皆さんこんにちは、女住人Mです。GW目前で新作映画が続々公開される中、今回は本年度アカデミー賞主要6部門ノミネート、作品賞・脚本賞をW受賞した4/15(土)公開『スポットライト/世紀のスクープ』をご紹介いたします。
ボストン・グローブに新任編集局長バロン(リーヴ・シュレイバー)が就任、地元のカトリック神父ゲーガンが児童に性的虐待を加えた事件に興味を持ち、特集記事欄<スポットライト>のチームにこの取材を命じるところから物語は動き出します。
担当する記者たち4名は事件に関わった弁護士、被害者たち一人一人に地道に取材を重ね、この事件がゲーガン神父だけの犯罪にとどまっておらず、しかも教会もその事実を知っておきながら長年に渡り隠ぺい工作していた可能性があることを突き止めます。
(記者を演じた役者陣の見事なアンサンブルも見所!)
何とも胸くその悪い事件です。
映画の中で実際に起きた事件を克明に描写するシーンはありませんが、子供の頃に被害に遇い、今は大人になった被害者たちがある者は怒り、ある者はその癒えぬ傷を抱え涙ながらに記者に告白します。もう胸が締め付けられるばかりです。
子供たちの信仰心と社会的に弱い立場であることを利用しての犯罪のため、この事件のたちの悪さはより際立ちます。
<スポットライト>の記者たちも取材を進めるうちに事件がまさか自分たちのこんな近くで起きていることに、その数の多さに驚きます。一方でこの事件が明るみになった時、信仰が生きる支えになっている信者たちの信仰心までも揺るがしかねないことに、どう責任を持てばよいのか戸惑うシーンも描かれます。
「ボストン・グローブ」の定期購読者も53%がカトリック信者であることもリスクの1つとなります。でもだからと言ってこのスキャンダルに蓋をすべきではないと良心と正義に基づき真実を伝えようとします。
そして取材を進めていく内に、これまで充分に記事にしていなかったこと、過去にもっと早く記事にすることが出来たタイミングがあったことを知り、後悔し、それ故この事件をうやむやには出来ない、と決意を新たにするのです。
我らが何かを決断する時でも、ここまでのセンセーショナルな事件が絡んでいなくても、それは本当に正しいことなのか、こっちを選んだ方がうやむやに出来るんじゃないか、そう考える局面は少なからずあると思います。
そう言った点では本作はジャーナリズムを描く映画でありながら、何をもって仕事を全うするか、というリーマン魂を震えさせる映画としての魅力も持っています。見かけは派手に思える業務でもそれを支える一つ一つの仕事は往々にして地味で地道なものです。私はこの映画を観て、胸くそ悪いと思ったと同時に記者たちの真摯な姿に胸アツにもなりました。
本作の監督・脚本はトム・マッカーシー。俳優としても活躍しながら、過去には「カールじいさんの空飛ぶ家」の脚本も手がけたりと、その手腕も高く評価されています。本作の脚本も無駄がなく、ストレート、加えて緊張感たっぷりな演出で彼のセンスが光ります。最後に訪れる切れ味抜群なエンディング、そのカタルシスとズッシリ胸に響く余韻、是非スクリーンでご堪能ください。
★おまけ★
本作の公開を記念して記者の一人サーシャを演じ本年度アカデミー賞助演女優賞にもノミネートされたレイチェル・マクアダムスさんが初来日!日本外国特派員協会での記者会見の模様をお届けします。
本作の役作りのために実在のモデル・サーシャさんと何度もやり取りをし実際にも会いに行ったレイチェルさん。
「一筋縄ではいかない仕事だと知りました。現代ではジャーナリズムの精神は失われつつあると言われていますが素晴らしい仕事であることに変わりありません。この映画を多くの人に観て貰う事で、普段あまり知られていないジャーナリストの方々の仕事に文字通りスポットライトを与えることが出来たことが嬉しかったです。」とレイチェルさん。
「何よりもジャーナリズムが素晴らしいと思ったのは、長期的な調査をしているとこれで記事が書けるというところに辿りつくのに時間がかかります。報われなくても日々、これが正しい方向なんだと信じて進まなければいけない。劇中の中でも「暗闇の中で手探りの中進んでいる」というセリフがありますが、彼らの仕事が何かの形で結実すること、それを信じ続ける心というのは素晴らしいと感じました。」とジャーナリズムの魅力についても語りました。
自身のキャリアの中でもこれまでにない素晴らしいキャストとの共演を楽しんだレイチェルさん。
キャストの皆さんとは1つの家族みたいだったそうで、現場でのムードメーカーだったマーク・ラファロさんとの共演については「シリアスな現場であっても楽しい思いをしても良いんだ、と彼から学びました。監督もそういう方で題材に対してのリスペクトはあるけれど同時に現場の雰囲気は軽くなるようにしてくれました。
通常、現場が楽しいと私の場合作品自体はあまり出来が良くないんですが(笑)こんな素晴らしい作品が生まれることもあるんだ、というのは発見でした。」と撮影当時を思い出しながら楽しそうに笑顔で答えていました。
レイチェルさんと言えば、ラブストーリーもののヒロインという印象も強い可愛らしい女優さんですが、本作をきっかけに、語られなければならない物語、声なき者に声を与える、そういう映画にも出演したいと感じたそうなので、これからのレイチェルさんの活躍がまた楽しみですね。
By.M
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