ウラシネマイクスピアリブログ

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『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』

今年に入って英国王室もの映画が続けて公開されていましたが、今回は特に主演二人の演技合戦に胸震えること間違いなし!3/15(金)公開『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』をご紹介いたします。

 生後すぐにスコットランド女王となり、16歳でフランス王妃となったメアリー・スチュアート(シアーシャ・ローナン)は18歳で未亡人となりスコットランドに帰国し、王位に戻ります。一方、イングランドではエリザベス1世(マーゴット・ロビー)が25歳で即位。イングランドの王位継承権を持つメアリーの帰国の知らせに、エリザベスには早く結婚し、世継ぎを得るようプレッシャーをかけられます。両者の間で緊張が走る中、それぞれの宮廷でも内部抗争が生じ、ふたりの女王の地位も揺らいでいきます。

 本作はスコットランド女王VSイングランド女王という二人の女王、しかもタイプの異なる女性のバトルを描きつつも、彼女たちが時代に翻弄される様をドラマティックにかつ切なく描きます。と、同時に16世紀ヨーロッパという舞台設定にありながらも、彼女たちが現代にも通ずる価値観や境遇に悩まされたりすることから、感情移入しやすい作品にもなっています。

 先ずはメアリー・スチュアート。彼女は“美貌の女王”と呼ばれていたほど美しく、恋愛、結婚、出産といわゆる王道を経験していく女性。血筋もよく、5歳でフランスに渡り、華やかなフランス王宮で教養を深め、故に語学も堪能。周りにたくさんの侍女を従え、社交的で明るく高潔。学校にいたらひときわ目立つ人気者なイケイケ女子という感じでしょうか?(表現が古い・・・)

一方のエリザベスは3歳で母親が処刑され、庶子と見なされ、若い頃から苦労を重ねたのちにエリザベス1世として即位しています。29歳で天然痘を患ってからは髪が抜け落ち肌も荒れてしまったため、白塗りメイク、かつらを着用し華美に着飾り、外見的コンプレックスを抱えていた女性。自分より若く、美しく、明るく聡明なメアリーがスコットランド界隈でブイブイいわせている中、きっと気苦労が多かったエリザベスはうつむきながらイングランド界隈で夕日を見つめて唇を噛みしめ涙していたハズです。(私の妄想です)

しかも、メアリーは政略結婚をしてまでも子供を宿し、王権維持のため手を尽くす。イングランドの王位継承権を持つメアリーが着々と地固めしていく中でエリザベスは結婚し子供を産むようにプレッシャーをかけまくられる日々。コンプレックスを抱え、ライバルの女王と比較され、やれ結婚、やれお世取りじゃ~と言われる境遇がどんなに彼女を苦しめたか、妙齢女性であれば「エリザベス、わかるわ~。一杯飲む?」と誘いたくなることと思います。

そんな中で彼女が王権維持のために取った手段は生涯独身を貫き、“ヴァージンクィーン”として国の統治を行ったこと。そうなるとメアリーの方が順風満帆に思えますが、宮廷の男たちはメアリーに女王という称号は与えるもの、「実際の政治は俺たちのもの~女は邪魔だ~」と、彼女を貶める陰謀の渦に巻き込んでいくのでした・・・

このように全くもって対照的な二人の女王ですが、“国”のためにという志は同じだった訳で、そう考えると実は互いを一番理解しあえる唯一の存在だったと思うのです。それを象徴するかのようなシーンが本作の終盤では描かれます。史実ではなかったとされるのですが、敵対していた二人の女王が唯一、心の鎧を捨て奇跡的に互いを思い合った瞬間。それはとても美しく、そして実際にはなし得なかったことだけに余計に切なく胸を打つのでした。

メアリーを演じるのは次世代のメリル・ストリープことシアーシャ・ローナン。その演技や佇まいが本当に素晴らしく、本作はかなり“シアーシャ劇場”なのですが、負けじと渡り合う、エリザベスを演じるマーゴット・ロビーが凄い勢いで存在感を発揮し、最後はかっさらっていきます。この二人の配役がまたバッチリなのでその演技合戦を観ているだけでもヒリヒリすると思います。

By.M