『シチリア・サマー』
今回は11/23(祝・木)公開『シチリア・サマー』をご紹介いたします。
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舞台は1982年初夏のシチリア。16歳のニーノ(ガブリエーレ・ピッツーロ))と17歳のジャンニ(サムエーレ・セグレート)はバイク事故をきっかけに出会う。生い立ちも性格も異なる二人だったが意気投合、町中でジャンニちゃんと呼ばれからかわれていたジャンニにとってはニーノの優しさが何よりも嬉しかった。そして共に過ごすかけがえのない時間を経て友情は別の感情へと変わっていく・・・・
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本作は実話を基に描かれた少年たちの初恋を紡ぐラブストーリーです。ニーノは家族の愛情をたっぷり受けて育ち、病気がちなお父さんのまさに右腕となって稼業を助けるような「え~子やの~」を絵に描いたような少年。一方ジャンニは大好きな母親と二人暮らし、でも生活は貧しく、早く母親を楽にさせたいと願っているようなこれまた「え~子やの~」な少年です。
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でも自身のセクシャリティのために周囲にからかわれ、時に暴力をふるわれ、それでも一人耐え続けるジャンニの日常は地獄です・・・ニーノと出会うまでは。バイクをタンデムしたり、湖で泳いだり、花火をあげたりと共に過ごす時間がジャンニをとりまく世界をどんどん明るくしていきます。そんな二人の友情が恋に変化することにそう時間はかかりませんでした。
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しかし時代は80年代、今でさえ偏見の目にさらされる対象である二人の関係性に周りの容赦ない差別的な言葉や行動がどんなものだったかは想像に難くありません。
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親にとってみるとわが子を偏見から守りたいという一心ですが、守られるべきなのは二人の気持ち、それぞれのアイデンティティなのに、それが最優先されることはありません。そして偏見を持っていたのは親も同じ。自分の子供が他人とは違うこと、自分のセクシャリティや倫理観と違うこと、そういった“違う”ということをなぜこんなにも頭ごなしに否定し、拒否し、時に言葉や実際の暴力で制裁を下そうとするのか・・・大人であれば、大人だからこそ迷い、傷つきやすい子供たちを守らなければならないのに。
一緒に見上げた花火が刹那的に暗闇に消えてしまう様がまるで二人のようで余計に胸を締め付けます。
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本作は実話を基に作られた、と書きましたが二人に起きたこの後の顛末により今日までイタリア最大規模の団体として活動を続けるLGBTIに関する非営利団体“ARCIGAY(アルチゲイ)”が設立されるきっかけとなったそうです。
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時代が違えば瑞々しい二人の感情は成就したのに・・・と心から言える世の中では決してないので「ただ一緒にいたい」という純粋な思いが偏見や不寛容さというつまらない感情の犠牲にならない日が早く訪れるようにと祈るばかりです。
ニーノとジャンニを演じた若い俳優たちの愛溢れる眼差しはそれを見ているだけでこちらもときめいてしまいそうなぐらい。イタリアではクチコミでヒットした本作、役者たちの演技も注目です。
By.M
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