ウラシネマイクスピアリブログ

映画を愛するシネマイクスピアリの宣伝担当者が
今後の上映作品を
ウラからナナメから眺めてそっと語るオフィシャルブログ

『アオラレ』

 ワイドショーでもよく見かけるようになった“あおり運転”問題。今回ご紹介する作品は「発端はささいなトラブルだったのに」と嘆いても遅い!?5/28(金)公開『アオラレ』です。

 主人公は夫と離婚したばかりのレイチェル(カレン・ピストリアス)。生活するのがやっとの彼女、今朝も寝坊し慌てて息子カイル(ガブリエル・ベイトマン)をオンボロの車で学校に送り、自身も職場に向かいます。が、高速の大渋滞に捕まり、遅刻確定。車中の電話で仕事を解雇されてしまいます。苛立つレイチェルは青信号になっても発車しない前の車に乱暴にクラクションを鳴らし追い越すとその車のドライバー(ラッセル・クロウ)から「運転マナーがなってない」と謝罪を求められ・・・。それを拒絶しカイルを学校に届けるも、彼女はそこからとんでもない展開に巻き込まれていきます。

 以前から“あおり運転”は問題になってはいたと思うのですが、ストレス社会になってますます露呈してきている昨今。この映画でもラッセル・クロウ扮するドライバーの男は映画の冒頭から人生のどん底にいる人間として描かれています。全てを失くし自暴自棄になった彼にもはや他人を思いやる感情はひとかけらもなく、むしろもう怖いものなしで制御不能な状況。そんな彼も最初は「考え事してたんだ」とレイチェルに軽く謝罪したのですが彼女がそれを聞かなかったことで完全にスイッチオン!

レイチェルも「ちょっと過剰に反応し過ぎたわ。朝から嫌なこと続きなの。」と言ってみればよかったのですが、遅刻するわ、仕事切られるわ、離婚したばかりだわで彼女にも他人を思う余裕はナッシング。売られた喧嘩は買ってしまい、火に油を注ぐ状況に悪化してしまうのです。

つまり“あおり運転”をしてしまう=アンガーマネージメントがうまく出来ないタイプの人との遭遇にプラス、ストレス過多な社会により心に余裕がなくなった人たち同士がトラブってしまったことでどんどん状況がエスカレートしていく、というのがこの映画。

なので「自分は自制出来る」と思っている人でもいつ何時、思わぬストレスから自分を見失うかもしれませんし、こっちに非がなかったとしても、出会った相手が悪かった・・・というもらい事故なケースもあるでしょうから、このトラブルは全くもって他人事ではありません。

 そしてこの男、レイチェルへの復讐としてあおり運転をしてきただけでは済まなかった・・・何せ全てを失くしているこの男は社会全体を恨んでいるので、怒りが全方向に向けられて飛び散っていくのです。その牙はレイチェルを助けようとした通りすがりの人にまで・・・。ひぃぃーーー。

 日常には見えない“ある一線”というのが存在しますが、それを越えると越えないでは大きな違いがあり、越えたら最後とんでもない結果になる、というのは現実にあることです。ちょっとした心の余裕の集合体は多くのことを円滑に進める道しるべ。ストレスはなるべく溜めずに気持ちは解放していきたいものですね。

 この映画に出てくる大人たちはルーズな一面が垣間見られ、それが引き金になって不幸が舞い込んだという感も否めませんが、レイチェルの息子カイルが一番大人だったことに明るい希望を感じました・笑

By,M