ウラシネマイクスピアリブログ

映画を愛するシネマイクスピアリの宣伝担当者が
今後の上映作品を
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『バービー』

 今、全米、いや世界各地で爆発的に大ヒットしている映画をご紹介します。映画館がピンクに染まる8/11(金・祝)公開『バービー』です。

 どんな自分にでもなれる夢のような場所、“バービーランド”。そこでは皆が“バービー”であり“ケン”と呼ばれ完璧でハッピーな毎日を送っていた。が、ある日バービー(マーゴット・ロビー)はいつもの自分ではない!と異変に気付き、原因を探るべくボーイフレンドのケン(ライアン・ゴズリング)と共に人間の世界へと旅に出る・・・

 予告を観た時から個人的にも楽しみにしていた1本。ピンクに彩られるバービーランド、ポップで煌めく世界観の中でのダンスシーン、目にも楽しい衣装の数々、キャスティングも期待しかない!でも私、バービーでは育っていなかった・・・昭和なリカちゃん世代。でもセリフの端々にバービーの歴史が盛り込まれているので映画を観ながらバービーのブランドメッセージや背景がわかるし、その存在の意味合いが時代によっても変化していたこともわかるという、“バービー”そのものを描く映画として先ずはパーフェクト!

 冒頭から映画的な遊び心も満載です。人形遊びを通して母親的役割を子供ながらに洗脳?!されていた子供たちが初めて大人な女性のフォルムを持つバービーと出会うそのシーン。まさにカルチャーショックで口あんぐりなその表情もたまんない。バービーは彼女たちに新しい概念を提供し、その後もその時代に沿ったファッションや空気を取り込み、バービーは「私はなりたい自分になれる」というアイコンになっていきます。劇中のバービーも自分がそんな存在であると信じて疑わなかった・・・

 が、バービーがリアルワールドの人間界で目にしたのは自分が完璧な存在だったがために子供たちにプレッシャーを与えていたこと、女の子はこうあるべき!という呪縛を植え付けていたこと、それによって自分は万人から愛される絶対的存在ではなかったという事実を知るのです。(バービーの販売元マテル社公認映画なのにそんなことまで描いちゃうなんて太っ腹!)リカちゃん人形で遊んでいた私でも子供の頃に感じていた違和感をまさか大人になってこの映画で代弁してもらえるなんて、あの時の自分が救われるようで共感でしかない!

しかもバービーランドはあんなにハッピーなのに、人間界は男性優位社会な上にのぞんだ自分になれる訳でもない・・・。バービーは自信喪失、アイデンティティ崩壊寸前。一方、これまでずっとバービーのボーイフレンドという肩書以外何も与えられていなかったケンはマッチョなリアルワールドに感化され有害な男性性(=トキシック・マスキュリニティ)に染まっていくという展開も・・・。(そんなケンを自虐ニュアンス満載にチャーミングに演じてみせるライアン・ゴズリングがハマってる!) バービー目線のフェミニズム映画かと思いきや、皮肉たっぷりにマチズモにまで切り込んでくるなんて、やるやないか。しかもユーモアでもってポップに描いちゃうんだもの、天晴だ!

 この映画、ルックはキラキラしているから観ているだけで可愛い~、という楽しさはあるのですが、その実、むちゃくちゃ色んなことに目配せしていて、映画そのものを魅力的に、パワフルにしているところも圧倒的!これを(映画化権を持っていた)マーゴット・ロビーがプロデューサーとなって(「レディ・バード」「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」などの)グレタ・ガーウィグに監督・脚本(脚本はグレタのパートナーでもあるノア・バームバックと共同)をオファーして作り上げ、しかも世界各地で大ヒット!という結果まで出しちゃって、これぞまさにエンパワーメント映画ってやつです。

 公開前の本国でのSNS騒動は残念としか言えないけれど映画は傑作!いつの時代もジェンダー問わず自分らしさを獲得するのは難しい。でも人形のように箱(=既成概念)の中に縛られず、なりたい自分に自由になろうよ!と旗を振るこの映画、眩しくて眩しくて、眩しすぎるだろーーー!

By.M

★シネマイクスピアリ恒例の装飾を1F売店横のショーケースで展開中♪
遠くからでも目立つピンクの世界観、映画と一緒にお楽しみください。

追伸、
グレタ・ガーウィグ監督のもう1つの傑作『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』は
8/18(金)~24(木)まで<キネマイクスピアリ>の8月の作品として上映しますのでそちらもせひ!