M(コジレ島の女住人): 2013年4月アーカイブ

『ハッシュパピー バスタブ島の少女』

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 変な天気が続きますね。これも地球温暖化とかの影響なのでしょうか?皆さん、こんにちは女住人Mです。
本日ご紹介する作品はそれにもちょっと関わる物語。低予算のインディペンデント映画ながら本年度アカデミー賞作品賞、主演女優賞を始め4部門にノミネート、去年のカンヌ国際映画祭やサンダンス映画祭を始め数多くの賞を総ナメにした
『ハッシュパピー バスタブ島の少女』をご紹介いたします。
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 舞台は南ルイジアナに浮かぶ島、通称“バスタブ”。6歳のハッシュパピー(クゥヴェンジャネ・ウォレス)は父親のウィンク(ドワイト・ヘンリー)と暮らしています。貧しいけれど活気ある“バスタブ島”での暮らしですが、ある日、百年に一度の大嵐が“バスタブ島”を襲い、水没の危機にさらされます。しかも、父親のウィンクの身にも何かが起きていることをハッシュパピーは勘づいています・・・6歳の少女の小さな世界の周りで起き始める、大きな出来事にハッシュパピーはどういう答えを見い出すのでしょうか・・・

 本作が注目を浴びたのはインディペンデント映画の祭典、サンダンス映画祭でのこと。若干29歳の新人監督ベン・ザイトリンが6歳の少女ハッシュパピーの目線を通して描く世界はあっと言う間に観客の心を魅了します。決して一人でなんて生きていけない幼い少女が次々自分に襲いかかる現実にイマジネーションでもって立ち向かい、しかも空想の中で生きようとするのではなく、それを現実に昇華する姿がもうなんとも逞しい!

ハッシュパピーちゃんは学校の先生からこんなことを教わります。「しばらくすると嵐が来て、南極の氷を溶かし、この地は飲みこまれるんだ。その時に太古の時代から氷河に閉じ込められていた動物オーロックスが生き返り、この地を襲う」と。ピュアなハシュパピーちゃんはこれを信じ、嵐がくる前触れやお父さんの身に起ころうとしていることをオーロックスの襲撃とリンクさせます。もちろんオーロックスの存在に恐れをなし、妄想の世界に閉じこもるのでなく、それに果敢に立ち向かおうとするのが普通の女の子とは違うところ。それは母親がいないハッシュパピーちゃんがいつか一人になってしまうことを案じた父・ウィンクが強く生きることを常に彼女に教え、また自然に溢れる中で育ってきたことで自ずと身に付けた彼女の生きる術なのです。普段はお酒を飲んではバカ騒ぎをするようなお父さんも、人間に一番大切な生きる力だけは日常的にしっかりとハシュパピーちゃんに叩きつけるのです。それ故に子どもらしさと共に、生きる強さを知らず知らずと自分のものにしていくハッシュパピーちゃんのなんと魅力的なこと。
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(左がハッシュパピーちゃんが妄想するオーロックス。こういうのが現れるところから
本作は南ルイジアナ版「もののけ姫」と例えれることも・・・)

ハッシュパピーを演じたクゥヴァンジャネス・ウォレスちゃんは撮影当時、まだ字も読めなかったそうですが、まさにこの役をやるために選ばれたような女の子。本作の演技でアカデミー賞最年少ノミネート女優にもなる偉業を達成することとなるのです。
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(この横顔が逞しい!)

本作の舞台となる南ルイジアナは2005年ハリケーン・カトリーナによる悲劇からまだ立ち直れていないばかりか、格差社会による貧困にも苦しんでいます。地球温暖化による水面上昇の影響を最も受ける地域であり、将来地図上からなくなってしまうかもしれないとも言われています。でもハッシュパピーにとってこの地は生きていく場所。自分の現実が、自分の愛するものがなくなろうとしている時、どうやって守り、どう生き抜くのか。小さな命はこれに正面からぶつかります。
この物語は遠い国の話ではなく、生きることにもっと真正面から立ち向かわなければならない、私たちに一番近い映画に思えます。
『ハッシュパピー バスタブ島の少女』は4/20(土)よりシネマイクスピアリで公開中です。

© 2012 Cinereach Productions, LLC. All rights reserved.

