『ストレンジ・ワールド もうひとつの世界』
来年は創立100周年を迎えるディズニー最新作映画が初日を迎えました。今回は11/23(水・祝)公開『ストレンジ・ワールド もうひとつの世界』をご紹介します。
若い頃に行方不明になった伝説の冒険家イェーガー・クレイドを父に持つサーチャー。父へのコンプレックスから冒険を嫌い、息子イーサンと妻と共にアヴァロニアという国で農夫として生活をしていた。彼らが育てるのは国のエネルギー源の植物“パンド”。しかし、ある日“パンド”が絶滅の危機となり、サーチャー一家は地底に広がる“もうひとつの世界”へと足を踏み入れることになります。
導入は冒険家の父イェガーと息子サーチャーの物語で始まります。父は危険を顧みない行動派、一方息子は植物を愛し平穏を好むという真逆な性格。でも父は自分のような生き方、男らしさを息子に強要してしまいます。父イェーガーは冒険を求めた末に消息不明になりますが、息子サーチャーはその冒険に突き進まなかったことで生活燃料となる植物(=パンド)を発見し、今は家庭をもって平穏に暮らしています。
父となったサーチャーは息子イーサンにも自分と同じような価値観を求めますが息子は穏やかな父の生き方よりも冒険に憧れているからこの親子間でもすれ違いがあるという・・・つまり三世代に渡っての葛藤が描かれるのです。と、ここまでは普遍的なテーマです。ついつい自分の価値観を子供にも押し付けてしまったり、親の求める理想、自分がなりたい理想、その狭間で思い悩むというのはいつの時代でも語られていることですもんね。
でもこの映画で語られるテーマは当然のようにそれだけじゃありません。そもそも国の燃料であるパンドが絶滅の危機にあることがわかり、原因究明のためパンドの根が繋がっている地下のふしぎワールドを冒険するのが大枠の話ですが、物語が進むにつれこの世界にはある秘密が隠されていたことがわかってくるのです。そしてその秘密こそがこの映画の裏テーマだったりします。地下のストレンジ・ワールドが独創的だし、カラフルで形状も様々な植物?!生き物?!たちがたくさん登場するからそんな中での冒険譚だけでもワクワクなのですが、大人が観ると特に「あれ?これって」とその匂わせに気付くと思います。
そしてお察しの通り、サーチャーたちが住むアヴァロニアは我々の住む地球と合わせ鏡です。私たちが住むこの世界も資源の枯渇や異常気象とたくさんの問題を抱えていますが、便利な生活を捨てられない我々。声高に「SDGs」と謳ってみてはいるもの、なんだかポージングだけで終わっていることって世の中たくさんありますよね。そんな私たちの愚かな行いをファンタジーとアドベンチャーの物語で立ち止まらせてくれるのが本作です。
でもこれだけ様々な混乱が起きている世の中なのでそれを変えるというのは正直困難です。そうであっても見方をちょっと変えるだけでも突破口はあるよ、というヒントもこの映画には隠されています。
人はついつい自分を中心に物事を考えがちだし、自分の世界だけが全てと思ってしまうけど、世界は広いし、考え方は一つだけじゃないんですよね。そんな当たり前のことを気付くこと、そして変わっていくことって大事だな~と、サーチャーたちのストレンジ・ワールドでの冒険が終わる時、感じ取ってもらえるんじゃないか、と思います。
By.M