M(コジレ島の女住人): 2017年4月アーカイブ

『バーニング・オーシャン』

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 皆さん、こんにちは女住人Mです。
今回は「美女と野獣」と同日に初日を迎えたもう1本の作品、打って変って社会派&硬派な『バーニング・オーシャン』をご紹介いたします。
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 2010年に起きたメキシコ湾沖の石油掘削施設ディープウォーター・ホライズンでの大爆発事故。これにより3カ月にわたって大量の原油が海に流れ出ました。そして施設で働いていた11名もの命が奪われたこの惨事、実は世界最大級の"人災"だったのです。その事故の裏側を描くのが本作です。

実話の映画化ということで先ず目を見張るのはその臨場感。映画の冒頭は作業員たちが普通通りに家を出て、通常通りに業務に携わっているシーンが描かれます。でもディープウォーター・ホライズンは電気系統の故障が相次いでいる上に工期が遅れていて管理職のヴィドリン(ジョン・マルコヴィッチ)は安全点検を割愛してでもそれを取り戻そうと現場に無理難題を強い、一方施設主任のジミー(カート・ラッセル)は安全第一を謳いヴィドリンと衝突しています。
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(重傷を負いながらも部下を助ける主任ジミー、演じるはカートラッセル。
その姿で「バックドラフト」を思い出すあなたは、オーバー40!?)

既にこの施設がこの後、未曾有の惨事を引き起こすことを知っている我々は二人の言い争いに始まるその1つ1つのやり取りに不穏なサインを感じ取りながら映画を観ます。いつもと変わらない一日だったハズなのに、小さなミスや誤った判断がどんどん積み重なっていき、稲川淳二風に「いやだな~、いやな感じがするな~、怖いな~」と緊張感がどんどん迫ってきます。大爆発が起きると数十メートルの火柱が上がり、一瞬にして施設が地獄絵図。まるで自然が人間を罰しているかのように炎や黒煙が人間を襲うその迫力たるや・・・。本作が今年のアカデミー賞視覚効果賞、音響編集賞にノミネートされているのも納得です。
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起きた事故があまりにも大きすぎるので他人事に思えるかもしれませんが、でもその原因は前述した通り、人的なミス。安全管理、危機管理が何よりもの優先事項にあるにも関わらず、経営陣は工期が遅れることの金銭的損失の方にばかり目を向け、それに反発する者もいたけれどパワハラ上司の身勝手な判断で起こるべきして起きたこの事故。「ちょっとぐらい・・・」という判断は本当に危険で、我らの日常でも似たようなことは起きないとは言えません。
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 そして事故が起きたことで負傷し、施設内に足止めを食らった作業員たちを救助するべく立ち上がるのがマーク・ウォールバーグ演じる主人公エンジニアのマイクです。本作の監督ピーター・バーグとは(敵地で孤立無援になったシールド隊員たちの脱出劇を描いた)「ローン・サバイバー」に続き2作目のタッグで、この後もボストンマラソンでのテロ事件を描いた6/9(金)公開「パトリオット・デイ」と続きます。マーク・ウォールバーグ自身がザ・男気溢れるキャラなだけに映画の中盤以降、危険を顧みずに必死に同僚たちを救出するストーリーに胸熱!!現実世界のヒーローはスーパーパワーを持つ人でなく、どこにでもいる普通の人だったりするものですね。
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 ちょっとした油断は大きなトラブルに繋がる、現実で取り返しのつかないミスをしないためにもこの映画、必見です!

余談:大量に流出した原油、この事故の鎮静化に役立ったのが'オーシャン・セラピー・ソリューション'という装置。1989年に起きたアラスカ沖原油流出事故を機に、かねてから環境問題に興味をもっていたある男性が開発中の装置の権利を購入、多額の出資をし、陰ながら地球を救っていたという・・・その人の名はケビン・コスナー。

