『search/サーチ』
あっという間に日常にSNSが浸透し、全く別次元のコミュニケーションの場が繰り広げられるようになりました。今回は10/26(金)公開『search /サーチ』をご紹介します。
ある日女子高生のマーゴット(ミシェル・ラー)が突然姿を消し、行方不明事件として捜査がスタートします。誘拐か家出なのか状況がつかめないまま37時間が経過。娘の無事を信じる父デビッド(ジョン・チョー)は手がかりを探すべく、彼女のPCにログインし様々なSNSにアクセスすると・・・。
本作は2018年インデペンデント作品を対象にしたアメリカの映画祭<サンダンス映画祭>で観客賞を受賞、その後の全米公開でも大ヒット。(映画祭の観客賞は一般の方の投票によって決まるのでアタリの映画が多いことも特徴!)特にこの映画は“全編PC、携帯とネット画面上だけで物語が進行する”という斬新なアプローチで大注目となりました。
ただ「PCや携帯の画面上だけの展開って何か世界観が狭くない?飽きちゃわない?」と思う方がいるかもしれませんが、No、No、No!画面上と言えどもInstagram、Facebook、チャット画面、google earth、防犯カメラなどなど様々な視点を用いてスピーディーに物語が進むのでその緊張感は持続し続け、始終ハラハラしっぱなしです。そして運よく娘のPCにログイン出来たデビッドですが、SNSを辿り、娘の友達にコンタクトを取っていくと、思い描いていた娘とは全くかけ離れた娘の実在像がそこにあった、という事実に直面!
表面上はうまくいっているようにみえた娘ですがどうも問題を抱えていたことがわかり、と同時にこの父娘の関係そのものにも問題があったことが浮き彫りになっていきます。娘の安否をネット上で探していた父は平行して娘の本当の姿を探すことにもなります。それは映画の冒頭で語られるデビッドの妻であり、マーゴットの母の死と深く結びついていました。
映画は単純に失踪した娘が無事なのか?というミステリー的視点が入口にはなっているのですが、とても現代的な手法を用いて普遍的なテーマを描いていることが観客の共感を得ているんだろうな、と思います。“全編PCの画面”というコンセプトの出落ち感に留まることなくストーリーテリングの巧みさで観る者の心を捕えてしまう、と言う所がポイントなのです。映画の中盤以降は観客の想像をどんどんミスリードしていく罠もしかけられていて、かつ本当の意味で娘を取り戻そうとするデビッドの心情まで描かれるので、若い方だけでなく、お父さん、お母さん世代がご覧になってもグっときちゃう映画にもなっている。となるとサンダンス映画祭の<観客賞>受賞も納得の1本なのです!
ネットが及ぼす闇にことさらフォーカスを当てるのではなく、既にそれがないと生活が回っていかない我らの日常を客観的に切り取っているところも表現として上手い!
お父さん役のデビッドを演じるのは『スター・トレック』シリーズのヒカル・スールー役でお馴染のジョン・チョー。他にも韓国系アメリカ人のキャストも多く、また監督自身がインド系アメリカ人と多種多様。いろんな人種、いろんな才能が集結して映画業界もさらに楽しくなっている、というのも良いですね。
上映時間もコンパクトでほんと、言うことなしですYO!
By.M
ソニー配給