌは手術をするも右半身が不自由になってしまいますが、「もう二度と病院に戻さないで」と強く夫・ジョルジュに懇願。その日からアンヌは自宅で車椅子生活を始めます。献身的にアンヌを支えるジョルジュですが、病状はどんどん悪くなっていき、次第と世間からも夫婦は孤立していくことになります。

 さて、皆さんは本作の監督・ミヒャエル・ハネケの作品をご覧になったことはあるでしょうか?ハネケ監督の作品はカンヌ国際映画祭といった特にヨーロッパでの映画祭では常連受賞する程、とても有名な監督さんです。が、その取り扱うテーマがいつも挑戦的と言うか、時に神経を逆なでされる程の表現で観客を苦しめます。日本でもハネケと言う存在をしらしめた「ファニーゲーム」は私の中のトラウマ映画の1つです。なので今回『愛、アムール』と言うタイトルでありながら、ハネケがどんな方法で“愛”を描くのか、ビクビクしながら見たのですが、間違いなくハネケ映画でありながら、こんなに優しさと美しさが共存したハネケ映画は初めてだ!と感じました。まさに“愛、愛の映画だ〜!!”と。
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(名優二人に演出をするハネケ監督(左)。劇中、印象的に登場する鳩にすら演出。抜かりはない!)

 これまでも「老い」や「死」の現実を描いた映画はあったと思いますが、『愛、アムール』はどれにも属さない映画です。仲睦まじく、満たされた生活をしていた二人だったのに、病のせいでアンヌの容態はどんどん悪くなります。アンヌは夫や看護師の助けがないと何も出来なくなります。その過程では苛立ったり、子供のようにわがままを言ったり、しゃべることもままならなくなったり・・・見ているこちらはどんどん苦しく、鬱々とした気持ちになっていきます。でもそこに中途半端な感傷やおセンチな情景なんて一切なしです。ドラマティックなBGMはおろか、あるのは生活音だけ。ただそこには率直なまでの日常描写があるだけです。誰にも訪れる「老い」と「死」、それに直面する老夫婦の日常に一切目を背けることなくこの物語を描くハネケ。でもそこに安易なセンチメンタルイズムがないからこそ、二人が築いた情愛そのものが浮かび上がっていくのです。
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(老夫婦の娘エヴァ(イザベル・ユペール)の存在とその描写がまた何とも言えない!)

ハネケは現代社会が抱える問題をただ描いたのでなく、それを通して見える人間の“愛情”を描こうとしたのだ、と思うのです。身体が不自由になったアンヌを抱き抱え、ベッドから立ち上がらせたり、トイレに行かせるシーンがふと愛溢れる抱擁のシーンに見えた時、そんな気がしたのです。

本作はハネケ監督の演出手腕により威厳ある作品になったことはもちろん、老夫婦を演じたジャン=ルイ・トランティニャンとエマニュエル・リヴァ(本年度アカデミー賞主演女優賞ノミネート)の至高の演技によって完成されたことは言うまでもありません。
是非、本作で“愛”について考えてみませんか?
『愛、アムール』はシネマイクスピアリで上映中です。

By.M
©2012 Les Films du Losange-X Filme Creative Pool-Wega Filme- France3 Cinema-Ard Degeto-Bayerisher Rundfunk-Westdeutscher Rundfunk
© Denis Manin

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