『ぼくとパパ、約束の週末』
サッカーの本場ドイツでは実に56ものサッカークラブが存在します。そんなに数があるとお気に入りを見つけるのも一苦労。今回は自分が好きなサッカーチームを見付るためにスタジオ巡りを始めた少年とお父さんの実話を映画化、11/15(金)公開『ぼくとパパ、約束の週末』をご紹介いたします。
幼少期に自閉症と診断された10歳のジェイソン(セシリオ・アンドレセン)はこだわりが強く、独自のルールがあるので日常生活においてトラブルが多し。でも優れた学習能力と特別な感受性を持つ彼を家族は彼のよきところを伸ばしてあげようと温かく見守っています。そんな時にクラスメイトの間で話題になった「推しのサッカーチームはどこ?」というお題に「チーム全部の試合を実際に観て決めたい!」と決意したジェイソン。その希望を叶えるために週末ごとに父息子でドイツ中のスタジアムを巡る旅が始まります。
1番を選ぶにあたり彼が考えたルールは必ず最後まで試合を観戦すること、選手の履くシューズは地味であること、チームのマスコットが残念じゃないことなどなど、とてもユニークな視点。普段から環境に配慮するエコ派ジェイソンはチーム選びにもそういった姿勢を求め、自分たちの移動も基本電車にこだわります。それらのルールはどれか1つでも欠けてはいけません。
新しいチャレンジにワクワクな二人。でも自閉症を抱えるジェイソンは日常生活の中で自分をうまくコントロール出来ずパニックに陥ることも。そんな時に彼をなだめ、納得させるにはたとえ家族であっても心が折れることも暫し。しかもお父さん(フロリアン・ダービト・フィッツ)、これまで子育ての大半を母親(アイリン・テゼル)まかせだったからこの場に及んで右往左往してしまいます。おまけに悪いタイミングが重なってしまうとお父さんまで大パニック。しっかりして~
ジェイソンが自分を見失ってしまう時、彼の苦しみが伝わってくるので胸が痛くなるのですが、それでも新しい経験を着実に自分の物にして彼のリズムで成長していく様は清々しくもあり、同時にこれまできちんと自分の息子に向かい合っていなかったお父さんも過去の自分を顧みてジェイソンや家族と向き合っていく様に大人も成長大事!と思わせてくれます。
親子だろうと、夫婦だろうと、ある関係性を良好に保つには絶えぬ努力が必要です。ひいてはそれが相手を思いやることの基本なんだわ、そしてそれには他者を知ること、知ろうとすることがとっても大切なんだわと気付かされたりもします。
色々な思いを抱えながらも親子の週末スタジアム行脚は続いていきます。映画を観ながらにしてドイツ中のスタジアムの光景や雰囲気も楽しめるのでサッカーファンなら新たな発見もあるハズ!サッカー好きな友人がこの映画を観るために久しぶりに映画館に来た、と言ってたぐらいなのでそういう方にもオススメです!
By.M
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