シネマイクスピアリ: 2016年6月アーカイブ

『クリーピー 偽りの隣人』

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 こんにちは、女住人Mです。さて皆さんはお住まいのお隣さんがどんな方かご存知ですか?
今回ご紹介する作品は6/18公開『クリーピー 偽りの隣人』です。
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 主人公は犯罪心理学者の高倉(西島秀俊)。元同僚の野上(東出昌大)から依頼された未解決事件に興味を持ち始めるも真相には辿りつけないでいます。一方、妻・康子(竹内結子)と共に引っ越しをし、新居での生活を始めるのですが、隣の西野(香川照之)一家はどこか奇妙で謎めいている・・・・そんなある日、西野の娘・澪(藤野涼子)が高倉にこう告げるのです。
「あの人、お父さんじゃありません。全然知らない人です。」と。
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このあらすじからして既にパンチあり過ぎる・・・。「お父さんじゃなきゃ、一体何なのよ?」
さて、タイトルの"クリーピー"ですがこれはぞっと身の毛がよだつような、気味が悪いという意味。
そしてこの映画の中の"クリーピー"とはタイトルにある通り、先ずは

その1、<隣人西野がクリーピー>
新天地でのご近所付き合いを始めようと康子は菓子折り持って挨拶に向かうのですが、西野の不躾な態度と全くかみ合わない会話に「何なのよ」となります。しかも後日会った時はナイスで愛想もよく、「何なのよ」は増すばかり。その一方で高倉は「この前、奥さん態度が悪かったですよ」と責められ、やることなすこと一貫性がない西野に不信感だけが募っていくのです。しかも話す時の距離が近い!顔近い!近過ぎて怖い!こういう役を演じたら天下一品な香川さんが、捕え所がなく、怪し過ぎる男をばっちり好演。しかし、それでこの映画が香川照之劇場になっているかと言うと、そうでないのもポイント。この映画全体は"クリーピー"なアンサンブル映画になっているんです。
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(西野の娘・澪を演じる藤野涼子ちゃん(「ソロモンの偽証」)の演技がまた抜群!西島&香川コンビの中でも全く埋もれてない!)

その2、<なんと事件を追い、西野を怪しむ高倉もクリーピー>
ある事件をきっかけに刑事を退職し、犯罪心理学者として大学教授となった高倉。美しい妻・康子と愛犬マックスと一見、仲睦まじく暮していましたが、不気味な西野、そして娘・澪の「あの人全然知らない人です」の件から一転。でも映画を観ていると、それは決して西野のせいだけでなく、犯罪者の感情に没入し過ぎる高倉自身にも問題があるんじゃないか、と思わされます。犯罪に興味があり過ぎて、全てのことをそっちのけにして追求し、それ故たまにギョっとする態度を取ります。生活を共にする康子にとってはそんな高倉の行動は彼女自身を不安にさせます。
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その3、<事件に没頭しすぎる夫を持つ妻・康子もクリーピー>
料理上手で明るく、人当たりも良い、そんな康子がなぜか西野に失礼な態度を取られたり、はたまたナイスにされたりと、まるで心を弄ばされ、次第と西野に操られるようになるのです。映画の冒頭ではあんなに明るかった康子がどんどん西野に取りこまれる・・・その変貌ぶりもクリーピー。そんな康子を演じきる竹内結子さんの役者魂にも脱帽です。
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(「殿、利息でござる」のコミカルな演技から一転、本作の中で竹内さんが慟哭するシーンにご注目!)

