皆さん、Bonjour!女住人Mです。今回はご紹介するのは久しぶりのフランス映画、10/31(土)から公開の『エール!』です。
フランスの田舎町で酪農を営むベリエ一家。高校生のポーラ(ルアンヌ・エメラ)以外、父も母も弟も全員耳が聞こえません。でも"家族はひとつ"をモットーにオープンで明るく、仲良しな彼らですがある日、ポーラの歌の才能が見い出され開花!娘の才能を信じることが出来ない両親と夢に向かって進みたいと思う狭間でポーラの心は揺れ動きます。
本作は今年のフランス映画祭で(映画を観た一般のお客様が選んだ)観客賞を受賞、本国フランスでは4週連続No.1、12週連続トップ10入りをし、驚異的大ヒットを記録しています。つまり観た者の心をガシっと掴んで離さない"愛され系"映画ということですが、それは映画全体を包む明るさと素直さ、ストレートさがその理由なんじゃないかな、と思っています。この感じは同じくフランス映画祭で観客賞を受賞し大ヒットした「最強のふたり」と似ているかもしれません。おフランスということもあってか(先入観?!)パパさんとママさんは始終ラブラブだし、幼い弟は年の割にはちょっとおませさん、家族内の隠しごとは一切ない開けっ広げな関係がとにかく明るい。物事をズバズバ表現し過ぎるパパさんの手話をポーラがやんわりと通訳して、その場が険悪にならないよう丸く収めたり、そんな日常は本当に笑いが絶えません。でも仲良し家族でも、ポーラの自立、成長がちょっとした問題の火種になるのです。
ポーラには実はずば抜けた歌唱力があったのですが、彼女は小さい頃からずっと手話でもって家族の言葉を代弁していたので、おそらく大きな声で何かを伝えるということをあまりしていなかったのです。そんな彼女が気になっていた男の子がコーラスのクラスを取ったことを知り、自分も参加。そこでひょんなことから自分が歌える!しかもかなり歌える!ということに気付くのです。まだ何者でもない成長盛りの少女が自分に才能がある!と知ったら、その眠った能力が勢いよく外に現れるのは当然のこと。知らなかった世界を覗き見て、知らなかった自分を発見して、ポーラはどんどん輝いていきます。
それを伸ばそうと、音楽の先生は親元を離れ、国営の合唱団に入るべく試験を受けることを勧めるのですが、ベリエ家にとって、唯一耳が聞こえるポーラは、他者や社会との繋がりを持つための必要な存在だったこと、そして彼女の才能がどんなものかがどうしても理解してあげられない両親にとって、娘を信じることは大き過ぎるハードルとなるのです。
(タイトルの「エール!」はAir(仏語):曲、 Aile(仏語):翼、 Yell(英語):応援の意。)
ここではない場所へ旅立とうとする子供の背中を押してやること、それを信じてやることはどんな両親であってもその不安は変わらないとは思いますが、娘の才能が歌うことだったために余計にポーラの両親は苦悩するのです。でもそれは子を持つ親であれば誰でも共感出来る想いでしょうし、何かと決別をして大人になった私たちにとっても胸に刺さる過去の記憶です。
そして、誰しも一度はぶち当たる壁を明るさと素直さでもってストレートに描いた本作のメッセージはきっとダイレクトに皆さんの胸にも響くと思います。しかも本作ではそれがポーラのとても魅力的な歌声と共に届けられるのですから・・・・。
逃げるのではなく、旅立つ、そんなポーラの決意を是非スクリーンでご堪能ください♪
By.M
La Famille Bélier (C)2014-Jerico-Mars Films-France 2 Cinéma-Quarante 12 Films-VendÔme Production-Nexus Factory-Umedia