『アキラとあきら』
「半沢直樹」「下町ロケット」などなど大人気の池井戸潤小説。今回ご紹介するのは8/26(金)公開『アキラとあきら』、池井戸小説の中でも傑作として名高い作品の映画化です。
日本有数のメガバンク産業中央銀行に同期入社した山崎瑛(竹内涼真)と階堂彬(横浜流星)。瑛<アキラ>は実家の町工場の倒産により過酷な少年時代を過ごし、人を救うためのバンカーになりたいと理想を持つ一方、海堂グループの御曹司でありながら稼業は継がずバンカーになった彬<あきら>は情に流されることを嫌い冷静沈着に仕事に向き合っていた。お互い信念の違いはあったが社内で有望視された二人に“現実”という壁が立ちふさがり、それぞれ絶望的な局面を前に二人の逆転劇が始まる!
池井戸作品は映画では観るんですが池井戸ドラマの熱量高めな演出が個人的にはちょっとtoo muchだったりします。(あくまでも個人の感想です) なので『アキラとあきら』の映画化もどんなもんかな~、若い二人が主演だからやっぱ熱いのかな~と思っておりましたが、何ともフレッシュでちょっと今までにはない池井戸ワールドだな~、と言うのが第一印象。
そう言えばこの映画の監督は三木孝浩。『陽だまりの彼女』『思い、思われ、ふり、ふられ』や上映中の『今夜、世界からこの恋が消えても』と青春映画製造マシーンと異名を持つ(って今考えました)今の映画界で信頼度の高い監督さんの1人。その証拠にこの夏、三木監督作品は『TANG』を加えて3本公開されることになります。(コロナ禍の延期影響はあったでしょうが日本映画業界、三木監督に頼り過ぎ問題も同時に勃発!?)
と話は逸れましたが、この映画にフレッシュな風が吹いているのは三木監督の手腕の賜物と思います。加えて<アキラ>と<あきら>を演じた竹内涼真と横浜流星という現在進行形でノビシロを感じる二人の共演がこのフレッシュ感をさらに後押しです。
この映画、家柄も育った環境も全く異なる二人がエリートバンカーになるべく敵対し合うという構図を想い浮かべていたのですが、と言うよりそれぞれが難題に向き合い、別の道を進むけれど結果、二人の人生が交錯していく様を描きます。
<アキラ>は徹頭徹尾、人を救うバンカーという理想を元に融資先にも思いやりのある対応で仕事に向かいます。仕事は慈善事業ではないので“確実性”を求める上司からその姿勢は認められません。一方で子供の頃から見続けていた親族間の争いに倦厭し、自分の道を選んだアキラは海堂グループの倒産危機に巻き込まれ、それまで目を背けていたことと対峙せねばならなくなります。アキラもあきらも互いの理想を持つフレッシュさがありますが、それは未熟さとも同異語。
そんな未熟さの中でもがく二人と対照的な存在となる江口洋介演じるアキラの上司や兄弟間の争い事をこじらせ続けるあきらの伯父コンビを演じるユースケサンタマリアと児島一哉がまた良い味出しています。憎たらしい役回りながらも冷徹にならざるを得ないその立場やそうなるしかなかった悲しみが描かれたりとアキラとあきらに関わる人たちのドラマも(登場人物多めでありながらも)丁寧にきちんとした目配せでもって描かれるので、終盤のアキラとあきらが連帯しあっていく展開もよりドラマティックに、かつその一途さにこちらもアツくなっていきます。
元銀行マンな池井戸さんなだけあって綿密なリサーチの元描かれるその世界観は企業ドラマとして“これぞ池井戸ワールド!”という見応えがありながらも最終的にはアキラとあきらの青春物語になっているところは白眉。やっぱり三木監督青春映画製造マシーンですな!
池井戸さんご自身も数ある映像化の中でもベスト級のお気に入り作品との事なので、きっと池井戸ファンの方にも満足&納得していただける上に、池井戸ワールドのビギナーな方にも楽しんでもらえる1本と太鼓判を押させていただきます!
By.M
(C)2022「アキラとあきら」製作委員会