と人間の心の闇に潜む"クリーピー"がジワジワ表に浸食してくるのが本当に"クリーピー"な本作。そして特異な事件を描いたようにも思えますが、これに似た事件って巷で既に起きてるんですね。コミュニケーションが希薄になった現代では、人の心が闇に蝕まれることはたやすいのかもしれない・・・もう明日は我が身です。
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 この映画、メガホンを取ったのは海外でも評価の高い黒沢清監督。ビニールカーテンの揺れ、照明の陰影、セットとどれを取っても監督が作り出す世界観自体が不穏!そして黒沢作品ファンの方々にとってはたまらないシーンも満載!(ドローン撮影されたシーンなんか、ゾクゾクですよ!)そういった監督らしいオリジナリティ要素が随所に登場しつつもエンタメ感も共存していて、冒頭からエンディングまで本当にドキドキが止まりません!是非スクリーンでご堪能下さい。

By.M
©2016「クリーピー」製作委員会 

『10クローバーフィールド・レーン』

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 7月を前に30℃近い日が続き、先が思いやられますね、こんにちは女住人Mです。
今回ご紹介するのはネタバレ厳禁、6/17(金)公開『10クローバーフィールド・レーン』です。
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 紹介する、と言ったものこの映画、事前情報を一切入れないまま本編に挑んでもらった方が思う存分楽しんでいただけるタイプの作品なので難しい!こういう映画を紹介するのはホント難しい!難しくはあるのですがネタバレに気をつけつつ紹介させていただきます。ただ、現段階で本作がちょっとでも気になっている皆さまにおかれましては、このまま画面を閉じて頂き、映画館にGO!です。(何なら予告もポスターもチェックせずに映画館にGO!)
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 この映画、タイトルで「あれ?」と思っている方もいらっしゃるかと思いますが、本作は「クローバーフィールド/HAKAISYA」(2008年)と特別な繋がりを持っている作品と前作同様プロデューサーをしたJ.J.エイブラムス監督は語っています。「クローバーフィールド~」は突如巨大な物体がNYに現れ街を破壊、人々がパニックに陥る様をドキュメンタリータッチで撮った作品。公開するまでほぼその全貌を隠した宣伝で「何が起きるの?何が起きたの?」という観客の興味を引き世界中で大ヒットしました。

主人公はミシェル(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)。目を覚ました場所はシェルターの一室。点滴を打たれ、足にギブス、片腕は手錠で繋がれています。彼女の前にハワード(ジョン・グッドマン)と名乗る男が現れこう言います、「外の世界は何かに襲われ汚染されている。俺はきみを救った。決してここから出てはいけない」と。そこから自らシェルターに逃げて来たエメット(ジョン・ギャラガーJr.)と共に3人の共同生活が始まります。状況を理解し辛いとは思いながらもミシェルはハワードを信じるのですが、でもやっぱりどこか胡散臭いこともある。本当にハワードが言っていることは真実なの??そんな疑心暗鬼な感情が日に日に彼女の中で大きくなっていくのです・・・
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この映画のミソは何てったってハワードを演じるジョン・グッドマンにあります。有名な所だと「モンスターズ・インク」でサリーの声を担当、大きな体と味わい深い演技で2011年以降は毎年3~7本コンスタントに映画に出演する程の売れっ子おじさん。唯一無二の存在感で登場シーンが多くなくとも重要な役割を担うことが多く、連日連投するリリーフピッチャーさながらです。そのため"ハリウッドはジョン・グッドマンに頼り過ぎ"と映画通から指摘されることもしばし。でもそれが出来るぐらい彼は存在だけで説得力を持たせられる何かを持っています。
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(困った時のジョン・グッドマン(右)!)

そんな彼が掴みどころがない男ハワードを演じるので、「この人は一体全体何?」という不気味さと「この映画はどう展開するの?」という不気味さが合わさって、先が見えない感が倍増するんです。それは主人公のミシェルが抱く感情に等しいので、観客は映画を観ながらミシェルの目線でもって「何?何?」となるので、映画に没頭していくという図式が出来上がるのです。
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(D.I.Y映画としての見所もあり!)

ハワードの本当の正体は?彼は本当にミシェルを助けようとしているだけなのか、それよりもシェルターの外では一体何が起きているのか、それとも実は起きてないのか、「何?何?何?」の真実はスクリーンでお楽しみください!!

