『劇映画 孤独のグルメ』
今回ご紹介する作品は小腹をちょっと満たしてから観てください的1/10(金)公開『劇映画 孤独のグルメ』です。
オリジナルは説明不要の人気TVドラマ、主演の松重豊扮する井之頭五郎が商談で赴く土地の飲食店で一人食事に向き合い、食す。そう一人のおじさんがただ飯を食うだけのTV番組が約13年も続く長寿番組となり、まさかの劇映画として登場です。しかも松重さん、監督と脚本も自らが担当し先導役となりこのプロジェクトに全力投球!映画がコケたら役を降板するのも持さないとおっしゃっていましたが、無事大ヒットスタートとなりました。
今回の依頼はパリに住むクライアントからの「子供の頃に日本で食した想い出のスープを再現してほしい」というもの。少ない手がかりを元に五郎がフランス、長崎、韓国と大移動。さながらロードムービーのようなスタイルでスープを求める旅に出ます。
TVシリーズはながら見するのにも丁度よく、見る側の気負いも求められることなく、でも美味しそうな料理(しかも実店舗のメニュー)を登場させ好奇心を煽り、貪欲に食べる一人の男を映す。あの番組を週末見ることで胃袋を刺激されつつも心は満たされ、その週の疲れを癒しているという方も多いのではないでしょうか?
“孤独のグルメ”ファンにとって映画化されることが望みだったかさて置き、いやむしろ「大丈夫だろうか」と思った方もいたかもしれませんが、その心配は杞憂に過ぎない、“孤独のグルメ”に深く関わってきた松重さんだからこそ作ることが出来た作品が誕生しました。
舞台が国内を飛び越えたことで劇映画に相応しく予想にもしない珍道中になります。でも五郎はいつも通りの佇まい。トラブルにも身をまるっと委ね、「ままよ」と次の選択を選ぶ。どんなにスケールが大きくなっても五郎は五郎のまま。でも人との関わり方はディープなんです。生きていく上で欠かせない“食”ですもの。それがただ体に取り入れられることで終わらない、そこに記憶や縁を結び付ける魅惑の力が備わっているからこそ、そして“食”に愚直に向き合っている五郎だからこそ本作の中での人や食との繋がりは不思議な出会いを引き寄せます。この広がりは劇映画だからこそ出し得た味わいでしょう。
そして劇中、有名なグルメ映画のオマージュが差し込まれていたり、この企画だからこそ集った役者陣の顔ぶれを見るにつけ、これは「孤独のグルメ」の集大成的作品という立ち位置にあるだけでなく、松重豊の役者人生としての集大成の1つのようにも感じます。だってもともと映画監督を夢見ていた松重さんが、舞台・映画俳優となり、その後バイプレイヤーとして活躍し、主演ドラマの映画化で奇しくも映画監督になるんですもの。主題歌を若き頃、それぞれの夢を抱き、同じ中華屋でバイトをしていた甲本ヒロトがボーカルを務めるザ・クロマニヨンズが担当しているのもエモ過ぎやしませんか。(しかもその楽曲「空腹と俺」も最高!)
継続は力なり。井之頭五郎という役に真っすぐに向き合った役者がその人でしか出来ないやり方で完成させたこの映画は心のこもったご飯を食べた時に得る口(幸)福感をももたらしてくれるとびっきりの一品です♪
By.M
(C)2025「劇映画 孤独のグルメ」製作委員会