ウラシネマイクスピアリブログ

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『DOGMAN ドッグマン』

 アカデミー賞が発表され『君たちはどう生きるか』『ゴジラ-1.0』の受賞は大いに賑わいました。また最多7部門受賞の『オッペンハイマー』はついに3/29(金)からの公開。この機会にぜひチェックしてみてください。

今回はそういった賞レースに絡む系のテイストではありませんがエンタメ映画として侮るなかれ、3/8(金)公開『DOGMAN ドッグマン』をご紹介します。

 主人公の名前は“DOGMAN”(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)。子供の頃から父と兄に虐待を受け、大好きだった母親も夫の暴力に耐えかねて家を出てしまう。檻の中で犬たちと共に育てられた少年は父親が発砲した銃弾のせいで両足に装具を付け車椅子生活を送ることになる。トラウマを抱えながら成長したDOGMANを支え続けたのは面倒をみていた犬たち。生きていくために彼らと共に犯罪に手を染めるが、街のギャングたちに目をつけられてしまう・・・

 この映画を語るには3つのキーワードがあります。それはベッソン、ケイレブ、そしてワンコたち!
先ずは監督のリュック・ベッソン。『レオン』『グラン・ブルー』『フィフス・エレメント』と主に90年代に人気を博したフランスを代表する監督の1人。ただ、2000年代になるとヒット作に恵まれない時期が長くなってしまった、という印象でしたが、本作は久々ベッソンらしさが冴える娯楽映画になっています。孤独に生きる男がワンコたちを従え、ギャングと戦う!ちょっとマンガのような設定ですが、ドラマ、アクション、アートチックなバランスがとってもいいんです。「ベッソンにはもう騙されない」と思っているような方ほど、ぜひ観てほしい。「ベッソン、誰やねん」という方ならなおのこと!

 そしてDOGMANを演じるケイレブ・ランドリー・ジョーンズの演技力、役へのハマりっぷりが最高!彼は(無差別銃乱射事件を描いた)『ニトラム/NITRAM』(←必見!!)でカンヌ国際映画祭男優賞を受賞している実力派。10年前に来日した時に生ケイレブ君を見たのですが、その頃から誰の目から見ても独特なオーラを放っていました。ケイレブ君から感じる大胆だけどその実むちゃくちゃ繊細、という印象がDOGMANともぴったりで、スクリーンから伝わるその熱量に私、やられました!ケイレブ・ランドリー・ジョーンズにハズレなしです!

 少年の頃、演劇をしている時だけは自分の居場所を見つけられた彼は大人になり生活をするためにキャバレーのドラァッグ・クィーンになります。そこでアーティストとして開花する場面はまさにケイレブ劇場。エディット・ピアフ、マリリン・モンローなどなど(きっと母親が好きだった女性たち)を演じ、口パクで歌い上げる様はドラマティックで、彼がずっと抱えてきた痛みや母親への想いが伝わります。あの瞬間だけは孤独に生きていた彼が世界を掌握し、世界の中心で輝いているように見えるんです。もう泣いちゃう。

 そしてそんな彼を全力でサポートするのが保護犬という設定で登場する数々のワンコたち。車椅子生活のDOGMANの手となり足となりサポートし、彼が向ける愛に1000%応えるその健気さ、かしこさはワンコ好きの皆さんにおかれましてはその名演を拝むだけでもこの映画を観る価値ありです。心温まるシーンからアクションシーンまでワンコたち大活躍!!影で支えたドッグトレーナーさんたちも凄い!

 DOGMANが経験する人生の残酷さ、にも関わらずひたむきに生きるその姿。そして彼に忠誠を誓うワンコたちとその絆にはとにかく胸打たれますがそれはひとえに監督、キャスト、スタッフ、そしてワンコたちのチームワークの良さの賜物のようにも思えます。絶対観てワン!

By.M