By.M
Ⓒ2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

 皆さんこんにちは、中学の頃からずっとイギリスに行きたいと思っているのに未だその地に足を踏み入れていない女住人Mです。
今回ご紹介する作品は若き日のエリザベス女王が生涯たった一度非公式に外出した一夜を描く6/4(土)公開『ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出』です。
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 物語は1945年5月8日、ヨーロッパ戦勝記念日の夜。今年生誕90周年を迎え、イギリス史上最高齢・最長在位の君主エリザベス女王がまだ19才だった頃、(「英国王のスピーチ」でお馴染み)国王ジョージ6世(演じるは元祖英国男子・ルパート・エヴェレット)の許しを得て、国民と共に終戦を祝うために妹のマーガレット王女と共に街に繰り出します。

 もうこのあらすじを聞いただけで何だかウキウキしちゃいます。何せやっと戦争が終わったんです。イギリス中が祝賀ムードに溢れ、歓喜の渦。そんな街にエリザベスはマーガレットと共にお出かけです。付き添いの近衛兵が2人監視に付くも、記念すべき夜を妹と共に国民と祝える。それは束の間許された自由な時間です。国民がどんな気持ちでいるのか、どんな生活をしているのか、そして年頃の女の子でもある二人はちょっとした出会いもあるんじゃないか、と天にも昇る気持ちだったと思います。
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(エリザベス(右)を演じるのはサラ・ガドン、マーガレット(左)を演じるのはクルクル眼が愛らしいベル・パウリー)

一方、世間知らずの二人に外出を国王が許可する下りも描かれますが、既に次期女王になることが規定の事実だったエリザベスのために、最初で最後の自由なひと時をプレゼントする。国王とて娘を前にすると一人の父親であることが描かれるシーンにも胸がいっぱいです。でも親の心配をよそに二人は深夜1時までの門限を無視して夜通しの冒険を繰り広げることとなるのです。

 本作は実話に着想を得て作られた物語。実際は16人のお付きを従えての外出で、門限を守っての帰宅だったそうで、この映画ほど羽目を外すことはなかったようです。でも束縛された日々を送っていたエリザベスにとって"お忍びでお出かけをした"この出来事はその後の行動に大きな影響を与えることとなったハズです。

だって、ロンドンオリンピックでもダニエル・クレイグ扮するジェームズ・ボンドとの寸劇を繰り広げ、ヘリコプターからダイブしたり(もちろんダイブしたのはご本人ではありませんが・・・)、映画にドラマにとサービス精神旺盛なままにエリザベス女王というキャラクターが登場しますが、この映画を観るとこの一夜があったから、国民が王室に何を求めているか、とか国民といつも近くに・・・といった思いが若い時分に植え付けられたんじゃないか、なんて深読みしたくなるんです。たった一夜のめくるめく時間がエリザベス女王に与えたものは生涯忘れることが出来ないものだったんだろうな、と。
映画にはたった一日、たった一時期の出来事が決定的にその人の何かを変えた瞬間を描く名作がたくさんありますが、この映画もまさにそんな様がとても清々しく描かれています。
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 そしてエリザベスは出かける前から仄かに期待していた、男性との"出会い"を経験します。でも将来が約束された彼女にとってそれは淡い想い出にしかなりえないところが切なくなる一方、妹のマーガレットはそんな重圧がないため好き勝手にこの夜を謳歌する、その対象的な過ごし方がまた心に残ります。エリザベスとは違ってのびのび育てられたと思しきマーガレットがその天真爛漫さをこの一夜で発揮しまくり、「もう楽しくてしょうがない!」感が溢れていて彼女を見ているだけで朗らかな気持ちにもなれるのでした。そしてマーガレットはこの後、一般人男性とのゴシップで賑わせ、それが後の名作「ローマの休日」の元ネタになったのでは?との憶測も・・・。
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(エリザベスと出会うジャックを演じるはクリス・プラット似のジャック・レイナー。いい演技してる!)