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『美女と野獣』その2

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 こんにちは、女住人Mです。今回ご紹介する映画はシネマイクスピアリのみならず、全国、いや全世界で2017年の最重要作品であると言って過言でないアレ、そう皆さんお待ちかね4/21(金)公開の『美女と野獣』をご紹介いたします。
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 言わずと知れた不朽の名作アニメ『美女と野獣』のディズニー渾身の実写化。あらすじ紹介も割愛出来るほど、知らない人はいない愛の物語。既に一足先に全米を始め各国で公開されていますが、世界中で大大大大ヒット中!!つまり既に作品の満足度は確約されている訳ですが、なぜそんなに受け入れられているか?を分析してみます。
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その1、<みんなが観たい『美女と野獣』が観られる!>
「マレフィセント」ほか、これまでもアニメーションとして誕生したディズニーの名作が実写化されることはありましたが、現代の世界観にアレンジしたり、新しい解釈を盛り込んだりと視点を変えるパターンが多かったのですが、本作ではほぼアニメ版を踏襲!キャラクターの存在を際立たせるためのプラス要素は若干あるもの、これだけ長年、世界中で愛されているコンテンツなのでいらぬ装飾は必要なし!ということで皆さんが「あのシーンが実写化されたらどうなるんだろう?」といった期待高まるワクワクシーンがもう完璧なまでに再現されていて、うっとり指数200%なのです。そう、あなたが観たいものが観られる映画です!
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その2、<キャスティングが素晴らしい>
既に皆さん感じてらっしゃると思いますが、ベルをエマ・ワトソンというのはこれ以上ないキャスティング。演技力、歌唱力も素晴らしく、ディズニーのヒロインにふさわしい清潔感も兼ね備え、芯のある主人公にもぴったり!野獣役には人気海外ドラマ「ダウントン・アビー」シリーズのマシューでお馴染、ダン・スティーヴンス。ダンが演じる野獣は獣の中に人間が囚われている、その苦しみ、苛立ち、悲しみが彼の演技でより強調され、野獣の抱える"孤独"が際立っています。また野獣が乱暴な振る舞いをしたとしても品の良さが隠せない、というのはダンが持っている天性の資質が活かされているかと。
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さらに主要キャストのみならず、今回は特に「俺様、こんなにハンサムなのになんでベルは結婚してくれない?」とうぬぼれたっぷり自画自賛型ガストンを演じるルーク・エヴァンス(以下、ルクエヴァ)とそんな彼を崇拝するお調子者ル・フウを演じるジョシュ・ギャッド(「アナと雪の女王」でオラフの声を担当)のコンビが最高!前半ではその俺様っぷりでガストンは物語のコメディリリーフ的な役割も担うのですが、ベルが野獣に心を許していく姿に直面し、どんどん怒り、憎しみに囚われていき、まさに彼こそが獣を心に宿してしまう・・・その様をルクエヴァが見事に演じているのもポイント!また、そんな変貌していくガストンに恐れを感じることを機に変化するル・フウの感情も描かれ、そういった細部に至るまでの作り込みが随所にあって物語により厚みが加わっているのです。
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その3、<やっぱりメンケン(作曲)&アシュマン(作詞)の音楽がパナイ!>
『美女と野獣』と言えば同名の主題歌や「朝の風景」、「ひとりぼっちの晩餐会」ですが、本作でもアニメ版の名曲全てのナンバーが使われている上に、1曲、1曲が持つ曲の強さを改めて感じることが出来ます。私が今回、実写版を観た時に一番に感じたのは実はこの曲の力でした。「やっぱ、凄い!」と。しかも今回加わった3曲の新曲も物語により深みを持たせるために用意されたものなので、そちらもお楽しみに!
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その4、<ディズニーの本気、吹替キャストも素晴らしい>
吹替版のキャストには主人公のベル役に昆夏美、野獣役に山崎育三郎を始め、村井國夫、岩崎宏美、島田歌穂ほか日本ミュージカル界の一線スターが勢ぞろい!このまま舞台版『美女と野獣』が上演出来そうな豪華キャスティングになりました。それ故に、今回吹替版は"プレミアム吹替版"と名付けられているんです。これは字幕版、プレミアム吹替版と両バージョン観て、おかわりするしかありません!(プレミアム吹替版キャスト発表会のレポートは こちら

と、『美女と野獣』の魅力はまだまだ語れますが、これ以上は野暮なのであとはもう皆さんの目でご堪能下さい!そしてシネマイクスピアリ恒例のエントランスのオリジナル装飾、4~5月のテーマはもちろん『美女と野獣』です。壁一面の大型幕やカウンター上のキャラクターたちと一緒に思い出の写真撮影を是非!ほかにもイクスピアリ内2F B'ウェイ回廊では、『美女と野獣』キャラクターポスターを一挙展示中ですよ♪
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『ムーンライト』

