皆さんこんにちは、女住人Mです。春休みに入りファミリー向け映画が増える時期ではありますが、大人向けの映画も続々公開されます。これから4月にかけて、アカデミー賞を賑わせた作品も登場。今回は本年度アカデミー賞4部門ノミネート、助演女優賞を受賞した3/18(金)公開『リリーのすべて』をご紹介します。
本作はアカデミー賞監督「英国王のスピーチ」、「レ・ミゼラブル」のトム・フーパー監督が、昨年「博士と彼女のセオリー」で主演男優賞受賞したエディ・レッドメインを主役に据え、「レ・ミゼラブル」に続き彼とタッグを組んだ作品として公開前から話題になっていました。しかも題材が世界で初めて性別適合手術を受けた人物の実話に基づいたもの。
エディが演じるのは風景画家として才能を評価されていたアイナー・ヴェイナー。妻のゲルダ(アリシア・ヴィカンダー)は肖像画を専門にする画家。ある日、急に来られなくなった女性モデルの代役をしたことを機に、アイナーは自分の内側に潜む女性の存在に気付きます。それ以来"リリー"という名の女性として過ごすことが増え、心と身体が一致しない自分に困惑するアイナー、夫が夫でなくなる不安に駆られるゲルダ。それでもゲルダはいつしかリリーこそがアイナーの本質であると理解するようになっていきます。
トランスジェンダーという言葉や概念が確立していなかった1920~1930年代を舞台に描かれた本作、男性として生まれながらもあるきっかけで本当の自分に目覚めた主人公という難しい役どころをオスカー俳優エディが繊細に演じています。アイナーとして妻と仲睦まじく過ごしていたエディはイケメン男子、でも自分の中の女性に気付き、リリーとしてドレスを纏い化粧をし、街に出かけるようになる、その美しさ、可愛らしさといったら・・・。所作、雰囲気、感情の揺れ、全てがもう"Lady"なリリーにうっとりどころじゃありません。オスカー受賞を機に人気急上昇なエディ、ファンの皆さまにとっては2ver.の美しいエディを堪能出来ると言う所もポイントであり、何より役者というこの職業の素晴らしさをエディの演技によってまざまざと見せつけられるかのようです。
物語は初めて性別適合手術をしたリリーがありのままの自分を貫く人生を得る・・・的なことにフォーカスされ描かれている印象もあるでしょうが、実はそんなリリーを支えた妻ゲルダの存在こそが本作のテーマであると思います。ゲルダは当初、アイナーが女装をすることは単に芸術家の遊びだと感じています。でも次第とそれが彼の真の姿、彼が望んでいることと知り、それ故彼自身が誰よりも戸惑い、苦悩していくことに心を痛めます。
もちろん、自分が最も愛している人が夫という存在ではなくなっていくことにゲルダもやり場のない気持ちを抱え、心を痛めます。でも本当に愛し合っているからこそ、ゲルダは自分の苦しみより、夫の苦しみを優先し、夫アイナーがリリーとしての人生を得るために自分は何が出来るのか、ということを真剣に考えるようになります。
この映画では"愛する"ということを究極的に描いてはいますが、そこから浮き彫りになる"無償の愛"の本質を描こうとするところに観客は心を打たれるのだと思うのです。リリーとなった夫を尊敬し、尊重し、妻から同志のような存在でリリーを愛するゲルダを演じたアリシア・ヴィカンダーの演技は心から胸を打たれます。この映画の主役はリリーというよりゲルダ、そう感じさせられるぐらいの存在感。そして彼女は本作で今年のアカデミー賞助演女優賞を受賞することになるのです。納得!!
私の大好きな岡村(靖幸)ちゃんも常日頃「愛は貰いたがるだけではダメなんだよ」と歌っていますが、本作でもそれを痛感したのでした。愛するって難しいですね。
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