『パブリック 図書館の奇跡』
都内では既に公開中ですが初日から満席続出、SNSを中心に口コミが広まっていて急遽シネマイクスピアリでも公開が決定しました!今回は8/7(金)公開『パブリック 図書館の奇跡』をご紹介いたします。
オハイオ州シンシナティの公共図書館で働くスチュアート(エミリオ・エステベス)。寒さをしのぐために図書館にやってくるホームレスたちにも寛大な彼は仕事に対しても実直だ。が、町がこの冬一番の寒さを記録した翌日、事件は起きる。閉館準備をしていたスチュアートに顔馴染みのホームレスのジャクソンが「今夜はここを占拠する」と宣言。行き場を失くしたホームレスたちが一夜の宿を求めて考えた、あくまでも平和的なデモだったけれどそれは大きな事件に飛び火することに・・・・
図書館の開館と共にやってくるのはいろんな人ばかり。本を借りに来るだけでなく、難問・珍問を投げかける人、そしてホームレスたちも。この冬一番の寒波がやってきて路上でホームレスの凍死者が続出。なのに緊急シェルターはいっぱいで、命の危険を感じた彼らは図書館に助けを求めたのです。
あらすじだけを聞くとかなり真面目な社会派映画っぽい雰囲気ですが、ユーモア要素がたっぷりで、笑いながら観ていたら「はっ」といろんな発見があるのが本作です。
どんな利用者にも分け隔てなく接する図書館員たち。スチュアートも他の利用者に迷惑がかからないように気を遣いながらもホームレスたちにもフレンドリーに時に親身に対応しています。そういった対応をするのもここが公共施設だから。
余談ですが日本の図書館以上に市民のためにいろいろなサービスを提供する側面を持っているのがアメリカの公共図書館。本が借りられるだけでなく、セミナーやトークショー、ダンス教室や低所得者へのネット端末の貸出と図書館としての在り方には驚きます。(この辺のことに興味がある方はフレデリック・ワイズマン監督のドキュメンタリー『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』もオススメ!)
市民に広く間口を広げて誰もが自由に利用出来るのが公共図書館。なのでスチュアートは最初「ここはシェルターじゃないんだから」と要求をはねつけるのですが、外は極寒。状況を察した彼自身も一緒に立てこもりに加わり、代わりの避難所を獲得するデモがスタートしたのです。
でもそこには次期市長選挙に出馬予定の検察官ディヴィス(クリスチャン・スレーター)がここぞとばかりにイメージアップ対策で介入してきて「俺、やれる次期市長候補!」とチャチャを入れてくるし(←こういう人はどこにでもいる!)、マスコミは事実をねつ造してでもスクープを!と迫ってくるしで、スチュアートはてんやわんやな状況に。法を守ること、自由を守ることの板挟みで迷いも生じますが、彼がホームレスたちを守ろうとするのにはある想いがあったことも次第とわかってきます。
すったもんだのこの事件を背景に“公共(パブリック)”とは何か?を問うこの映画。語り口はユーモアたっぷりだけど、貧困格差や分断が進み、そこから浮き彫りになる社会問題は別の国の出来事でなく、確実に我々も直面していることだなぁと気付かされるのでした。
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