『来る』
街はどんどんクリスマスの雰囲気で華やぎますが、だからこそこんな作品も如何でしょう?今回は12/7(金)公開『来る』をご紹介します。
幸せな結婚生活を送る田原秀樹(妻夫木聡)。ある日、勤務先に不審な訪問者が訪ねてきて以降、身の回りで超常現象が起きるようになります。オカルトライター野崎(岡田准一)に相談し、キャバ嬢霊媒師・真琴(小松奈菜)と共にその謎を探れど“何か”は想像を遥かに越えた力で秀樹やその家族に襲いかかってくるのです・・・
本作は日本ホラー小説大賞にも輝いた澤村伊智さん著「ぼぎわんが、来る」を卓越した映像表現にも定評のある『告白』の中島哲也監督が映画化。彼の元に集まったのは岡田准一、黒木華、小松奈菜、松たかこ、妻夫木聡などなどと全員が主演級で日本映画には欠かせない役者揃いの豪華キャスティング。
主人公に得体の知れない“何か”が襲ってくる・・・という展開なだけにその内容の多くを語る訳にはいきませんが、原作がホラー小説と言えど、いわゆるホラー映画とは一線を画します。前半は、仕事先で出会った香奈(黒木華)とめでたく結婚し、子供を授かり、広い公園が目の前にある郊外の新築マンションに住む秀樹の順風満帆な日々がテンポよく描かれます。会社でも実家でも近所でもとにかくニコニコと愛想を振りまき、イクメン日記ブログを毎日せっせと更新している秀樹は羨望の眼差しで見られ、まさに現代的なパパを象徴するような男性です。
でもあることを機に秀樹の周りでは奇妙な出来事が次々と起こり始めるのです。こんなに家族を大切にし、幸せを絵に描いたような日常を送っている秀樹にその家族に何が起きているのか??彼が何か悪いことした??と。観客も動揺しちゃいます。
でもその一方でどこかひっかかる日常風景が劇中ではちょいちょい挟みこまれます。それは結婚式で浮かれる秀樹を余所に、招待客の男性たちが暴言を吐いていたり、社内の同僚が思わせぶりな発言を秀樹にしていたりと、秀樹や香奈に関わる人たち誰もがどこか邪気を孕んでいるようにみえて、なんだかしっくりこないのです。もう胸がこうザワザワしまくるのです。と、同時に“何か”が秀樹たちに執拗に迫って来るようになります。 “何か”は一体彼らの何を狙っているのか・・・でも次第と気付き始めるのです。得体の知れない“何か”そのものが恐怖ではないのだと・・・・はい、この続きはもう言えません・笑
前述したように本作は武器をもったバケモノが襲いかかったり、暗闇から「うわぁぁ!」と脅かされたりというジャンルのホラーではありません。でも全貌がいろいろわかってくるにつけ、本当に嫌~な感じがします。まぁ中島監督作品はいつも人間が潜在的に持つ!?嫌~なところをあぶり出す映画が多かったな、と思うのですが、と同時にそれがエンタメ映画にもなっているところがまた魅力です。
そして本作では特にブッキーこと妻夫木くんの演技が最高です。この役をこんなにまで完璧に演じられるのはブッキーしかいない。妻夫木聡という人への共通概念と申しましょうか、彼に対して私たちが抱いているものを完璧に利用してこの役がオファーされていること自体本当に意地悪だなぁ、と。でもそれを演じちゃうブッキー、最高です。
とても現代的な映画ではありますが、その根底にあるのは今も昔も変わらない人間が抱える感情の忌々しさなのかな、と思ったり。
By.M
(C)2018 「来る」製作委員会