『ドリーム・ホース』
片田舎の小さなコミュニティ、みんなの夢が大きな希望になっていく・・・今回ご紹介する作品も新年の1本目にうってつけ、1/6(金)公開『ドリーム・ホース』です。
舞台はイギリス・ウェールズの小さな片田舎。夫と二人暮らし、昼夜のパート勤めと親の介護に明け暮れているジャン(トニ・コレット)は変化のない日常にうんざり。そんなある日、共同馬主の話を聞いた彼女は村の人たちを誘って競走馬を育てることを思いつく。2年間毎週10ポンド(1600円前後)ずつ出し合って共同馬主になった彼らの馬は“ドリームアライアンス(夢の同盟)”と名付けられ、奇跡的にレースを勝ち進んでいく・・・
この映画の主人公は平凡でなんの代わり映えのない日々に悶々としていたジャン。年上の旦那は毎日TVばかり見て空返事。昔はもっと旦那にも生活にもハリとトキメキがあったのに、いつからこんな人生を送っているの、私・・・という心の声が駄々洩れているジャンに「わかる、わかる」と共感する方も多いハズ。そんな生活を変えようと思い立ち、彼女が選んだのは共同馬主への道でした。
とは言え、馬を買うことも飼うことも簡単なことではありません。カツカツの生活を送っているジャンが貯金をはたいたところでどうにもならないから、村の人に声をかけます。集まったのは過去に競走馬への投資に失敗した経験のあるハワード(ダミアン・ルイス)、元炭鉱夫で飲むのが大好きカービー、年金暮らしでチョコレートをドカ食いするのが日常の楽しみというモーリーンほか、パッとしない人生にため息をつくような人たちばかり。だからドリームアライアンスに“ホウィル”(ウェールズ語で「胸の高鳴り」)を求めて団結します。
ドリームアライアンスは思わぬ活躍でレースを好調に勝ち進んでいくのですが、その途中、共同馬主たちの意見を左右するいくつかのトラブルも発生します。みんなそれぞれが問題を抱えているし、お金儲け出来るかも?!となると色めきだって調子にのったり、はたまた喧嘩に発展、というピンチもあるのですが「金儲けじゃない、私たち“胸の高鳴り”がほしかったんじゃん!」と初心に戻ることで決裂しそうな局面も乗り越えるところはグっときます。
そう、この話がお金持ちの成功譚ならここまで胸熱く出来なかったと思うんです。あくまでも庶民の面々が、今の生活を変えたい、ハリが、トキメキがほしい!そんなちょっとした夢を抱いた様を描くところがまたいいんですよね。だからこそ、観ているこちらも、気付けば彼らと心を同じくしてドリームアライアンスの活躍に手汗握り、前のめりになってしまうんだと思います。しかもこの映画は実話を元にしていますから。
ウェールズは昔、炭鉱の町として栄えた地でしたが、サッチャー政権下の1980年代に炭鉱が全て閉じられ多くの住民が失業者になりました。それ以降、人口は減り、そこで時が止まったような寂れた村がこの映画の舞台。そんな背景もあるからドリームアライアンスが大きなレースに出た時に村の人たちまでもが歓喜する様もひとしお。ドリームアライアンスの活躍は共同馬主たちだけでなく村人全員の希望の星になっていくのでした。
年末の有馬記念で負けた方はもちろん、変化のない日常に悩んでいる方こそこの映画を観て“ホウィル”を取り戻してほしい!だってどんなことでもワクワクするのって大事だから~♪
PS、
HAPPYなエンドロールもお見逃しなく。
By,M
(C)2020 DREAM HORSE FILMS LIMITED AND CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION