2015年6月アーカイブ

『海街diary』

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梅雨は苦手ですが、紫陽花の季節なのはちょっと嬉しいですね。こんにちは、女住人Mです。今回ご紹介する作品の舞台は紫陽花が似合う街としても有名です。6/13(土)から公開中の『海街diary』です。
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 いろんなタイプやジャンルの映画がある中で「映画の中で出会ったあの子は、あの人は、あの家族は元気でやっているかな」と思わせてくれる映画が私は大好きです。例えば「6才のボクが、大人になるまで」。6才のメイソン君が大学生になって独り立ちするまでを丁寧に12年間に渡って撮り続けられた作品で、観ている間も親戚のおばちゃんフィーリングでメイソン君を見守り、映画が観終わっても「あ~メイソンはちゃんと大学を楽しんでいるかな」なんてことをふとした瞬間に思い出し、実際にはありもしない彼の生活に想いを馳せそうになります。フィクションの世界の登場人物にも関わらず、映画の中という限られた時間と空間で出会ったにも関わらず、親密な世界を共有した気分にさせてくれる映画は観終わった後も不思議な感覚で私の記憶に留まります。そして『海街Diary』もまさにそんな映画です。

 舞台は鎌倉。広くて古い家で暮らす三姉妹・幸(綾瀬はるか)、佳乃(長澤まさみ)、千佳(夏帆)の元に15年前に家族を捨てた父の訃報が届きます。葬儀に参列した三姉妹はそこで腹違いの妹すず(広瀬すず)と出会い、一人ぼっちになった彼女に長女の幸は鎌倉で自分たちと一緒に住もうと提案します。こうして四姉妹の生活がスタートします。
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 父親が家族を捨て、家を出て行き、その後母親も再婚して家を去る。両親の代わりに今は亡き祖母に育てられた三姉妹。きっと今のような生活になるまでは何かしらあったんだろうな~、と想像させられながらも今は当たり前の日常がそこにあります。腹違いの妹すずの登場に小さな波紋が起きそうにはなりますが、三姉妹は彼女を決して拒むことはせず、受け入れようとします。それは彼女たちも突然、親がいなくなった経験をしているからでしょうか・・・。

その後、大きな事件が起きる訳ではありません。でも大きな事件が起きなくても生きることは大変だし、取るに足りないことが楽しかったり、ささやかなことが人を幸せにするものです。毎年作っている梅酒が美味しく作れたり、お父さんの想い出のしらすトーストと久しぶりに出会えたり、お風呂場に変な虫が出てきてそれを姉妹で騒ぎながら退治したり・・。日常の風景が心にスーっと沁み込んでいくそんな瞬間がこの映画にはたくさん散りばめられていて、それが積み重なり、とても穏やかな気持ちに包まれます。
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(物語の中で"生"の部分を表現する佳乃を演じるは長澤まさみさん。まさみ力も随所に輝やいてますYo!)

一方で日常は突如として牙を剥く時もあるもの。祖母の七回忌に突然現れた母(大竹しのぶ)と喧嘩になる幸。「もとはと言えばお父さんが女を作って出て行ったからじゃない」と母が口走ったことで「奥さんをいる人を好きになるなんて私のお母さんよくないよね」と幸に言うすず。そんな幸も実は不倫をしていて、すずの一言にドキっとさせられる。家族だからこそ言えない秘めた思いを抱きつつも、姉妹たちは日々の生活の中で折り合いを見付け、それぞれ居場所を見つけていきます。

