『サヨナラの代わりに』

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 皆さんこんにちは、女住人Mです。今回は先日の東京国際映画祭で10年ぶりに来日、アカデミー賞に2度輝いているオスカー女優ヒラリー・スワンク主演の『サヨナラの代わりに』をご紹介します。
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 主人公は弁護士の夫エヴァン(ジョシュ・デュアメル)と順風満帆な生活をしていた35歳のケイト(ヒラリー・スワンク)。しかし、難病のALS(筋委縮症側索硬化症)と診断され、1年半後には車椅子生活を余儀なくされてしまいます。ある日彼女は夫の反対を押し切って、大学生のベック(エイミー・ロッサム)を介助人として採用します。ベックはガサツで家事も苦手だったのですが、ケイトを過度に病人扱いすることなく、対等に向き合ってくれた唯一の存在だったのです。
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ALSは原因不明の難病。症状に個人差はあるそうですが、診断された後の平均余命は2~5年と言われています。それ故、ケイトを演じ、プロデューサーとして最初から本作に関わってきたヒラリー・スワンクの並々ならぬ想いもとてもストレートに伝わる1本です。これまで「ボーイズ・ドント・クライ」では性同一性障害の主人公を、「ミリオンダラー・ベイビー」では過酷な運命を辿る女性ボクサーといった役で、圧巻の演技力をみせてきた彼女だけあって、本作の演技も"オスカー女優"にふさわしいことは言うまでもありません。でもそういった面がことさらに強調される映画ではなく、人が人と関わっていくことの大切さについて考えさせられ、かつ最後には心にぽっと温かい明かりが灯るような作品になっているのが本作の魅力。
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冒頭、ケイトは誰の目から見ても不自由のない、恵まれた生活を送る一人の女性として登場しますが、病で一変、メイクや着替えも誰かの手を借りなければならない、車椅子での生活となってしまいます。夫は変わらず優しく接してくれ、友達も気にかけてくれるものどこか腫れものに触れられるような距離感や自分自身、周りの目を感じて気丈に振る舞ってしまうことに心が疲れてくるのです。そんな時に出会ったのが、介助人としてやってきた大学生のベック。ミュージシャンという夢がありながらもなかなか前に踏み出せず、半ば自暴自棄になっているベックは洗練されたケイトとは全く異なるタイプでしたがそれ故、いつしか気兼ねなくなんでも話せる存在に。ベックを演じるのは「オペラ座の怪人」でヒロイン・クリスティーヌを演じたエミー・ロッサム。海外ドラマ「シェイムレス」の中でもはちゃめちゃ家族の長女を演じ、その中でも飾らない明け透けな演技がとても魅力的!彼女はこういう役が本当にハマります。
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 あまりにもタイプが違い過ぎる二人、出会った頃はすんなりとはいかないのですが、お互いが気持をさらけ出しているので二人の友情はどんどん深まっていきます。一方、夫のエヴァンは彼女とどう接して良いか迷いも生じ、ケイトにとってもベックといる時間の方が楽しみも多くなっていくのです。治療を兼ねたプールで知り合う老夫婦や自分の友達とは全くタイプも異なるベックの友達。体は不自由になったけれど、ベックとの出会いでこれまで知らなかった世界を知り、心は自由になっていきます。そしてベックがケイトに与えるだけでなく、ベックもケイトから、新しい世界を教わり、影響され、何よりも自分を初めて必要としてくれる存在であるケイトに出会ったことでどんどん変わっていくのです。そう、自分は自分でしか変われないけれどそのきっかけを与えてくるのは往々にして周りにいる誰かなんですよね。
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(本作を引き下げ10年ぶりに来日を果たしたヒラリー・スワンクさん。
数多くのオファーの中から本作を選んだのは友情と愛を描くパワフルな物語だったから、とヒラリーさん。スクリーンの中だけでなく、実際のヒラリーさんもパワフルかつエレガント!)

 ケイトとベックはこの出会いにより、自分を解放し、こうなりたかった自分を取り戻していきます。ケイトにとっては病の進行により、心の好転とは全く違う事実を受け入れる必要があるのですが、それでもベックと出会ったことで彼女が選ぶ生き方は、ベックなしでは得られなかったことに思えるのです。たった一人との出会いでも人生は一変するものですね・・・。
『サヨナラの代わりに』は11/7(土)からシネマイクスピアリにて公開です。

By.M
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