『ジョーカー』
映画ファンの皆さんが今、最も期待しているのはきっとこの映画ではないでしょうか。
今回は10/4(金)公開『ジョーカー』をご紹介いたします。
“ジョーカー”と言えば“バットマン”の宿敵。これまでも何度か映画の中に登場しましたが何と言ってもヒース・レジャーが演じたジョーカーの印象が強く残っている人も多いと思います。ヒース・レジャーはこの役にのめり込むがあまり、精神的に追い込まれ処方薬の過剰摂取で2008年に亡くなっています。
理由もなく無差別に人を傷つけるジョーカーの行動心理は狂気の沙汰としか言いようがありません。演じる者まで追いこんでしまうキャラクター、それが“ジョーカー”。
今回はその“ジョーカー”をアカデミー賞に3度ノミネート、本年度主演男優賞に最も近い男と言われているホアキン・フェニックスが演じます。
ホアキン演じるアーサーはコメディアンを夢見る男。憧れはTVの人気司会者マレー・フランクリン(ロバート・デ・ニーロ)。でも貧しい生活、介護が必要な母、自身も病を抱え、日々を生きることすらギリギリな状況。そんな中でトラブルを起こしてしまい職すら失ってしまいます。
もうとにかく観ていて辛い・・・イギリスの巨匠ケン・ローチ(『わたしは、ダニエル・ブレイク』ほか)は社会の底辺で生きる市井の人々の生き様を描き続けていますが、まさに彼の映画の主人公を観ているかのよう。
ただ当たり前の生活が送りたい、あるのはささやかな夢があるだけなのに、社会的弱者という立場のアーサーに社会はこれでもか、と残酷です。彼にせめてその苦しみを打ち明けられる友達がいたら、せめて仕事があれば、そんな彼を救う社会のシステムがあれば・・・。
アメコミ映画の主人公“ジョーカー”の映画を観ていたつもりだったのに、気付けばアーサーという一人の男の人生を追っていく物語になっていて、観客はどんどん彼の状況に心を痛め、感情移入すらしてしまうのです。
「どんな時も笑顔でいなさい」という言葉を大好きな母親から言われて育ち、故に人を笑わせるコメディアンになりたいと願っているアーサーはとにかく笑顔でいることを心がけています。どんなに蔑まれても、どんなに不幸でも、どんなに苦しくても・・・笑って、笑って、ギリギリなのに我慢し耐えるアーサー。でも気付くのです、「こんな絶望的な状況にいる自分が一番コメディだ。」と。それに気付いた時に彼の中でギリギリ保たれていた何かが完全に崩壊してしまうのです。そして彼の狂気は一気に解放されていきます。
これまでの“アメコミ映画”とは一線を画す作品となった本作は先日開催されたヴェネツィア国際映画祭のグランプリ、金獅子賞を受賞し、本年度のアカデミー賞に最も近い映画と言われています。この映画は80年代初頭のゴッサムシティを舞台に描かれていますが、その状況は現代に置き換えて考えても全くおかしくない、というのは皆さんもお気付きだと思います。
世界中で貧困、格差などが広がり、それを元に社会に歪が生まれている中で“ジョーカー”という存在が生まれても全く不思議ではありません。“ジョーカー”=絶対悪をこんな形で描いてしまったこの映画、本当にヤバイとしか言いようがありません。
そしてジョーカーになる男アーサーを演じたホアキンの演技は言わずもがなですが、彼が憧れるコメディアン・マレーをロバート・デ・ニーロが演じた所がこの映画の決定的に優れいている点だと私は感じています。若かりしき頃、『タクシードライバー』、『キンギ・オブ・コメディ』を演じていたデ・ニーロが年齢を重ねこの映画に出演し、マレーを演じていること自体、かっこよすぎる・・・。この役、デ・ニーロ以外が演じたら全く意味がないんです。つまりデ・ニーロ以外演じられない。私の中でデ・ニーロ株は上がりっぱなしです。
とにかく今年を代表する1本と言って過言はありません、映画館でご覧ください!
By.M
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