『君と歩く世界』

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 春の嵐が吹き荒れる4月、皆さん如何お過ごしですか?女住人Mです。
さて今回は今、私が密かに役者として魅了されている男優さんが主演している作品『君と歩く世界』をご紹介します。
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 ステファニー(マリオン・コティヤール)はマリンランドのシャチの調教師ですが、ショーの最中、不慮の事故により両足を失います。一方、夜警の仕事をしているシングフファーザーのアリ(マティアス・スーナーツ)は息子と姉の家に居候し、なんとか日々をしのいでいます。両足を失くしたステファニーは自分に向けられる他人からの同情に、ますます自分の殻に閉じこもるのですが、以前一度だけ会ったことのあるアリに連絡をします。粗雑で乱暴に見えるけれど、特別扱いすることなく自分に接するアリに唯一ステファニーは次第と心を許していき、アリも初めて自分にきちんと向き合う女性と出会い、何かを感じ始めていく・・・と言う二人の男女の物語です。
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(ほぼスッピンでこの役を演じたマリオン。フランス語で演技する方がより魅力的な印象も・・・)

 一般のお客様からすると「ミッドナイト・イン・パリ」、「ダークナイト ライジング」でお馴染みのマリオン・コティヤール最新作、となるのでしょうが、今回は相手役のアリを演じたMyオシメン、マティアス・スーナーツに絞ってご紹介します!去年公開された「闇を生きる男」でこの役者さんを知った私。その映画の中でのマティアスは圧倒的な説得力を持って存在していました。主人公が持つ、渇き、絶望といった複雑な心情を見事に表現して佇む男。マティアス・スーナーツと言う覚えにくい名前のこのベルギー人俳優との出会いは本当に衝撃的でした。役者に必要なものの1つに“人間力”があると思うのですが、マティアスはその中でも野性的な“人間力”が溢れている人に思えます。
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(マティアスのこの瞳がまた良い演技するんですよ。)

 で、本作です。映画の中で詳しく説明はされませんが、マティアス演じるアリの生きざまはきっと子供の頃から金銭的にも余裕もなく、特別な愛情を与えられることなく、充分な教育も受けることなく大人になってしまったことが感じられます。それゆえハングリー精神は旺盛で、肉体的にも優れていたため、格闘試合や体を張った仕事でもって生計を立てている、それが彼の唯一の生きる道であることも示唆されます。それゆえ、体の一部を失くしたステファニーにとって、アリが自分を特別視しないというだけでなく、(自分にはない)逞しい肉体を持ち、生命力溢れるアリはまさにあこがれであり、それを目の当たりにすることで自分も生きていることを実感出来たのだと思うのです。そして惹かれ、自身が生きていることを実感するために肉体的にも繋がる。大人の愛が育まれるのです。

 粗野な環境で育ち、まともな人間関係を築いたことがなかったアリは時に乱暴で愚かな行動をとってしまう一方、純粋で誰かを陥れたりすることは決してありません。だからなのか、せっかく物事がうまく行きそうになるアリに、そういう時に限って不運が襲うのですが、アリが不器用過ぎるから神様までも無碍に扱うの?!とさえ思ってしまう展開も・・・愚かだけど憎めないヤツ。でも、こういう男を演じさせたら世界中探してもマティアスに勝る役者はいないと断言出来ます。
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(マリオンとジャック・オディアール監督が来日!マリオンと同い年の中谷美紀さんが二人をお迎えしました♪)

 本作、ラストのアリの語りに込められたこの映画のメッセージは胸熱度100%。
『君と歩く世界』はシネマイクスピアリにて4/6(土)から公開中です。
マティアス・スーナーツ、以後お見知りおきを!

