こんにちは、女住人Mです。さて皆さんはお住まいのお隣さんがどんな方かご存知ですか?
今回ご紹介する作品は6/18公開『クリーピー 偽りの隣人』です。
主人公は犯罪心理学者の高倉(西島秀俊)。元同僚の野上(東出昌大)から依頼された未解決事件に興味を持ち始めるも真相には辿りつけないでいます。一方、妻・康子(竹内結子)と共に引っ越しをし、新居での生活を始めるのですが、隣の西野(香川照之)一家はどこか奇妙で謎めいている・・・・そんなある日、西野の娘・澪(藤野涼子)が高倉にこう告げるのです。
「あの人、お父さんじゃありません。全然知らない人です。」と。
このあらすじからして既にパンチあり過ぎる・・・。「お父さんじゃなきゃ、一体何なのよ?」
さて、タイトルの"クリーピー"ですがこれはぞっと身の毛がよだつような、気味が悪いという意味。
そしてこの映画の中の"クリーピー"とはタイトルにある通り、先ずは
その1、<隣人西野がクリーピー>
新天地でのご近所付き合いを始めようと康子は菓子折り持って挨拶に向かうのですが、西野の不躾な態度と全くかみ合わない会話に「何なのよ」となります。しかも後日会った時はナイスで愛想もよく、「何なのよ」は増すばかり。その一方で高倉は「この前、奥さん態度が悪かったですよ」と責められ、やることなすこと一貫性がない西野に不信感だけが募っていくのです。しかも話す時の距離が近い!顔近い!近過ぎて怖い!こういう役を演じたら天下一品な香川さんが、捕え所がなく、怪し過ぎる男をばっちり好演。しかし、それでこの映画が香川照之劇場になっているかと言うと、そうでないのもポイント。この映画全体は"クリーピー"なアンサンブル映画になっているんです。
(西野の娘・澪を演じる藤野涼子ちゃん(「ソロモンの偽証」)の演技がまた抜群!西島&香川コンビの中でも全く埋もれてない!)
その2、<なんと事件を追い、西野を怪しむ高倉もクリーピー>
ある事件をきっかけに刑事を退職し、犯罪心理学者として大学教授となった高倉。美しい妻・康子と愛犬マックスと一見、仲睦まじく暮していましたが、不気味な西野、そして娘・澪の「あの人全然知らない人です」の件から一転。でも映画を観ていると、それは決して西野のせいだけでなく、犯罪者の感情に没入し過ぎる高倉自身にも問題があるんじゃないか、と思わされます。犯罪に興味があり過ぎて、全てのことをそっちのけにして追求し、それ故たまにギョっとする態度を取ります。生活を共にする康子にとってはそんな高倉の行動は彼女自身を不安にさせます。
その3、<事件に没頭しすぎる夫を持つ妻・康子もクリーピー>
料理上手で明るく、人当たりも良い、そんな康子がなぜか西野に失礼な態度を取られたり、はたまたナイスにされたりと、まるで心を弄ばされ、次第と西野に操られるようになるのです。映画の冒頭ではあんなに明るかった康子がどんどん西野に取りこまれる・・・その変貌ぶりもクリーピー。そんな康子を演じきる竹内結子さんの役者魂にも脱帽です。
(「殿、利息でござる」のコミカルな演技から一転、本作の中で竹内さんが慟哭するシーンにご注目!)
と人間の心の闇に潜む"クリーピー"がジワジワ表に浸食してくるのが本当に"クリーピー"な本作。そして特異な事件を描いたようにも思えますが、これに似た事件って巷で既に起きてるんですね。コミュニケーションが希薄になった現代では、人の心が闇に蝕まれることはたやすいのかもしれない・・・もう明日は我が身です。
この映画、メガホンを取ったのは海外でも評価の高い黒沢清監督。ビニールカーテンの揺れ、照明の陰影、セットとどれを取っても監督が作り出す世界観自体が不穏!そして黒沢作品ファンの方々にとってはたまらないシーンも満載!(ドローン撮影されたシーンなんか、ゾクゾクですよ!)そういった監督らしいオリジナリティ要素が随所に登場しつつもエンタメ感も共存していて、冒頭からエンディングまで本当にドキドキが止まりません!是非スクリーンでご堪能下さい。
By.M
©2016「クリーピー」製作委員会