いろいろあっても前を向く、変えられない過去と向き合って、悲しい記憶ももう一度とらえ直していく、そして、自分がここにいていいことを肯定していく強さを身に付けていく。描かれるのは1年という短い月日ながらも姉妹たちのそんな心の変化が丁寧に描かれているのでどんどん彼女たちの存在が観客の心の中でも親密なものに変化していく。映画のラストシーン以降の彼女たちの今が心の中でどんどん大きくなっていく。それは映画が終わってからも続く幸せなひと時なのです。
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 四姉妹を演じた女優陣も個性に溢れ、観た人それぞれに誰かの人生が自分の近くに感じたり、「姉妹ってこう、こう!」と親近感を抱く方も多いと思います。個人的には夏帆ちゃんが演じた自由奔放ながらも実は一番客観的に家族や恋人を見守る三女・千佳ちゃんに心を奪われたのですが、やはりここは芸名と同じすずを演じた広瀬すずちゃんの存在でしょう!頑張って三姉妹に馴染もうとする様、でも実は家の外の方が心から笑えたり、ご飯がモリモリ食べられたりする様など、胸に秘めたすずの迷いや遠慮、不安を広瀬すずちゃんが見事に演じています。この後7/11(土)公開の「バケモノの子」でも声優を務めたすずちゃんはここでまた素晴らしい声優としてのスキルも発揮していますので、彼女は今後も要注目ですね。

 監督は「誰も知らない」や「歩いても、歩いても」「そして父になる」の是枝裕和監督という訳でもう間違いないでしょう。
雨降りの鬱陶しい季節ですが本作をご覧になればきっとさわやかな気持ちで映画館を出られると思いますよ。

By.M
(C)2015 吉田秋生・小学館/フジテレビジョン 小学館 東宝 ギャガ

 皆さん、こんにちは女住人Mです。今週は私の中の男が泣いた、いや今回は荒ぶったという方が正しいかもしれません、6/20(土)公開の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』をご紹介いたします。
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(本作の主演マックス役はトム・ハーディ。時たま見せる捨てられた仔犬のような眼差しがたまらない!)

 「マッドマックス」シリーズは70~80年代に公開し大ヒット、未だに熱狂的なファンを持つ伝説的作品です。1作目は「映画の中でスタントマンが何人か死んでいる。」と噂にもなったぐらい凄まじいカーアクションが見所で、当時全く売れていなかったメル・ギブソンを一躍スターに押し上げたことでも話題になりました。1作目のヒットを受け、基本設定は変わってなくもないけれども、全く違う世界観にし大ヒットしたのが2作目の「マッドマックス2」で、「北斗の拳」は本作にインスパイアされ作られていることも有名です。

と、(3作目に関しては触れず・・・)おそらく40代以上の特に男性は「マッドマックス」と聞くだけで震えが来る方も多いと思いますが、私、実はこれまで「マッドマックス」シリーズを1本も観たことがなかったのです。でも30年ぶりの新作となる本作の製作が決まり、70~80年代の映画なのにこんなに熱狂的に愛されているシリーズならその訳があるハズだ、と思って一念発起!?過去3作をイッキ見したのです。そしたらどうでしょう。もうむちゃくちゃカッコイイんですよ。とんでもなカースタントに「マジかぁぁぁ~」と絶叫し、終始釘付け!メル・ギブソンも私の知っているメルギブ要素がほぼないイケメンさんっぷり(失敬!)でまさかのメルギブ再評価。遅れた「マッドマックス」ブームが私にやってきてしまいました。

 なので、満を持して作られた新作に期待感がアガ↑らない訳がない。監督はこれまでのシリーズを手掛けているジョージ・ミラー(70歳!)だし、何やら一足先に公開された海外での評価がとても高い!日本でマスコミ向けに試写が始まると、さらに絶賛の声が上がり、業界内でも『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は凄いらしい、と大評判。そして私も本作の試写に挑んだわけですが・・・・もう、最高!!!の一言しかありません!!本編尺120分に詰め込まれた緊張と興奮は今年観たどの映画にも負けてはいませんでした。
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 今回も資源が尽き法も秩序も崩壊した近未来が舞台。資源を独占し民衆を支配する凶悪な支配者イモータン・ジョー(ヒュー・キース・バーン)一派に囚われたマックス(トム・ハーディ)はジョーの右腕でありながら反逆を企てた女戦士フュリオサ(シャーリーズ・セロン)、全身白塗りの男ニュークス(ニコラス・ホルト)と共にジョーに囚われていた5人の妻たちを連れ逃走する、という物語。至ってシンプルなこのストーリーで8.5割方がカーチェイス、ノンストップのサバイバル・アクション!息を呑むとはこういう映像!と言わんばかりの展開。(可能な限りノーCG!)
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(1作目の「マッドマックス」で適役のリーダー、トーカッターを演じた役者さんが本作で支配者ジョーを演じています。
このファミリー感がまた良いね!)

