『パヴァロッティ 太陽のテノール』
オペラと聞くと崇高な感じがして近寄りがたいイメージがありますが、誰もが耳にしたことがあるオペラの曲と言えば『トゥーランドット』の「誰も寝てはならぬ」でしょうか。この曲と言えばこの方の十八番、今回はイタリアを代表するオペラ歌手ルチアーノ・パヴァロッティのドキュメンタリー映画、監督は巨匠ロン・ハワード!9/4(金)公開『パヴァロッティ 太陽のテノール』をご紹介いたします。
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2007年に亡くなって以降も世界中から愛され続けている天才テノール歌手パヴァロッティ。彼の活躍の場はオペラ以外にも他ジャンルとの音楽の架け橋になったり、チャリティに積極的だったりと幅広く、また持ち前の明るさで多くの人から愛された偉大なるエンターテイナーでした。そんな彼の人生をまるごと描くのが本作です。
私自身、オペラに全くのど素人ですがパヴァロッティがホセ・カレーラス、フラシド・ドミンゴと結成した“三大テノール”のことはよく覚えています。東京公演では75,000円の最高席6万枚があっと言う間に完売、ワイドショーも賑わし彼らの歌声をよく耳にしました。パヴァロッティは三大テノールの中においてもひと際目立つ存在だったので、この映画を観ると「想像通りの人だ。」というのが第一印象でした。
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パン職人にしてアマチュア歌手だった父の影響で子供の頃から教会で歌っていたパヴァロッティの人生は常に歌と共にありました。本作でその証言を主にするのが3人の娘たちと最初の妻アドゥア・ヴェローニと2番目にして最後の妻ニコレッタ・マントヴァーニという女性陣なのが何とも象徴的。唯一無二の才能があるだけでなく、サービス精神旺盛でカリスマ性に溢れる男性となれば多くの人から(特に女性から)愛されて当然でしょう。
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インタビューでは元妻も「あの声に恋しない人なんている?」とコメントしたり、共演がきっかけでロマンスがあった女性も登場しコメント。今に至るまでのっぴきならない事もあったろうに過去に関係があった女性たちがこうやって登場するあたり、女性陣の太っ腹感もありつつ、やはり彼自身の人間性のたまものじゃないか、となぜか微笑ましく見届けてしまうのです。
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1992年から始まったロック歌手たちとのチャリティコンサート“パヴァロッティ&フレンズ”開催の経緯をU2のボノが語ってくれますが、これも当初乗り気でなかったボノを懐柔させたのがある女性だった、という逸話もユーモラスです。“人たらし”という言葉もピッタリで、あのダイアナ妃と交流を深めるきっかけとなるチャリティコンサートでの彼のスピーチでもそれは発揮されています。
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そうやっていつも太陽のように周囲を明るく照らしていた彼にもトップスターとしての想像を越える重圧は日常的にあり、不運な出来事も度々襲うのですがそれでも彼は愛する人、愛する歌を想い、常に生きる歓びを感じて生きていた、ということも多くの人の証言によっても語られるのでした。
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この映画を観ているとパヴァロッティを全く知らなかったとしても彼の人生を通して彼の歌声にきっと心奪われていくハズです。悲しみも歓びも歌に全てを託し、それらを包み込んで生きてきた一人の男に誰もが魅せられてしまうから・・・圧巻の歌唱シーンと共にぜひスクリーンでご堪能ください♪
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