ウラシネマイクスピアリブログ

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『天才作家の妻 -40年目の真実-』

 皆さん、こんにちは。これからシネマイクスピアリではアカデミー賞関連の作品が続々と公開します。今回はゴールデン・グローブ賞で主演女優賞(ドラマ部門)に輝き、本年度のアカデミー賞主演女優賞にもノミネート。グレン・クローズの演技が冴えわたる1/26(土)公開『天才作家の妻-40年目の真実-』をご紹介します。

 夫であり偉大なる作家ジョゼフ(ジョナサン・プライス)を支えてきた完璧な妻ジョーン(グレン・クローズ)。2人の元にジョゼフのノーベル文学賞受賞の吉報が届きます。手を取り合い喜び、周囲にも祝福されるのですが、これをきっかに2人の関係性は静かに、そして確実に揺らぎ始めます・・・・。

 貞淑な妻を演じたグレン・クローズが凄く良いらしい、今後の賞レースを賑わすに違いない、という情報だけで私がこの映画を観たのは去年のこと。実は途中までは「そんなにかな?」と思っていたんです。仲睦まじい2人が悲願のノーベル賞受賞のニュースを喜び合い、授賞式が行われるストックホルムに降り立つ。受賞式のリハーサルは慌ただしいながらもおもてなしを受け、ご機嫌な夫を見つめるジョーン。そんな彼らの最も幸せな瞬間を眺めているだけ??と。

でもジョーンは一人になった時に夫の伝記本を執筆しようとしていたナサニエル(クリスチャン・スレーター)に声をかけられるのです。これを機に物語が違う方向にドライブしていくんです。個人的にはあまり情報を入れずこの映画をご覧になってほしい・・・いえ、グレン・クローズと言う女優さんを「危険な情事」で認識されている方はあの狂気的な展開?と思われるかもですが、そうではないのでご安心ください。(と言っても違った意味の狂気はあるのか??)

 2人は長年連れ添った、本当に仲の良い夫婦です。でもその影で実は2人だけで共有していたある秘密がありました。それは“夫婦”という関係で結ばれている彼らにとって、ある一面では利害関係の一致した秘密でした。長年それを共有し、それを暗黙の了解としていたことで夫は無神経になり、妻はそれが不満になっていきます。そしてノーベル賞受賞式という非日常な経験が引き金となり、日常が露呈。夫の無神経さは妻を見下すという行為にまで姿を変え、それによって妻の不満は限界点を越えてしまうのです。言ってしまえば旦那さん、ちょっと調子に乗り過ぎちゃったんです・・・

夫婦って大変だな~、って思うんです。最初は愛情で結ばれていた2人の関係性も生活と言う日常が占拠しだすとキレイ事だけじゃ済まされないじゃないですか。しかもそこに時間が積み重なると“夫婦といっても他人”とは言いながら、そう言いきれない関係がどんどん育まれていく。

夫婦だけでしか作り上げる事が出来ない関係性自体がとても尊いものだと思うのですが、それに至るまでの心のあり様は未婚の私には想像もつきませんし、それを作り上げようという覚悟すらありません。そんな“夫婦”だけに成立しうる愛情の形を見事に描いたのが本作だと思います。

だから、ノーベル賞受賞経験のある夫を持たずとも、“夫婦”という関係をやってます、という方がご覧になれば、劇中に山ほど登場する夫婦あるあるに共感せざるを得ないでしょうし、私のように“夫婦”関係未経験の方がご覧になればそれを疑似体験し、いろいろ覚悟出来ると思います・笑

 そして言わずもがな、ゴールデン・グローブ賞に加えアカデミー賞でも主演女優賞を受賞する確率大のグレン・クローズの演技を観ているだけでも見応えたっぷり。本作で7度目のオスカーノミネーションは伊達じゃない。

 この映画では冒頭、何気ない幸せな風景として描かれるシーンが後半で対のように描かれますが、この物語の全容が見えた時にそれがとても深い意味を持っていることに気付かされます。そんな物語の構成の上手さもご堪能ください。

 見終わったら、意見交換や「そうそうあるある!」とストレス発散もしたくなる映画だと思うので是非、どなたかお誘い合わせの上でのご鑑賞もオススメです!

By.M