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 皆さんこんにちは、女住人Mです。今回ご紹介する映画は本年度のアカデミー賞作品賞・脚色賞・助演男優賞受賞作、3/31公開『ムーンライト』です。そんな冠がありながらも本作をまだご覧になっていない方もいらっしゃると思います。私の周りでも「重たい内容っぽいな~」「社会派っぽいやつでしょう?」と言った印象で敬遠している声を聞きます。でも私がこの映画を観終わって最初に口に出た感想は「いや~ん、ロマンチックや~ん。(うっとり)」でした。
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 マイアミの危険なエリアに生まれたシャロンが物語の主人公。彼の少年時代(アレックス・ヒバート)、思春期(アシュトン・サンダース)、成人(トレヴァンテ・ローズ)になるまでを3部構成で描き、3人の役者がそれぞれのシャロンを演じます。

リトルとあだ名をつけられた少年時代のシャロンはその名の通り、ちびっこ、内気な性格で学校でもいじめにあっています。家に帰っても麻薬に溺れている母親(ナオミ・ハリス)が知らない男の人を家にあげていて、どこにも居場所がありません。そんな彼がある時、ドラッグの売人ファン(マハーシャラ・アリ)と出会い、彼が唯一の心開ける存在になります。父親のいないシャロンにとってはまさに父親代わり、シャロンはずっと一人ぼっちの辛い現実を過ごしていましたが、ファンと出会い心の拠り所を得ます。
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そして学校でも幼馴染のケヴィンが唯一そういう存在として彼の側にいてくれるようになります。でもシャロンの生活は好転することはなく、思春期になっても「お前、オカマみたいだな」と罵られイジメは続き、生き辛い現実に変化はあまりありません。
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ある夜、シャロンはケヴィンと浜辺で一緒に過ごしたことでお互いの存在が特別なものになりますが、悲劇的な出来事が起きたことを機に、二人の関係性も人生も行き違いそれ以降、離ればなれに・・・。時は流れ大人になったシャロンはリトルと呼ばれていた面影がないくらいに屈強な成人へと変貌し、ファンと同じドラッグの売人という人生を歩んでいた、そんなある日、シャロンの元にかかってきたケヴィン(アンドレ・ホーランド)からの1本の電話がまた彼の人生を変えていきます。

 本作の登場人物はほぼ黒人、イジメ、貧困、LGBTといった様々なマイノリティの苦しみを描いているので確かに冒頭触れたようにある特定の人のそれを描いた特殊なものと思われるかもしれません。でもこの映画がフォーカスするのは共同体の中に属しているシャロンの疎外感です。誰かが誰かを差別すること、孤独を感じることはどんな境遇にあっても経験し得ることです。
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ファンはシャロンに「自分の人生は周りに決めさせるな」と教えますが、その人を何かの枠にはめたがるのは他人だし、他人は誰かをカテゴライズすることで差別をするから、自分で決めろと言ったのかもしれません。黒人であること、男性であること、そういったことで社会が個人に求めること、枠にはめたがることはとても多く、それは人種、性別が変わっても同じです。なので自分は一人であることを感じている(感じたことがある)人にとってはこの映画がとても私的な物語となっていくのです。
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(シャロンを大切に想う人は誰もが料理を彼に振る舞ったり、食べさせます。映画における料理シーンは登場人物たちの関係性や感情を物語る大切なファクターです)

 そして孤独を感じていても誰かたった一人でも心を解放出来る人、無条件に気持ちを渡せる人がいれば人は生きることが出来ます。それがシャロンにとってのファンでありケヴィンだったのです。ファンとケヴィンの不在によって心を閉ざして大人になったシャロンは憧れのファンのような生き方と風貌をなぞり周りを寄せ付けません。でも疎遠になっていたケヴィンからの1本の電話で、彼の中の何かがまた呼吸をし始めるのです。
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ダイナーのシェフになったケヴィンは「お前に似た人をこの店で見かけて思い出したんだ」と昔と変わらない距離でシャロンを迎えます。子供の頃と全く違う風貌になったシャロンですが、そのうつむき加減の眼差しは変わりません。言えなかった言葉はたくさんあっても二人が交わす目線のやり取りは会えなかった時間を埋め、雄弁に想いを語るのです。

