シネマイクスピアリ: 2013年6月アーカイブ

『しわ』

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 皆さんこんにちは、自分で言うのも何ですが実年齢より若く見られる女住人Mです。とは言え、年を重ねてくると、物事の概要は詳しく言えるのに、実態の名前が出てこずに、「あわわ、あわわ」することしばし・・・だから本作を見た時にはいろいろなことを考えてしまいました。今回ご紹介するのは「老い」について描かれた作品『しわ』です。
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(本作は高畑勲監督と宮崎駿監督がすすめる“海外の優れたアニメーションを紹介する”三鷹の森ジブリ美術館ライブラリーの作品です。)

 本作はスペインの漫画「皺(しわ)」を元にスペインの若いアニメーター、イグナシオ・フェレーラスが監督した長編アニメーションです。主人公は認知症のために養護老人施設に入居することになった元銀行マンのエミリオ。自分が認知症であることを認めたくないエミリオは施設に入れられたことに憤りを感じながらも、いろいろな事情、そして症状を抱える友を得ながらここで暮らしていきます。
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 本作は、誰にもやってくる「老い」や誰しも避けたいと思う「認知症」と言うシリアスなテーマを真正面から描く真摯な作品です。
目を背けたいと思いがちなテーマですが、本作では冒頭から観ている人の心を惹きつけます。
銀行の支店長エミリオは若夫婦に融資の相談を受けています。「我が社ではお受けかねます」と断りを入れるエミリオの回答に憤慨する夫婦。しかしそれが一瞬でエミリオが元銀行マンであり、現実にはベッドの上でその若夫婦に説教を受ける老人であることを表現するシーンへと繋がります。一気にこの映画の世界観に没入させられる、まるで1.2.3でマジックをかけられたようなシーン。

エミリオの意識は交錯していて、自分が年をとったことを知りつつも、まさか認知症であることには気付いていません。だから、息子夫婦(特に息子)が自分にあたり散らし、苛立つことが我慢できません。認知症になった者とその家族の典型的な風景です。アニメーションであるのに、際立つリアルな感覚。私は一瞬でエミリオの心と同化してしまいました。

 エミリオは自分の状況をうまく理解しておらず、むしろ理解したくないとさえ思っています。施設に入ることで様々な状況におかれる仲間たちを見て、自分もそのうちの一人だと思いながらも、それに目を背けようとします。「老い」を受け止められないがためにエミリオはさらに苦悩します。施設に長く暮らしていて、シニカルなミゲルはそんなエミリオに対し「ここで生きると言うことは(老いると言うことは)自分を騙し続けるか、現実と向き合うか、どっちかしかないんだ」と時にシビアにそう伝えます。でも「キレイごとばかり言ってられないんだ」、そう語りながらも症状が進行していくエミリオの姿を見て、ミゲルは彼に寄り添うようになります。ミゲルは皮肉屋でたまにこざかしい行動を取る男ですが、そんな彼が一番温かく、大きな心を持って皆と接し、本作で一番魅力的な人物としても描かれます。
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「老い」も「認知症」も現実としてはとても重たい問題であることは間違いありません。
本作を観ている間も不安、憤り、悲しみといった感覚にふっと襲われることもあります。でも現実から目を背けることでは何も得ることはありませんし、誰しもが必ず通る道を行く人がどんな状況であろうと、その人がとても尊い存在であることに変わりはありません。そんなことを優しく、時にストレートに、でもユーモを交えて、この作品は伝えます。だから、現実を見つめ続けるミゲルに対し、最後に見せるエミリオの表情は観客にいろいろな感情を抱かせるのだと思います。

 “しわ”はその人が生きてきた証なので、それをきっちり受け止められる生き方がしたいなと思ったり・・・
『しわ』は6/22(土)よりシネマイクスピアリにて公開中です。

By.M
(c)2011 Perro Verde Films - Cromosoma, S.A.