しかも追手の軍団の中にはドラム隊や火を噴くギターを掻きならす悪者がいて、こいつらが演奏するサウンドとカーアクションの効果音とが合わさって、もう楽しい~!監督自身「この映画は熱狂的なロックコンサートとオペラの中間あたりのものなんだ」と言っているあたり「なんじゃ、その世界観!」と大きく突っ込みも入れたくなる程ですがこれが何ともCool!長いポールに括りつけられビヨ~ン、ビヨ~ンとなりながら繰り広げられるアクロバティックなアクションもあったりでジョージ・ミラー監督の想像力に圧倒、圧巻なのです!(「ベイブ」、「ハッピーフィート」の監督とは思えない!)
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(長いポールを使ったアクションは元シルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマーの協力を得て実現したという。そう、これもほぼノーCG!)

加えて単にアクションだけの映画と思いきや、マックス、フュリオサ、ニュークスという主要人物のキャラクター設定がしっかり描かれていて、「なぜ、今"マッドマックス"なのか」の答えがちゃんと用意されている。それがまた凄い!これまでは孤高な男マックスが単体で際立つシリーズだった所に初めてシャーリーズ・セロン扮するフュリオサ(美女な上に坊主で超かっちょいい!)という女性戦士を投入したことで物語にさらに深みが増しているんです。70年代と違って今や女性も先頭切って戦う時代ですからね。ある意味、主役はフュリオサと言っても過言じゃない作りになっている所がシビレます。
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(本作でトム・ハーディとシャーリーズ・セロンのスタントを演じていたお二人がこの撮影をきっかけに結婚しちゃったというHAPPYな出来事もあり!)

まぁこういう映画は四の五の言わずにとにかく観て、感じて、体験して!と言うしかありません。(過去3作を観てなくても全然問題ありません!)文句なしにかっちょいい『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は6/20(土)からシネマイクスピアリにて公開です。
こういう映画を映画館で観ないでどうするYO!

By.M
(C)2015VILLAGE ROADSHOW FILMS(BVI) LIMITED

『トゥモローランド』

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 皆さんこんにちは女住人Mです。今週はシネマイクスピアリでご覧になるにふさわしい1本、6/6(土)より公開『トゥモローランド』をご紹介いたします。
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 物語は1964年、自らの発明品を持ってニューヨーク万博に訪れた11歳のフランク・ウォーカーがアテナ(ラフィー・キャシディ)と言う謎の美少女に出会うことから始まります。Tの字が描かれたピンバッチを渡されたフランクは彼女の後を追い、イッツ・ア・スモール・ワールドに乗り込むと未来都市"トゥモローランド"に辿りつきます。そして現代。女子高生のケイシー(ブリット・ロバートソン)は荷物に紛れていたTの字が描かれたピンバッチを手にします。それに触れると目の前に広がるのは見たこともない未来都市。この謎を探ろうとしたケイシーの前にアテナが現れます。
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 本作は「Mr,インクレディブル」「レミーのおいしいレストラン」「ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル」を手掛けたブラッド・バード監督の最新作。あの「スター・ウォーズ」新シリーズの監督を断ってこの作品を完成させることを選んだブラッド・バード監督の心意気に、個人的に本作の映画の完成をとても楽しみにしていました。本作はこれまでにもあったアトラクションの世界観をそのまんま映画化したようなものでなく、ウォルト・ディズニーが描いた夢、ウォルトの手掛けたかった未来をモチーフに、ウォルトの思想や理念をダイレクトに伝えようとした極めてメッセージ色の強い映画でした!いや~、たまげました。

