『ジョジョ・ラビット』
先日、本年度アカデミー賞のノミネート作品が発表されました!今回は作品賞を始め6部門ノミネート、1/17(金)公開『ジョジョ・ラビット』をご紹介いたします。
第二次世界大戦下のドイツ。ジョジョ(ローマン・グリフィン・デイビス)はヒトラーに熱狂している10歳の少年。気弱な彼は“空想上の友達”ヒトラーの助けを借りて、ナチスの青少年集団ヒトラーユーゲントの立派な兵士になりたいと奮闘中。そんな彼が亡くなった姉の隠し部屋に少女エルサ(トーマシン・マッケンジー)が匿われていることを知る。この出会いがジョジョの人生を一変させることになるのです。
ナチスドイツをテーマにこれまでもたくさんの映画が作られてきましたが、本作がそれらとちょっと違うのはユーモアがたくさん散りばめられたヒューマン・ドラマになっていること。何せ自身のアイドルがヒトラー、それを架空の友達にしている少年が主人公という所からぶっとんでいます。
ジョジョは心優しい男の子なのですが、強い男性に憧れをもっています。大好きなママ(スカーレット・ヨハンソン)と二人っきりの家族だから、というのも影響しているんだと思います。本当は弱虫だけど、イマジナリー・フレンドのヒトラーに励ましてもらい、いろんな困難に立ち向かいます。
本作はジョジョの素直さ、真面目さといったキャラクターが全面に出た映画なので、ナチスドイツものとは思えない、ポップで笑いの多い世界観に包まれています。不器用な彼がドジを踏んだり、リア友のヨーキーと共にキャッキャしながら日常を過ごしている様を見ているとちょっと和んだりもするのですが裏を返せば、何も知らないジョジョが大人たちに信じ込まされたことを鵜呑みにし、それが正義と思っていることを考えると、とてもブルーな気持ちにもなります。
この映画に出てくる子供たちの大半は明るく、子供らしく描かれますが、影響を受けやすく犠牲になりやすい存在でもあるので、それだけに戦争の一番の被害者はいつだって罪のない弱い立場の人間であることを再認識させられます。
そして家の隠し部屋にある少女が匿われていたこと、それはママが危険を冒してまでやっていた行動だと知ってから次第とジョジョは新しい価値観に触れていきます。「優れているのは俺たちだ。我々より劣る人間がこの世には存在しているんだ」といった教育をジョジョは受けていたのですが生身の人間と触れあったこと、これまでにない感情を知ったことで大人たちから頭ごなしに言われていたことに対して“自分自身で考える”ということを始め、ジョジョはちょっとずつ違う世界を見始めるのでした。
監督は本作でジョジョのイマジナリー・フレンドのヒトラーも演じたタイカ・ワイティティ。ユーモア溢れる彼が作った作品なだけに、テンポも良いし、きっと演出をしている中でアドリブから生まれたシーンもふんだんにあっただろうな、と推測。なのに、脚本は練られていて、遊んでる?と思われるシーンもきちんと伏線回収され次の物語に繋がっていくそんな印象的な場面もあって、彼の手腕にもたまげます。
主人公ジョジョの無垢な可愛らしさ、彼の成長がとても胸を打つのですが、と同時に優しさと強さを兼ね備えたジョジョのママを演じたスカーレット・ヨハンソンや片目の大尉を演じたサム・ロックウェルといった愛情深い大人たちの描かれ方がまた最高!!
昨年のトロント映画祭で観客賞を受賞したのも納得の本作。新年は始まったばかりですが既に今年1の愛され映画が登場!かつ、ベストエンディング賞も内定です。もうこの映画、嫌いな人なんているのか?
By.M
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