ときめきが溢れる本作はいろいろな方に観て頂きたいのですが、正直なところエリザベス女王に一番観てほしい!あの頃を想い出し、きっと笑ったり、泣いたりして楽しんでくれるんじゃないかな、そう思えるのでした。

By.M
(C)GNO Productions Limited

『デッドプール』

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 皆さんこんにちは、女住人Mです。皆さん、アメコミ映画はお好きですか?マーベルからDCコミックスと様々なスーパーヒーローたちがスクリーンに登場。そこにまた新しいヒーローが、しかもこれまでにないR15+指定のドギツイ奴がやってきた!
今回ご紹介するのは6/1(水)公開『デッドプール』です。
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 そのキャラクターとは能天気で無責任、口を開けば毒舌とギャグと下ネタばかり。自分のことは「俺ちゃん」と呼ぶ軽薄さを持ち合わせつつも、惚れた女性には一途なデッドプール、通称"デップー"、中の人はウェイド・ウィルソン(ライアン・レイノルズ)。元特殊部隊の彼は悪い奴を好き勝手にこらしめお金を稼ぎ、恋人のヴァネッサ(モリーナ・バッカリン)とはラブラブな日を過ごしていたのに、末期ガンに冒されていることが判明!

ガンの治癒と引き換えに怪しい組織にミュータント遺伝子を注入されたことから、顔から身体から皮膚がボロボロに・・・ヴァネッサの元に戻れるように、元の俺ちゃんに戻せ~!と、謎の組織を撲滅させるべく復讐を果たそうとするのです。ってこれ、全然スーパーヒーローじゃない、自分の復讐のためじゃん、自己中じゃん、という所からも型破りヒーロー感はわかって頂けるでしょうか?sub1_009_MKT_0550_v684.1033.jpg

 だいたい冒頭のテロップから"おバカな映画が始まります"と始まるところでこの映画の変ぶりは露呈されてますし、最後のエンドクレジットに至るまで下ネタ、映画ギャグ、自虐ネタで遊び放題。物語の構成も、回想シーンが入ったり、観客に向かってしゃべりかけてきたりと風変わり。本当とんでもない人が登場です。何よりやっぱり俺ちゃんこと"デップー"のキャラが最高過ぎます。
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これも主演とプロデューサーを兼任しているライアン・レイノルズの"デップー"愛の賜物!もともと、11年前に本作の主演をオファーされたライアンですが、企画がポシャリ、その後「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」でデップーを演じるも、原作のイメージと異なったため、ファンからは受け入れられず・・・それでもライアンは"デップー"の映画化を捨てきれず、スタジオを説得するために本作の監督ティム・ミラーとテスト映像を制作。それがネットに流出するハプニングがありながら、その動画を見たファンが熱狂し、結果この映画が出来ることになったと言う、なんとも愛溢れるエピソードではありませんか。並みならぬ愛情があるからこそ、それを下ネタと自虐ネタに昇華し、ともするとドン引きな設定&展開も、むしろグイグイ観客の心を鷲掴みにしていく始末。
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ライアン・レイノルズ自身、"デップー"映画化に至るまでの苦労話だけでなく、アメコミヒーローが好きで、"デップー"以外にDCコミックスの「グリーン・ランタン」のヒーローを演じるも、不発に終わり、「最もセクシーな男」に選ばれる程の人気なのに、これと言う代表作に恵まれない、器用貧乏みたいな人だったんですよね。プライベートではスカーレット・ヨハンソンと結婚し、離婚。その後、海外ドラマの「ゴシップガール」でお馴染のブライク・ライブリーと結婚し、どんだけ美女ばっかりモノにしているんだ!という幸せ者ではありますが・・・・
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まぁとにかく、やると決めたらやるんだぜ~!的な一途な思いとそのパッションが炸裂し、下品でおしゃべり過ぎるし、過激なバイオレンス描写もてんこ盛りですが、なぜか映画が終わると爽快な気分になってしまうのは、やっぱりこの映画が愛に溢れているからでしょうね。そう、この映画自体、本当に愛の物語なんですよ、こう見えて。

世界中で大ヒット、全米ではR指定(18才未満は観られない)にも関わらず3週連続1位となり結果、R指定映画で最高の興収も上げてしまい、もちろん、続編の製作も決定!きっと続編は製作費増し増しで、「X-MEN」からのカメオ出演とかありそうですね。続編が楽しみではありますが、その前に皆さん先ずは本作での俺ちゃんの活躍を観て下さいね~。

By.M
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