『モリコーネ 映画が恋した音楽家』
映画にはそこで流れる音楽も欠かせません。中でも数小節を聴いただけで映画の1シーンがすぐに思い浮かび、観た時の心の高ぶりが想起されるような映画音楽もあります。今回はそんなメロディを作り続けた伝説のマエストロのドキュメンタリー映画、1/13(金)公開『モリコーネ 映画が恋した音楽家』をご紹介いたします。
エンニオ・モリコーネは『ニューシネマ・パラダイス』、『荒野の用心棒』、『アンチャッタブル』など500作品以上の映画とTVの音楽を手掛け、アカデミー賞に6度ノミネート、『ヘイトフル・エイト』(タランティーノ監督作品)で受賞、2006年に全功績を称える名誉賞にも輝いた偉大な作曲家。そんな世界的なマエストロ、モリコーネの葛藤と栄光に迫るのが本作です。
監督を任されたのは『ニューシネマ・パラダイス』の監督でもあるジュゼッペ・トルナトーレ。モリコーネとは28歳の年の差で師弟であり友であるという関係で、モリコーネ自身「トルナトーレが監督をするなら映画化の話を受けてもいい、それ以外ならなしだ!」というお墨付きを与えた人選。二人の深い絆があったからこそ生まれたこの映画でモリコーネが歩んできた人生は本人へのインタビュー映像で描かれ、また彼を敬愛してやまないクリント・イーストウッド、クエンティン・タランティーノ、ウォン・カーウァイといった著名な映画人や同じ作曲家のジョン・ウィリアムズ(『スター・ウォーズ』シリーズほか)、ハンス・ジマー(『バックドラフト』、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ、『インセプション』ほか)といった面々も登場しモリコーネ愛を語りまくります。
本作を作るにあたって“モリコーネの関わった映画のワンシーンを自由に使って描く”という監督のこだわりがあったので、貴重なエピソードは映画の映像やメロディーと共に描かれ、モリコーネの手掛けた名画のいいとこどりシーンも一緒に堪能出来るという要素もあって、とっても贅沢です。
トランペット奏者の父の影響で幼少期からトランペットを習い、12才で音楽院に入学し、作曲を学んだモリコーネ。天賦の才があった彼でしたが様々な理由から王道のクラッシクの作曲家ではなく、映画音楽の作曲家として活躍するようになったその理由、そこでの葛藤はドラマティックなエピソードに溢れ、彼の歩む人生にどんどん引き込まれていきます。
しかも手掛けた多くの作品でその才能を認められるも、何度も挫折を経験し、その度に運命を感じざるを得ない人との出会いやモリコーネの手によって命を吹き込まれることを望んでいたかのような映画との出会いが彼をいつも奮い立たせ、彼は2020年91歳でこの世を去るまで生涯現役の映画人、映画音楽家として第一線に立ち続けていました。その側には若い時に出会った妻マリアの存在があり、ある時から曲が完成すると最初の聴衆になるのが彼女であったことなど、心が温かくなるようなエピソードもちりばめられます。
5年以上密着して完成した映画は165分とたっぷり尺ではありますが、当初はもっともっと長かったそうです。それもそのハズ、こんなに魅力的な人生だもの、その偉業を前にしてカット出来る訳がない、と納得です。この尺にするのもトルナトーレ監督にとって苦渋の選択続きだったのでは・・
一見、チャーミングなおじいちゃんなのにいざ作曲となると楽器を使わずに溢れ出る音楽たちを譜面に起こす神のような姿、そのギャップがたまらない!そして彼の手にかかれば音楽も瞬時に彩りを纏い劇的に変化する、そんな瞬間すら描かれ、この映画を観た後にはきっと「あの音楽が使われていたあの映画が(また)観たい!」と思うハズ。
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By.M
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