『ワンダー 君は太陽』
今回は例えるなら梅雨の合間の爽やかな一日のような作品、6/15(金)公開『ワンダー 君は太陽』をご紹介します。
10歳の少年オギー(ジェイコブ・トレンブレイ)は遺伝子の先天性疾患で、人とは異なる顔で産まれて来た男の子。27回という度重なる手術も経験し、自宅学習を続けて来た彼を母のイザベル(ジュリア・ロバーツ)は学校に行かせることにします。普通とは違う彼の見た目に対して子供たちの視線も態度も遠慮のないものばかりでオギーは傷つくのですが、家族の支えや何と言っても初めての友だちとの出会いで彼はどんどん周りの人さえ変えていくようになります。
シネマイクスピアリで上映する映画の半数以上を業務上チェックしている映写スタッフS君も「今年ベスト、間違いなし!」と太鼓判を押している本作は公開初日から多くの方に足を運んでいただいています。原作(「ワンダー」)が日本を始め世界的にもベストセラーなので本好きな方にも注目されていたからかもしれません。予告を見て「絶対に泣きそうだから映画館では恥ずかしくて観られない」といった声を聞きますが、本作は確かにそういう一面もあるのですが、とっても爽やかで清々しい感動を与えてくれる1本。
オギーは辛いことがあってもそれを妄想で乗り越える力や得意な授業で友達をあっと言わせることも出来る賢さとユーモアを持ち合わせています。オギーがとても魅力的な男の子、本当の意味でスペシャルな子なのでそんな彼の魅力がどんどん周りにも伝わり、彼が喜ぶ顔を見たい、彼といるとハッピー♪となるのも納得。(またオギーを演じるのがアカデミー賞作品賞にノミネートされた『ルーム』で注目を浴びたジェイコブくん。あの時既に天才子役としての実績は立証済みでしたが、本作でもその芸達者っぷりは天晴れ!)
とは言え、この映画では彼だけが特別な存在としては描かれません。物語はオギーの話から始まった後にお姉ちゃんのヴィア、その友達のミランダ、オギーの友達ジャックという4人の視点で描かれていきます。どうしてもオギーが最優先になる中で、家庭内での自分の立ち位置を慮ってしまった姉のヴィアは両親に心配をかけないようにと生きていた女の子。言いたいことをグっと我慢し、我慢する癖がついた彼女は多くを語らない女の子になっています。一方、そんなヴィアが唯一心を許してきた親友のミランダですが、彼女にもヴィアにだからこそ言えなかった悩みがあります。またオギーと最初に親友になったジャック(彼の表情と演技も抜群!)もある事でオギーとの信頼関係を損ねてしまいます。
こんな風に、オギーだけの一方的な物語が語られるのではなく、彼に関わる人たちの心の痛みも描かれ、オギーもそれと関わっていく中で変わっていく。誰にとっても誰かが必要だし、誰もが誰かの特別な存在であることをとても自然に描いていくところが多くの人の心を掴むのかもしれません。また、オギーの通う学校の先生や校長先生も温かい。どうもまだ経験が浅いらしい担任のブラウン先生。ちょっとした目線や態度にそれが見て取れるのですが、生徒たちにまっすぐ向き合っている。知るためには向きあわないとですもんね。そして劇中、ブラウン先生や校長先生が口にする格言がまたグっときて、そんなに登場シーンが多い訳ではないのに、心に残るこの二人は私の個人的なお気に入りです。
“人とは違う”ということが人を生きやすくしたり、その逆になったり。価値観が多様化している昨今、ともすると生き辛くなることも多いのですが「正しいこと、親切なこと、どちらか選ぶ時は親切なことを」というブラウン先生の格言の通り、親切なことを“ワンダー”することで大切なことが見つけられるような気がします。
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