そしてケヴィンはシャロンに食べさせようと料理を振る舞います。私は人生でこんなに官能的な料理を見たことがありませんでした。それが私のこの映画を観終わった時の感想「いや~ん、ロマンチックや~ん」に繋がっていくのです。大切な人へ料理を振る舞う行為がこれまで観たどんなラブシーンよりエロかった・・・。
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小さい頃から自分の殻に閉じこもって生きていた少年がたった一人の人と出会うことで自分が自分であることを許していく、これはまさに"愛"の物語なのです。

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『レゴ®バットマン ザ・ムービー』

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 皆さんこんにちは、女住人Mです。
今回ご紹介する映画は子供も大人も楽しめる4/1(土)公開『レゴ®バットマン ザ・ムービー』です。
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 レゴブロックで作られたゴッサムシティの平和を守る人気者バットマン。でもその実態は寂しんぼうの癖に強がりで面倒臭いヒーロー。ひょんなことから孤児の少年ディックを引き取り、ロビンと名付けて行動を共にすることに・・・ロビンのせいでペースを乱されるバットマンだったのですが、そんな時にジョーカーを始め、極悪人たちがゴッサムシティを襲ってきたのです。果たしてバットマンはゴッサムシティを、世界を救えるのでしょうか?
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本作は2014年に公開された「LEGO®ムービー」のスピンオフ映画。実は「LEGO®ムービー」はLEGOブロックでの楽しみ方の真髄、ひいては想像することの素晴らしさを謳った超~名作!本作もそれに負けず素晴らしい~!!出来栄えになっています。

先ず冒頭からギャグ連発で、スタジオロゴをイジリ倒すところからスタート。街の平和を守るヒーローとしてのバットマンですがおうちに帰るとひとりぼっち。帰ったよ~という声もこだまし、ご飯はレンジでチンしてお一人さまディナー、特大ホームシアターで一人ツッコミを入れながらの映画鑑賞(しかも観ている映画のラインナップがまたツボ)、もうとにかく一人、一人、ぼっち、ぼっち。

優れた才能やパワーを持つ人は孤独なのは常ですが、バットマンはそれに加えトラウマを抱えているから、ぼっちな自分を解放出来ない。それは皆さんもご存知の通り、子供の頃に両親を亡くしていること。大切な人を亡くした傷を抱えるバットマンは何をするにも一人で行動、だってまた大切な誰かを失うなんて思いを経験したくないから・・・それなら親しい者は遠ざければいい!ぼっちでいるんだ!そんな拗れたマインドをバットマンがどうやって克服していくか、というのが本作のテーマの1つにもなっています。
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いえ、本編自体はそんなマジメトーンじゃないんです。むしろギャグと小ネタのオンパレードでヘロヘロになるぐらいのコメディ映画。でも根底にテーマがきっちりあるので、始終笑いながらもそれが浮き彫りになった時に「なんだ、いい映画じゃないか、ほろり。」となって、実はとっても深い映画に仕上がっているんです!
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悪役のジョーカーもバットマンに相手にして貰えないことから傷つき、こっちを向いてほしいから復讐をする、というこれまたぼっち気質。つまり二人は似た者同士。これまでクリストファー・ノーラン版「バットマン」シリーズでもシリアスに描かれた、正義と悪の関係性についても本作ではとてもストレートに笑いの中で表現していて、テクニックは上手かもしれません。
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 つまり、本作は一見するとLEGOで遊ぶことが好きなお子様向け映画なんですが、実はアメコミやバットマン、スーパーマンといったDCコミックスが大好きな大人が観ても、いや大人だからこそグっとくるテーマがてんこ盛りなんです。おまけにジョーカーがゴッサムシティを襲う時の仲間はあんな映画やこんな映画の悪いヤツがアッセンブルしているので映画好きな人はよりテンションが上がるハズ。

 シネマイクスピアリでは吹替版で上映中ですが、ギャグの情報量もガッツリなので吹替の方が観やすいのと、声優界の神・山ちゃんこと山寺宏一さんのバットマンの吹替がまた素晴らしい上に、ロビン役に抜擢された小島よしおさんがいい仕事しています!と言う訳でアメコミ映画をくまなくチェックしている方は見逃さないで下さいね!

By.M
©2017 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC DUNE ENTERTAINMENT LLC.

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