ウラシネマイクスピアリブログ

映画を愛するシネマイクスピアリの宣伝担当者が
今後の上映作品を
ウラからナナメから眺めてそっと語るオフィシャルブログ

『フォードvsフェラーリ』

 今回も本年度アカデミー賞ノミネート作品をご紹介します。作品賞ほか4部門ノミネート、二人の男の友情が熱い1/10(土)公開の『フォードvsフェラーリ』です。

 モータースポーツ界のトップに君臨するイタリアのフェラーリにアメリカのフォードが自動車レースの最高峰「ル・マン24時間耐久レース」で挑む!でも文字通りのフォードvsフェラーリを描くというよりは、フォードに雇われたエンジニアとドライバーがタッグを組んだもの最大の敵は社内にいた!という物語。

 時代は1966年。元レーサーで今はカー・デザイナーのキャロル・シェルビー(マット・デイモン)の元にフォード社から思いがけないオファーが届きます。それは絶対王者フェラーリ社に勝てる車を作り、ル・マン24時間耐久レースで優勝すること。しかも与えられた期限は90日。シェルビーはドライバーとして抜群のセンスを持ち、車の性能にも熟知しているケン・マイルズ(クリスチャン・ベール)をチームに引き入れます。が、マイルズは破天荒でフォードの首脳陣からは反感を買う始末。二人はぶつかり合いながらも同じゴールに立ち向かっていきます。

 先ずは車、レース、となるとそういうのに興味がないと面白くないかな?と思いがちですが本作は男たちの熱い闘いの物語。そこには会社vsライバル会社、組織vs個人、幹部vs現場、という社会人あるあるが満載で、まさにリーマンの胸を熱くする題材が豊富に組み込まれているのでご安心を。もちろん、車好きが楽しめる要素がふんだんにあることは言うまでもありません。

フォードは大衆車を世に送り出すことで国内の業績を上げていましたが、若いユーザーから支持されず、ならばレースに出場だ!となるのですが、その策としてのフェラーリ買収に失敗。それをきっかけにフォードはますますフェラーリへの対抗意識を燃やし、レースの勝利に執着します。が、保守的な企業理念で成功していたフォードが急に突飛なことにチャレンジしてもうまくいく訳はありません。そのため、ノウハウのあるシェルビーとマイルズを雇う訳ですがまぁ、彼らとも意見が合うハズもありません。

 絶対的ボス、フォード会長を筆頭に副社長のビーブ、マーケティング責任者のアイアコッカはレースのことを知らないくせに、シェルビーとマイルズに無理難題を押し付けます。「現場の気持ちを考えもせず、言うだけは楽だよね~」な展開に愚痴りたくことは組織に属している人ならば誰しも経験したことはあるハズ。幹部サイド内でもアイアコッカは中間管理職的立場なので上と現場との板挟みで、演じるジョン・バーンサルがちょっとした表情や動きでその揺れる心情をさりげなく表現していることもあり、ここにグっと来る人も多いでしょう。

シェルビーとマイルズ自体も、最初は意見の食い違いはあったもの、共通の敵の存在と同じゴールを見ることでどんどん共闘していく様も人間模様あるある。また、かつてドライバーだったシェルビーはマイルズの苦悩が痛いほど理解出来るからこそ心揺れたり、その上で自身では果たせなかった想いをマイルズに託すその心の内が描かれ、そういうのをひっくるめて心の中で男泣きしてしまうのでした。そしてマイルズ自身もシェルビーの気持ちがわかるが故に選択する最後の決断がまた泣かせる・・・

 クライマックスのル・マンのレースシーンはCG処理を極力避け、当時の車もレプリカで製造。スクリーンで観るからこそ体験出来るその臨場感と男たちの熱いバトルをお楽しみください!

By.M