ウラシネマイクスピアリブログ

映画を愛するシネマイクスピアリの宣伝担当者が
今後の上映作品を
ウラからナナメから眺めてそっと語るオフィシャルブログ

『ヴォイス・オブ・ラブ』

 あの曲を聴けば映画のワンシーンがすぐ様思い浮かぶ・・・そんな名曲はたくさんありますがセリーヌ・ディオンが歌う『タイタニック』のテーマ曲「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」はまさにその代表と言えましょう。今回ご紹介するのは世界の歌姫セリーヌ・ディオンの人生から生まれた愛の物語12/31(金)公開『ヴォイス・オブ・ラブ』をご紹介いたします。

 カナダのケベック州、音楽好きなデュー一家、14人目の末っ子として生まれたアリーヌ。彼女は小さい頃から子供離れした歌唱力を持っていたので家族は地元の名プロデューサー、ギィ=クロードにデモテープを送ります。彼の尽力で天才少女として12歳でデビューするアリーヌ。そこから世紀の歌姫へと成長する旅が始まります。それはアリーヌとギィ=クロードにとって、真実の愛と出会う旅でもあったのです・・・

 本作はセリーヌ・ディオンの半生を描いているもの、名前がアリーヌなので「おや?」と思われるかもですがセリーヌの人生を基にしたフィクション、というのがこの映画のスタンスです。現在も一線で活躍するセリーヌへの敬意を表して名前はアリーヌ・デューに変えたとか。

アリーヌを演じるのは本作で監督・脚本も手掛けたヴァレリー・ルメルシエ。フランスでは映画監督、スタンダップ・コメディのような一人芝居を演じるアーティストとして国民的なスター。2016年パリで観たセリーヌ・ディオンのコンサートに感銘を受けたことがこの映画を作ろうと思った発端でヴァレリーはセリーヌの生き様、そのステージングに心打たれ、彼女へのリスペクトと共感でもって本作に挑みました。その想いはこの映画の随所に散りばめられていて、とにかく彼女のセリーヌ愛が全編に渡って強すぎる&熱すぎるほど感じられます。だって子供時代ですらヴァレリー自身が演じきっているんです。そこもご愛嬌(笑)

 ここ数年、伝説的スターを題材にした映画はいくつか作られていますが、時代背景的な影響や華やかな世界の暗部と申しましょうか、ドラッグやアルコールで身を滅ぼして・・・的な展開は付きもの、という感じですが、セリーヌにはそういったおきまり!?展開はないにせよ、ドラマティック過ぎるほどの人生が綴られていきます。その核にあるのは12歳で出会い、その後人生を歩み続けることとなるプロデューサー、ルネ・アンジェリル(映画ではギイ=クロードの名で語られます)との愛の物語です。

 でもアリーヌとギイの年の差は26歳。いくら娘の才能を開花させた手腕、幼い娘を任せた時点で両親は信頼していたとは思いますが、それが恋愛対象ともなると複雑な感情を抱かざるを得ない、というのは致し方なしだとは思います。彼自身がどう、というよりもっとふさわしい相手がいるんじゃないか、と両親は猛反対でゴシップネタとして消費されることも・・・。それでもアリーヌのギイに対する尊敬、愛情は周りが詮索するものとは全く異なるものだったのです。それはギイにとっても同じでした。

 幸せになるには何か犠牲は付きもの・・・と思いがちですが、この映画を通してセリーヌ・ディオンの生き方を知ると“幸せは一つしか選べない”というのはもはや呪いだな、とさえ思わされます。だってセリーヌ、全取りだもの。才能がある彼女だから出来た神業ではあるかもですが、そんな痛快さも秘めた本作は力強さとポジティブパワーに溢れています。

 ヴァレリー・ルメルシエの個人的な強い想いから出来上がった本作ですが、製作費に30億円が費やされた、どメジャー級なこの映画。セリーヌの名曲(30曲!)もたっぷり使われていてライブ映画としての魅力もたっぷりなところも年末年始にふさわしい1本ですYO。

By.M