 実際に1964年の万博でウォルトが「世界平和」をテーマに出品したアトラクションが"イッツ・ア・スモール・ワールド"。万博終了後、アナハイムのディズニーランドに移築され以後、各国のテーマパークに作られ、我らが東京ディズニーランドにもあるんですね。ウォルトは晩年、ディズニー・ワールド・プロジェクトの中で"EPCOT"と呼ばれる実験的未来都市構想を描いていて科学でもって輝かしい未来を作り、世界を一つにしようとしていました。その志半ばで彼はこの世を去るのですが・・・。ウォルトは科学でもって住みよい環境を作ることで世界は1つになり、近代的な未来都市も作れる、そう期待していたのですが、実際現実はどうなっているかと言われると科学、技術の発展が行き過ぎて、むしろ生態系が崩れる、環境は破壊される、人口が増え過ぎる、食料難になっている、資源が枯渇する、戦争が起きる、とどんどん大変なことになっています。

この映画の中でその現実に向かいあっているのが映画の冒頭で未来に夢を見ている少年として登場し、今は大人になったフランク(ジョージ・クルーニー)。彼は行き過ぎた進歩によりこの世界は滅びると信じ、未来に失望しています。
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でもそんな彼の目の前に現れたのが、自分が子供の頃に手にしていたピンバッチを持ったケイシー。冒険心に溢れ、悲観的なこの世界も自分が大好きな科学でなら変えられるんじゃないか?と強く思っているポジティブな女の子。そんな彼女との出会いで彼の心に大きな変化が芽生えるのです。そしてそれが破滅に向かおうとしていた地球を救うことになります。

 その昔は輝かしいものとして想像されていたユートピア的"未来"ですが、今やTVのニュースや映画で描かれ、我らが想像するのはディストピア的未来。悲観的なネガティブな思考の方が情報としても伝わりやすい世の中で、どんどん世界は病んでいっています。そんな中で我らに必要なのは「世の中は良くなるはず」と強く思う気持ち、夢を強く描く、思い続けるマインドなんだ、というのがこの映画の根底にあるメッセージなのです。"才能とは夢を持ち続けること"と言った人がいます。どんなチャレンジも先ずはなりたいもの、やりたいことを夢としてずっと持ち続ける、それが重要なんですよね。夢は持ち続けていないと現実にはなりませんものね。
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(ジャパンプレミアの様子がこちら。左からブラッド・バード監督、ラフィー・キャシディ(アテナ役)、ブリジット・ロバートソン(ケイシー役)、志田未来(ケイシー役、日本語吹替)、ジョージ・クルーニー(フランク役)。
ラフィーちゃんが演じたアテナの可愛いさも本作の魅力の1つ。)

 とにかく物事の良い方を向き、そうなるんだ、と思い続けないことには明るい未来はやってこない。ウォルトもそんな前向きなビジョン(=夢)を持ち続けることで人々がわくわくするような明るい世界を具体化させていた、というのがとてもわかる映画になっています。ブラッド・バード監督が描く未来もちょっとレトロ感があってとても素敵なので是非スクリーンでお楽しみ下さい!

(C)2015 Disney Enterprises,Inc
By.M

『トイレのピエタ』

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 皆さん、こんにちは。女住人Mです。今週ご紹介する作品は公開初日に舞台挨拶も決定しました6/6公開の『トイレのピエタ』です。本作は漫画家の手塚治虫氏が病床で綴っていた日記の最後のページに残されていた文章にインスパイアされ作られた作品です。天才が生み出した、たった数行の短い文章から着想された映画とは・・・
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 突然ですが、人は何のために生きているんですかね。と言ってもこの問題に答えがあるのかもわかりませんし、運よくその答えを見い出せたとしてもそれが正解かどうかは誰もわかりません。普通に生きていると「何のために生きるのか?」なんて考えてもしょうがないから気にせずに生きていくのでしょうが・・・。でもそんな中で近しい人や自分自身が"死"と直面した時は誰しも立ち止まってその命題について考えるきっかけになります。