『インポッシブル』

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 みなさん、こんにちは女住人Mです。
今回ご紹介する作品は出来るだけ多くの方に見て頂きたい1本、『インポッシブル』です。
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 本作は2004年、スマトラ島沖地震に遭遇したベネット一家の物語です。クリスマス休暇を過ごそうとタイのリゾートビーチにやってきたマリア(ナオミ・ワッツ)、ヘンリー(ユアン・マクレガー)・ベネット夫婦とその3人息子ルーカス、トマス、サイモンは滞在3日後、地震で発生した巨大津波に襲われます。マリアは重傷を負いながらも長男ルーカスと生き延び、一方、夫のヘンリーは二男トマスと三男サイモンと奇跡的に生き残りますが、家族は離ればなれに・・・目の前に広がるのは破壊的で絶望的な光景・・・・でも彼らは家族の再会を信じ、生き抜こうとする実話を元にした物語です。
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 映画ファンならユアン・マクレガーとナオミ・ワッツ共演と聞いただけで、迷わず「この映画観たい!」と思うでしょう。加えて監督が「永遠のこどもたち」(傑作!)のJ・A・バヨナだったので「きっと素晴らしい映画に違いない。」と私の本作への期待値は上がりました。でも映画はスマトラ島沖大地震に遭遇した家族の話であることを知り、すぐ日本での公開は難しいことを悟りました。3.11の震災があった後の日本です。いろいろな意味でのハードルを感じました。が、昨年の東京国際映画祭での上映が決まり、本作を観た私はこの映画をシネマイクスピアリでも上映したい、と強く思いました。

この映画を観終わった時、私は本当に席を立つことが出来ませんでした。映画を観て、体から魂がすっぽり抜ける経験をしたのは初めてのことです。物語の前半では津波描写があります。もう息も出来ずにただその状況をスクリーンのこちら側で見るしかない、それがスクリーンの中の作られた映像とわかっていても息が詰まる。この映画を見た日本人は3.11を思い出さない訳にはいかず、あの時の記憶が甦り、心が痛くなる。正直、映画を観ている途中もずっとこの映画を上映すべきか考えました。でもこの映画には圧倒的な力がありました。実話を描くからこそ、起きたことに目を背けない強い想いに惹きつけられました。
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(この映画を語る上で役者陣の演技力の素晴らしさは外せません。
ユアン&ナオミ・ワッツは言わずもがな、3人の息子たちの演技はその域を超えています。)

 ナオミ・ワッツ演じる主人公のモデル、マリア・ベロンさんが来日された時にこうおっしゃっていました。
「被害に遭った者、それで生き延びた者は何でこんな目に合うのか?なぜ私が生きているのか?と悩みます。そして辛いことはなかったことにしたいと願います。でも、人はただ忘れることは出来ないんです。それと一度正面から立ち向かわない限り、前に進めないんです。だからこそ、この映画を見てほしいのです」と。

 本作では家族の再会を決して諦めなかった彼らがもたらすある奇跡を描きますが、助かった人、助からなかった人の間に違いはなく、ただその事実があるだけです。ベネット一家が経験する、思いがけない人生のめぐり合わせは本当に奇跡なのですが、我々はそういった奇跡の中で常に生きていることに気付かされます。
観た人の心に必ず残る1本、 『インポッシブル』は6/14(金)よりシネマイクスピアリで公開中です。

By.M
(C)2012 Telecinco Cinema, S.A.U. and Apaches Entertainment, S.L.

