ウラシネマイクスピアリブログ

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『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』

 皆さんこんにちは。今回はとり上げましたのは個人的にも屈指のオススメ度な1本。全米で小規模公開からスタートし、口コミで広がり大ヒット!たくさんの映画賞も受賞し、ポップカルチャーに精通しているオバマ元大統領が2018年のお気に入りの映画の1つにもあげました。前置きが長くなりましたが10/25(金)公開『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』をご紹介します。

 タイトルの『エイス・グレード』は8年生、日本で言う中学2年生。アメリカは高校が4年間だけど小中の区切りが曖昧らしく、言ってみれば高校生になる前の最後の年、という事だそうで。

 エイス・グレードな主人公のケイラ(エルシー・フィッシャー)はご多分にもれず携帯電話を片時も離さず、自身で動画サイトに投稿もする今どきの女の子なのですがそれを見てくれる友達もおらず、"学年で一番無口な子"という称号を与えられるぐらいの地味な女の子。本作では高校生活という新しい環境を前に不安いっぱいでいるケイラの日常を描きます。

 13歳の女の子が主人公となると「自分向きの映画じゃないわ」と思う方もいるかもしれませんが、ナメてもらっては困ります!(笑)自分が何者であるかわからず、そもそも何になりたいのかもはっきりせず、未来を夢見たいけど、現実がそもそもイケてなくてガッカリ、なんて思いは誰しも経験していることだと思います。

これぐらいの年頃だと自分の世界はとても小さく狭く感じるし、ここしかないんだと思い込み、どん詰まっては絶望的になるのですが、大人になるともっと楽に生きる術を見つけられる、ということを我らは経験で知っています。

ケイラはなりたい自分と現実とのギャップに悩んでいるのですが、ダウナーな日々で無気力、自暴自棄になるのではなく、何とかそんな自分と折り合いをつけたい、誰かの役にも立ちたいと思い、"毎日が素敵になるHow to動画"をyou tubeに投稿してみたりもしている・・・もう何とも健気。そんな風に真面目でフツーにいい子なので、映画を観ていると「大丈夫だよ、今だけだよ、君なら大丈夫だよ」と不安な面持ちのケイラに何度も寄り添い、励ましたくもなります。だって彼女は特別な女の子ではないし、それは昔の自分の姿かもしれない、そう思えてもくるから。

と同時に、大人になったところで現実を見ると「あれれ」と首をかしげることもあるし、「こんなハズじゃなかったかなぁ」と悶々と膝を抱える夜だってある。大人になればある程度生きやすくもなったのに、いくつになっても変わらない自分のダメダメな所が思い出されて「大人になっても人生は辛いよ、トホホ」という気持ちにもなっちゃう。

この映画を観ながらケイラを「大丈夫だよ」とギュっとハグしたくなったと共に、ケイラみたく不安いっぱいだった昔の自分、そして今もなおそのカケラが残っている自分をまとめてハグしたくなる、そんな切なくも愛おしい気持ちにさせてくれるのがこの映画なのでした。

 そして父娘映画として、とっても秀逸であることもお伝えしたい。親に心配されても、大切に思われても、それがありがたいことだとわかっていても素直に受け取れなかったりその思いが却って負担だったり・・・。

そう思われないよう出過ぎない、言い過ぎないようにと思っていても子供との距離がうまく測れない親の気持ちだったり、そんな微妙な親子の関係性もさりげなく、かつとっても丁寧に描かれています。心では理解出来ていても、言葉や行動では伝えたいことの半分も表現出来ない、そんな親子関係にモヤモヤすることいくつになってもありますよね・・・ケイラ同様、不器用だけどまっすぐなケイラのお父さんは本年度ベストファーザー賞受賞確定です。

 主人公は13歳の女の子ですが、ケイラとは年齢も境遇もかけ離れた所にいる人が観ても、きっとハートのどこかがグっとくるはず。観終わったらその気持ち、この映画ごとまるっとギュっとハグしてほしい・・・・そして笑顔でこう締めてほしい、「グッチー!」

By.M