皆さん、こんにちは女住人Mです。2週連続英国男子主演映画でお届けします。今週ご紹介するのは本年度アカデミー賞主演女優賞ほか4部門ノミネート、主演男優賞を受賞した3/13(金)からシネマイクスピアリにて公開中の『博士と彼女のセオリー』です。
ALS(筋委縮性側索硬化症)を患いながらも理論物理学者の立場から宇宙の起源の解明に挑み、現代宇宙論に多大な影響を与えたスティーヴン・ホーキング博士。しかしそんな彼の偉業がある女性によって支えられていたことはあまり知られていません。本作は1963年ケンブリッジ大学で出会ったのちの天才物理学者ホーキング(エディ・レッドメイン)とその妻ジェーン(フェリシティ・ジョーンズ)の物語です。
前述した通り、本作の演技でホーキング博士を演じたエディ・レッドメインは本年度アカデミー賞主演男優賞を受賞しました。エディ・レッドメインが多くの人に知られるようになったのは2013年の大ヒット作「レ・ミゼラブル」で演じたマリウス役からだと思います。それまでも「美しすぎる母」、「マリリン 7日間の恋」といったアート系の映画にはよく出演していた彼ですが、「レミゼ」で歌い上げる彼を見た時、「この人、歌も歌えたのか・・・」と驚愕したのを覚えています。海外の役者さんは大抵が歌えるし、踊れるし、でもそれをひけらかす訳でなく、必要に応じてサラ~っと披露するところが本当に憎い。
そんなエディは英国一の名門校イートン校で学び、(その時の同級生がウィリアム王子)その後ケンブリッジ大学を卒業、お父さんは銀行の頭取という何とも超エリート!そんなエリートでありながらも役者をやっているのはイギリスにとって役者という職業にステイタスがあるからなんでしょうね。さすがシェイクスピアの国。と、話がズレてきましたが、徐々に肉体の自由を奪われていくホーキング博士を演じるエディの演技はそれを超越したものが感じられるほどに圧巻!オスカー主演男優賞受賞は誰も文句は言いますまい。バッチさんファンの私も納得です。
そんな圧倒的なエディの演技力が光る本作ではありますが、皆さんもよくご存知のホーキング博士のその超人的な天才ぷりよりもその人間性、特にホーキング夫妻の関係性に焦点が当てられているのがこの映画のポイント。そして本作で助演女優賞にノミネートされたフェリシティ・ジョーンズが演じる妻ジェーンの"覚悟"が印象的です。
スティーヴンの病を知りながらそれでも彼の人柄と才能に惚れこみ、結婚を決めた時。その後、二人の間に長男、長女と生まれる間にも彼の病状はますます進行していった時。そして体だけでなく、ついにはコミュニケーションの自由まで奪われ、文字ボードとまばたきでもって会話をしなくならなければなった時。そんなスティーヴンをサポートするナースが彼にとって特別な存在になったと感じた時。脆さはありながらも様々な場面で"覚悟"を決めるジェーンの潔さと逞しさ。それらを決断する程にどれだけ彼女がスティーヴンを尊敬し、愛していたか・・・ジェーンを演じるフェリシティーの「やってやるわ」的表情は時に神々しいほどです。
(主演女優ノミテートを機に今後の活躍がさらに期待出来るフェリシティですが、「今日、キミに会えたら」、
「あなたとのキスまでの距離」といった過去の出演作もお薦めですよ。)
そしてたった一人ではスティーヴンとの生活を受け止められなかったジェーンの前に現れる一人の男性・ジョナサン(チャーリー・コックス)。スティーヴンの介護を買って出たジョナサンに心揺れてしまうジェーンに対し、彼女のために取ったスティーヴンの"覚悟"も彼自身がジェーンを心から愛していたからこその決断のように思えて仕方ありません。
この映画を観る前は、重度の病を患ったホーキング博士と彼を献身的に支える妻、そんな二人の物語ぐらいに思っていましたが、互いの存在を認め合った男女の"覚悟"が垣間見られるラブ・ストーリーだったことに、そして時に不思議なバランスで成り立っていた二人の関係性に意表を突かれる思いでした。
ホーキング博士自体とてもユーモアにあふれる方なので、やっぱり男は才能ある一芸と少々の小粋なトークが出来る人はモテるな~、なんて思ったりもしたのでした。
By.M
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