By.M
(C)Why Not Productions-page114-France 2 Cinema-Les Films du Fleuve-Lunanime

『アンナ・カレーニナ』

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 例年より早く桜が咲いてしまいましたが皆さん、お花見は行かれたでしょうか?花よりお酒の女住人Mです。
今回は美しく咲いて散った桜にも負けない、絢爛豪華な社交界を舞台に繰り広げられる『アンナ・カレーニナ』をご紹介します。
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(祝★本年度アカデミー賞衣装デザイン賞受賞)

 「アンナ・カレーニナ」と言えばロシアの文豪トルストイの不朽の名作。政府高官の夫カレーニン(ジュード・ロウ)とひとり息子と共に帝政ロシアの首都サンクトペテルブルグで暮らしている、社交界に咲いた華麗なる大輪の花、アンナ・カレーニナ(キーラ・ナイトレイ)。ある日、兄夫婦が住むモスクワを訪れたアンナはそこで若き将校ヴロンスキー(アーロン・テイラー=ジョンソン)と出会います。彼にも自分を慕う、うら若き女性がいたのですが、二人はたちまち恋に落ちてしまいます・・・

 これまでも何度となく映画化、舞台化されたラブ・ストーリーなので、ご存知の方も多いことでしょう。それゆえに「何で今さらまた映画化なのか?」と思いながら私も本作を見たのですが、これがもう、とっても素敵な作品だったのです!!もう何が素敵って、新しく甦らせたその演出方法が素敵!!!映画でありながら、その物語を舞台(演劇)型演出で見(魅)せるのです。舞台好きな方にはたまらない、うっとり演出のオンパレード♪特に、アンナとヴロンスキーが出会い、お互いの気持ちを決定づける物語前半の舞踏会でのダンスシーン!!!もうこのシーンだけでも再生リピートしてずっと見続けたい!と思っちゃう程。二人が心惹かれ合い、でも自制し合い、でもやっぱり惹かれ合う、そんな気持ちを表したこのシーンが超素敵〜!!!!(振付担当は世界的なモダンダンス振付師シディ・ラルビ・シェルカウイと言う方らしいです)

 まぁ考えたら本作は「つぐない」(アカデミー賞作品賞を含む7部門ノミネート)、「プライドと偏見」などで高く評価されているジョー・ライトが監督でした。そりゃあ、ケレンミのある作品撮りますよ。監督自身“例によって例のごとく時代モノの映画”を作ることは避けたかった、と言っている通り、新しい『アンナ・カレーニナ』の誕生です。

 アンナ演じるキーラ・ナイトレイもこう言うコスチューム映画は得意分野で、ピッタリきますしね。
そして本作のお薦めポイント男性陣にもあります。先ずはアンナと恋に落ちる若き将校ヴロンスキー役のアーロン・テイラー=ジョンソン!現在22歳の彼は18歳の時に自身の主演作の監督(年の差23歳!)と結婚した経歴もあり、そんな事を考えても本作の役もピッタリ。
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(みんな大好き「キック・アス」の彼だよ〜。こんなに大人になったよ〜)

加えて、アンナの夫カレーニンを演じたジュード・ロウですよ。最近前方の御髪がめっきり寂しくなりつつあったジュードがその頭髪を剃ってこの役に挑みました。数年前だったら、間違いなくアーロン君の役はジュードがやってましたよ!!
そんな時代の変遷を見るようなこのキャスティングがまたグっときますね。またジュードが良い演技するんですよね〜。
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(どんなことになろうとも、ジュード、君はSEXYだよ!)

 うっとりポイント満載なので特に女性の方にお薦めですが、妻の不義のために社会的立場も悪くなり苦悩するカレーニンの視点は男性にもグっとくると思います。『アンナ・カレーニナ』はシネマイクスピアリで上映中です。是非、スクリーンでうっとりしてくださ〜い。

By.M
(C)2012 Focus Features LLC. All rights reserved. photography by Eugenio Recuenco,Laurie Sparham

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