『箱入り息子の恋』

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 皆さんこんにちは。梅雨があまり好きじゃない女住人Mです。が、この映画の中の雨の風景は素敵ですよん。
今回のご紹介する作品はシネマイクスピアリで6/8(土)から公開している『箱入り息子の恋』です。
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 主役は市役所で働く天雫(あまのしずく)健太郎、彼女いない歴=年齢35歳の独身男。 健太郎はまさに今流行りの?!“こじらせ”Boyで、話し相手はペットの蛙(まさに健太郎のメタファー)、ランチもわざわざ家に戻って食べ、終業時刻と共にまた帰宅し、部屋でゲームに勤しむ、心を閉ざしまくりな青年ですが、人との繋がりを取り辛くなった昨今だと皆さんの周りにもリアルにいそうな草食系“こじらせ”青年です。それをシンガーソングライターであり、役者でもある星野源さんが演じ「いる、いる、こんな男性、いるいる」感がさらに倍増です。そんな健太郎の両親(平泉成、森山良子)が子どもの代わりにお見合いをする“代理見合い”に参加したことで、裕福な今井夫妻(大杉漣、黒木瞳)のひとり娘・奈穂子(夏帆)とお見合いをすることになります。

彼女は目が見えなくて、両親からとっても大切にされているのですが、この盲目の乙女・奈穂子を透明感抜群な夏帆ちゃんが演じてて、もう可愛い、可愛過ぎる!!!健太郎がお見合いの席でドキドキしちゃうのも当たり前ですよ。
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そして、人との関係性を持つことが得意でないこの二人が出会い、心惹かれあう過程は本当もう、フレッシュ!ぎこちなかったかと思えば、大胆行動に出たり、まさに(特に健太郎の)恋は加速度を付けて走り出します。
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(夏帆ちゃん、可愛か〜。むっちゃ可愛か。)

が、奈穂子の父親は猛反対。ある事件をきっかけに二人の恋が暗礁に乗り始めます。嫌いな訳じゃないのに、離れなければならない、忘れたい訳じゃないけど、忘れなきゃいけない、こう言う恋が切なくない訳がない!
そして、誰しもこの映画を見た時に胸にグサっ!と刺さりまくるあるシーンを見た時に涙は決壊な訳です。
恋をするとそれがうまく行こうが行かまいが、傷つくことがあったり、傷つくのは怖いな、って思ったりするじゃないですか。でも健太郎は奈穂子との出会いで初めてその“傷つくことが怖い”と言う殻を破っていくんです。もう、映画を見ながら健太郎にエールを送りまくりです。「傷つくことは恥ずかしいことじゃない、傷つくことを恐れて何もしないことが恥ずかしいんだ!」って、健太郎が自分で自分に言っているセリフが私には聞えました!
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(ガンバレ!ガンバレ!健太郎!)

 そして6/15(土)シネマイクスピアリに市井昌秀監督、星野源さん、夏帆さんが舞台挨拶でご来館されました!お客様とのQ&Aコーナーもあり、「撮影で一番印象に残っているシーンは?」の質問に、星野さんは凄く緊張したお見合いシーン、夏帆さんは全くピアノが弾けなかったのでこの映画のために1カ月かけて猛練習をしたピアノシーンを挙げられていました。お二人のお気に入りのシーンをスクリーンで是非ご覧下さい。
恋をしている人もそうでない人にも是非見て頂きたい1本ですよ〜。

