ウラシネマイクスピアリブログ

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『女王陛下のお気に入り』

 来る2/25(日本時間)に第91回アカデミー賞の発表となります。
今回はオスカー本命の呼び声高い1本、作品・監督・主演&助演女優賞と最多9部門10ノミネート、2/15(金)公開『女王陛下のお気に入り』をご紹介いたします。

 時は18世紀初頭。フランスと交戦中のイングランドはアン女王(オリヴィア・コールマン)が統治しつつもその実、彼女の幼馴染で女官長であるレディ・サラ(レイチェル・ワイズ)が権力を握っていました。そんな中、サラの従妹でもあるアビゲイル(エマ・ストーン)が宮廷の召使として雇われます。サラに気に入られ侍女になったアビゲイルでしたがここからアン女王の“お気に入り”No.1の座をかけてのバトルが始まります。

 こういった王室ものが描かれる時、それは重厚なドラマだったり、ウェルメイドな物語が多いのですが、本作はちょっと違います。何せ、女王の寵愛を巡り女たちの間で繰り広げられるくんずほぐれつ、丁々発止の戦いが勃発するのですから。

 イギリスはエリザベス1世、ヴィクトリア女王といった女王の代に栄えるというセオリーがありますが、アン女王はその中では恵まれなかった一人として歴史に名が残っています。彼女自身、気まぐれな上に政治的野心はあまりなかったというか興味がなかったようで、この映画の中でも食べることには夢中だけど、いざ政治の話になると「そうだっけ?」といった感じで女官長のレディ・サラが影の権力者のごとく決めていく、そんなシーンが描かれます。

 一方で彼女は体が弱かったこともあり子供が出来ても流産や死産が多く(それも17回も・・・)子供に恵まれなかったという、悲しい経験も・・・。様々なプレッシャーの中で精神的に闇と病みを抱えていたアン女王。普通ならそこで苦悩する女性の姿が描かれる・・・という流れですが、本作ではそれをコメディ要素たっぷりに描いてきます。

まるで大きな子供のように駄々をこねたり、あたり散らかしたりする彼女の行動は笑っちゃう程ですが、孤独な彼女が唯一自らを託しているのがレディ・サラ。そんな彼女も自身の夫の出世込みで女王に取り入る策士なのですが、そこに現れたのがアビゲイルでした。当初は下っ端召使だった彼女ですが若さとガッツ、サラ以上の野心でもって、どんなイジメにも屈することなく、利用出来るものは何でも利用し、強かに上りつめていきます。

そして女王とサラの関係が双方向だったうちは良かったのですが、これにアビゲイルが加わり三つ巴となった時、パワーバランスをめぐる醜い争いが始まるのです。しかもアビゲイルがアン女王とサラとの間のある秘密を知ったことを機にこのトライアングルは益々ドロドロとした方向に突き進むのでした。

それぞれが欲や孤独に囚われ、時に悲しい展開にもなったりするのですが、各々自分の利益のために甘んじて屈辱を受けたり、相手の思う通りにさせたりとその人間模様は人のエグイ部分が露呈し、天晴れだよ!というレベルにまで達します。

 一見お上品な宮廷を舞台にしながらも型に全くはまらない世界観を作りだしたのはヨラゴス・ランティモス監督(『ロブスター』、『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』ほか)。これからも、風変わりで毒があるオリジナリティ溢れる映画を作ってくれると思いますので以後、お見知りおきを~。

 そして、『メリー・ポピンズ リターンズ』でも素晴らしかったサンディ・パウエル先生が本作でも衣装デザインを担当!今回もそのお仕事っぷり、荒ぶってます!

By.M