この映画の主人公・宏(野田洋次郎)はまさにそんな状況に陥ります。美大にいた頃はそれなりに才能も認められ、絵で食っていこうとも思っていましたが、気付けば夢は破れ、毎日窓を拭くバイト生活を送る日々。こんなハズじゃなかったという思いが爆発しないよう、何もなかったように何も考えないように生きています。それでも自分は何か出来る力はあるんだ、という変な自意識だけは人一倍強く、周囲を社会を冷めてみることで自分を保っている、ある意味愚かな若者です。そんな宏がある日突然、自分に残された余命がわずかであると知ります。自分に言い訳をしながら生きていた宏はもちろん、この事実をすんなり受け入れられる度量はありません。病院で相部屋になる隣の患者・横田(リリー・フランキー)がちょっかいをかけてくることにイライラしたり、慕ってくれる少年・拓人にも冷たい態度を取る始末。
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(宏を演じるのはロックバンドRADWIMPS(ヴォーカル&ギター)の野田洋次郎さん。
今回初演技とは思えない!映画の中の彼の佇まいは園田宏、それ以外何もないという存在で正直ビックリしました。)

 そんな時になぜか彼の側にいたのが女子高校生の真衣(杉咲花)。診断結果を聞くために病院に行った時に出会った少女は宏が癌であることを知ると「一緒に死のう」と言いだしたり、不機嫌になると「早く死んでしまえ」と言い放ちます。そんな感情をむき出しな彼女に宏はどんどん心囚われていきます。真衣自身は学校では友達と言える人もおらず、家に帰れば言葉乱暴な母親に痴呆を抱える祖母の面倒を一方的に押し付けられています。何も出来ない自分に苛立ち、そんな自分を誰も救ってくれない社会に苛立ち、時に何に苛立っているのかもよくわかっていない真衣。でも怒りの塊のような真衣が宏にとっては"生きている"、そんな生命の輝きに見えたのかもしれません。
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(真衣を演じるのは回鍋肉を頬張るCMでお馴染の杉咲花ちゃん。やり場のない気持ちにうまく向き合えない思春期の少女を演じた彼女がまた抜群に良い!)

真衣と出会ったことで、何のためにも生きていなかった宏は少しずつ損なわれていた感情を取り戻していきます。でも、彼の余命が限られている事実は変わらず"死"は確実に宏を飲みこんでいきます。そしてそんな宏が自分の"生"を取り戻すかのようにとった行動が"トイレの(天井に描く)ピエタ"なのです・・・
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 人はこの世に生を受けたその瞬間から"死"に向かっています。いろいろなものを得ながら一方で何かを失い、最終的には一番最初に得た"生"をも失くす、まるで死ぬために生きているかのようです。そう考えると生きることはとても虚しい。でもそんな状況でも宏や真衣のように、たとえ他人には無様に見えてもただ生きているだけで輝きを放つ存在になりうるのです。いつもは"生きている"そんな実感などなく毎日を過ごしているだけだけど、そんな一瞬、一瞬の中に何かが生まれる、変わる瞬間がある、そう思うだけでも死に向かっているだけのこの日常もそんなに悲観するものでもないかな・・・と思ったり・・・そんなことを感じるシーンがこの映画の中にいくつもありました。そして二人の出会いは恋愛と呼ぶにはちょっとぎこちなさを伴うものですが、二人だけが共有した感情はちょっと羨ましくもあるのでした。

By.M
ⓒ2015「トイレのピエタ」製作委員会

★『トイレのピエタ』初日舞台挨拶決定!!★ 
【登壇者】 (予定)
野田洋次郎さん/松永大司 監督
【開催日時】 6/6(土) 10:30~の上映回 (本編上映前開催)
【料金】 通常どおりとなります。
※特別興行のため、前売り券以外の各種割引制度、シネマイクスピアリ映画鑑賞券、無料券は全てご利用いただけません。
【チケット発売】
劇場窓口/オンラインチケット「Myシート・リザーブ」にて発売中!
詳しくはこちら

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