『オンリー・ザ・ブレイブ』
一気に酷暑が始まりましたが、だからこそ熱い映画をご紹介します。6/22(金)公開の『オンリー・ザ・ブレイブ』です。
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本作は2013年、アリゾナで起こった未曾有の巨大山火事に立ち向かった男たちの物語。火災映画の名作と言えば『バック・ドラフト』ですが本作で火事が発生するのは建物内ではなく森林。自然のど真ん中には消火栓もなければ、ポンプ車、消防車も入れない。そのためこれまで我々が観てきたものとは全く違う方法で消防士たちは火災と闘います。
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猛烈な勢いで山を焼き尽くす炎に立ち向かうのはアリゾナ州プレスコット市の森林消防隊員たち。火災を最小限に食い止める以外にも彼らには“ホットショット”と呼ばれる森林火災に対処するスペシャリストに認定されるという目標があります。その多くはアメリカ合衆国農務省森林局の管轄下に置かれている、いわゆるエリート軍団。でも指揮官のマシュー(ジョシュ・ブローリン)率いる消防隊はいち地方自治体の部隊に過ぎず、そんなチームが“ホットショット”に昇格したことはありません。
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長年培った経験で“ホットショット”たちと消火作業を共にすることはありながらも「お前らレベルの消防隊員は口を挟むな」とぞんざいにされながらもマシューの元、隊員たちは過酷なトレーニングを日々積んで、命の危険を顧みず消化活動にあたります。
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冒頭、彼らの火災との闘い方が違うと書きましたが、建物火災の場合、主に水や消火剤などで消化にあたるのですが、森林火災の場合“火”に対し“火”をもって消化するのが特徴。木を切り倒し、草木を刈り、これ以上は火を来させないという地点に溝を掘り、“防火帯”を作る。さらに迫る炎に向かい、炎を放ち、火災の種になるものを消滅させ鎮火させるという、映画を観ていて「なるほどー」となる手法。
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加えて、日本と違ってカラッカラに乾燥した地なので、火のまわりも早く、風向きを始め気象変化の予測などもとっても重要になってきます。そういった判断を瞬時に正確に行いかつ、肉体を使って作業する隊員たちの姿には純粋に惚れぼれしてしまいます。
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またいつも命の危険と隣り合わせな彼らは仲間意識や結束力も固く、特にマシューは多くの若い隊員の兄貴であり、時に父親のような存在で、仕事以外のところで家族のように彼らを気にかけている様が何ともかっこいい。(演じるジョシュ・ブローリンは『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のサノス役、『デッドプール2』のケーブル役と大ヒット映画2作品のヴィラン役を好演。最近の彼の活躍にときめいた方は素顔のジョシュを本作でご堪能あれ!)
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とは言え、ヒーロー的な活躍にだけスポットをあてるのでなく、映画は彼らの日常にも光を当てます。どうしようもない生活を送っていた男が人生の再起をかけマシューの元で成長していく様、そんなマシューも一番の理解者である妻と将来について意見が食い違いギクシャクしていたり・・・そういったサイドストーリーもじっくり描かれるのは本作が実話だからかもしれません。彼らの生き様を過剰にヒロイックに描くことなく、ありのまま描くからこそダイレクトに胸を打つ。
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ヒーローは特別なパワーや能力がある人を指すのではないんですよね。そしてそんな彼らが迎えるエンディングはこの映画が実話であることを強烈に際立てるのでした・・・。
火には火を、暑さには熱い男たちを!
By.M
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