By.M
(C)2013 「箱入り息子の恋」製作委員

『ローマでアモーレ』

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 梅雨が嫌いな女住人Mです。これから雨が多くなるジメ〜っとした季節になりますが、そんな時にこそカラっとした明るい映画を見たいものですね。今回は「ミッドナイト・イン・パリ」のウディ・アレン監督の最新作、太陽がきらめくイタリア・ローマを舞台にしたラブ・コメディ、『ローマでアモーレ』をご紹介します。
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「いろんな人のいろんな人生。この街ではその全てが物語」、そんな口上から始まる本作は4つのエピソードが同時進行に進みます。旅先のローマでイケメン男性と出会いすぐに婚約を決めたヘイリー(アリソン・ピル)。そんな娘に会うために、両親(ウディ・アレンとジュディ・デイヴィス)はローマにかけつけ、互いの家族の顔合わせをしますが、ちょっと噛み合わない・・・。田舎育ちの純朴な新婚カップル、アントニオとミリーは新生活をするためにローマの地へ。でもホテルに着いて早々、出かけたミリーが帰ってこない。アントニオの部屋には人違いでコールガールのアナ(ペネロペ・クルス)がやってくるわ、親戚一同と鉢合わせになるわの大慌て・・・。著名な建築士ジョン(アレック・ボールドウィン)は若い頃住んでいたローマの街を散策中に建築家志望のジャック(ジェシー・アイゼンバーグ)と出会い、若い時分の想い出をジャックに重ねたりして。そんなジャックとサリーのアパートにサリーの親友モニカ(エレン・ペイジ)が転がり込んできます。ローマ在住の中年男レオポルド(ロベルト・ベニーニ)は普通のサラリーマン。が、突然ある朝を境にマスコミやパパラッチに追いまわされローマで一番の有名人に・・・・。

 アモーレ(愛し)、カンターレ(歌い)、マンジャーレ(食べよ)が合言葉のイタリア。まさにその言葉通りの4つのエピソードが繰り広げられる本作は、とにかく街もそこで描かれている人も生き生きしているのが見所!この街の虜になっているウディが描くローマは本当に輝いています。コロッセオ、トレヴィの泉、ポポロ広場、スペイン階段などなどローマ観光地の代名詞をバックに物語は進行。フォトジェニックな街を映画の舞台にした時に、先ずはその街の魅力をこれでもか!と描くことは鉄則です。映画を見ているだけでローマにいる気分に浸って、もうそれだけで良い旅、夢気分♪
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しかも、ウディ・アレンと言えば、シニカルで皮肉屋な視点も代名詞ですが、本作ではローマの魅力にやられたか、それ以上にひたすら明るい!本作では久しぶりに出演も兼ねたウディが演じるダメ・パパと賢いママの会話なんかもう爆笑もの。おまけにひょんなことで娘の婚約者のパパが驚くべき美声の持ち主だと発見したことから繰り広げられるドタバタ劇は笑いがどんどんエスカレートし、最後には思わぬ展開に!そして男性陣の多くは本作が見たい理由に“ペネロペ・クルス出演”を上げると思いますが、男性陣がみたいSEXYで奔放なペネロペちゃんがピッチピチの赤いミニのワンピで登場です!

 でも、私が一番お気に入りのエピソードは若い男女の三角関係を描くサリーとモニカとジャックの物語。「凄く可愛くて、頭も良くて、魅力的で男性がすぐ虜になっちゃう友達が、うちにしばらく来たいって言ってるけど良い?」と言うセリフで登場するモニカこと、エレン・ペイジ。彼女は小柄で可愛らしい女優さんで、サリーが紹介するような魔性の女とはかけ離れたタイプに思えます。それが「どんな女の敵が登場するんだ!」と言った期待の後に出てくるもんだから、あれれ〜、なんですが、どんどん、どんどん、エレン・ペイジ扮するモニカの魅力が炸裂しまくるんです。まさにギャップ萌え!ジャック役のジェシー・アイゼンバーグとエレンのコンビ感は絶妙!恋の三角関係も爆笑のエンディングを迎えるのでご期待下さい!
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(ウディ・アレン映画にこの二人がいるのを見るだけでムホホ。)

 ウディ・アレン特有のシニカル視点は「ライフ・イズ・ビューティフル」のロベルト・ベニーニ扮するレオポルドの所でしっかり描かれていますので、ウディ・ファンの皆さまはそこでニヤニヤして下さいね。
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(笑いの中に風刺もピリリ。)

 永遠の都ローマの魅力を思う存分引き出した上に個性溢れる魅力的なキャスト陣で彩られる、
この季節にぴったりな『ローマでアモーレ』は6/8(土)からシネマイクスピアリで公開です!
By.M
(C)2012 GRAVIER PRODUCTIONS,INC.

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